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第6号 「姫崎るか。」

...はぁ、俺何やってるんだろ...。

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 八神と別れた琉架は、急いで竹下に連絡を入れた。
「...琉架!??...一体今どこにいるの???『...竹下さん...ごめんなさい。今から、クロジカルの方に向かいます。』...はぁ、とにかく謝罪は、今はいらないから、早く事務所にきてちょうだい。(汗)」
 琉架は、電話を切ると竹下の待つクロジカルの事務所へと向かった。
 事務所に着くと、電話の音がこれでもかというほど鳴り響いており、琉架は事の重大さを改めて自覚したのだった。
 琉架の姿に気づいた竹下が、険しい表情をして琉架に駆け寄ってきた。
「...琉架!!!(汗)全く...今までどこをほっつき歩いていたの!??どれだけクロジカルの人に迷惑をかけたと...『...すみませんでした!(汗)ちょっと、自分の中でも混乱してて...。』...はぁ、とりあえず、ニュース番組の尺を少し頂けることなったから...。そこで、記者会見の映像流してもらう手筈を組むからね...。(汗)これから緊急打合せあるし...はい、とにかく服着替えて...。あと二時間後には、撮影入るから急いでね。(汗)...はぁ、まったく...。」
 こう言うと竹下は、わざとらしくため息をついて、事務所の自らの席に戻り、電話対応を再開した。
 琉架は、竹下から受け取った正装服をぐっと握りしめると会議室に向かった。
 会議室で着替えた服は、もちろん...男物のスーツではなく、女性物のスーツ...。琉架は、小さくため息をつくと
「...俺って...自らの過ちを謝るところでも、偽らないといけないんだな...。(汗)」
 と言って、じっと一点を見つめていた。
 しばらくして、竹下が分厚い資料を持ってきて、早速緊急打ち合わせが始まった。
 琉架は、打ち合わせの内容を聞いた途端、どこか腑に落ちない顔をしていた。
 それもそのはず、記者会見で言うことは...全て偽りのこと...。琉架は、今後もクロジカルでモデルをするということ。ネットの情報は、嘘ということ。クロジカルでも、琉架は毎日楽しそうにモデル活動をしているということ...。そう、全て偽り...。
 でも、琉架は逆らえなかった。自分がクロジカルを辞めるということは、その下で仕事をしている何百人何千人という人達に、迷惑をかけることになると知ってしまったから...。もちろん、八神にも...迷惑をかけることになるから...。だから、竹下に従った。
 それから、無事記者会見を終え...何とかクロジカルにかかってくる電話を、その日の夜には、鎮めることが出来た。
 だが、しばらく琉架は、ほとぼりが冷めるまで、モデル活動を休業することになった。
 竹下は、記者会見の後からずっと俯いている琉架の肩を、慰め程度に優しく叩いた。
「琉架...。もういいわ...きっとあなたも疲れているのよ...。それに、何もあなたが悪い訳では無いみたいだしね!(笑)...きっと琉架をよく思わない人の、度が過ぎたイタズラだったのよ...!(笑)ほら、ちょっとした夏休みだと思えばいいわ。ねぇ??だ~か~ら、そんな顔しないの!!(笑)」
 こう言って、竹下は琉架の肩をぽんぽんと叩くと、ニコッと笑った。
 そんな竹下に琉架は、疲れた顔をして
「...はい。竹下さん。」
と一言言うと、そのまま口を閉ざした。
 じっと黙ったままの琉架に竹下は、それ以上は何も言わずに、琉架を家まで送るため、駐車場へと向かったのだった。
 家に帰りついた琉架が、玄関を開けて家に入ると、翔真が出迎えた。
 「おかえり...琉架。帰ってきて、疲れてるところ悪いとは思うのだけど...。ちょっといいかな??」
 琉架は、翔真の声にコクっと頷くと翔真の後につづき、二階の翔真の部屋へと向かった。
 部屋に入ると、適当に座って。と翔真に言われ、琉架がその場に座り込むと、翔真は、琉架が座ったことを確認し、おもむろに話し出した。
「なぁ、琉架。...ゴメンな...。昨日の俺は、お酒に酔ってて正常な判断ができてなかった...。たしかに琉架には、幸せになって欲しいし、自分のしたいことをして欲しい...でも、今はダメだ。琉架...今は、ダメなんだ。お前と八神さんが一緒にいることは...クロジカルからメイドアリスが消される事にも、なりかねないんだ...。本当は話したくないけど、もう話しておいた方が良いと思うから...。」
翔真は、一息置くと、いつもの能天気さはどこにいったのか。まるで別人のように真剣な表情で、じっと床を見つめる琉架に、ゆっくりと話し出したのだった。
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