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第4章「乙四の開幕と奏也の危機。」
「奏也を救いたい。」
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俺たちは、奏也が部屋を去った後、奏也の両親が言っていた言葉について、必死に考えていた。
奏也の両親は、俺たちにこう言って部屋から去って行ったのだ。
「...奏也に変なことを吹き込んだときは、あなたたちのバンドも活動できなくするからそのつもりでね??あー、あと
それから、奏也は明日の飛行機で私たちと一緒に、海外のオペラの学校に向かうから。今から、変なことを企まない方が身のためよ。」
俺たちは、去って行く奏也の両親に何も言い返すことが出来なかった。
だって、奏也の気持ちを考えたときに俺たちは、一体どう動いて良いのか分からなくなってしまったのだから。
そんな俺たちでも、このまま奏也を海外に送る気なんて、サラサラなく、パイプ椅子に腰をかけ、話し合いを始めていた。
「奏也は明日の夕方に旅立つそうだが、どうする??」
「どうするも何も、そんなの決まってるじゃん!!!奏也を止めないと...!!!」
「でも、一体どうやって???時間が...どう考えても足りないだろう???」
俺が話し始めると、みんな奏也を止めようという風に言っていたことから、意見は一致していることは分かったが、七緒は悲しそうな表情で時間が足りないとわめきだしたのだった。
確かに、今日聞かされて、明日の夕方に日本からいなくなってしまうと考えると、あまりにも時間がなさ過ぎると思えるのは明白だった。
だから俺は、少し考えてから皆にこう言った。
「やっぱりさ、俺たちには音楽しか無いと思う。...でもその音楽は、奏也がいないとただの雑音にしかならない。...っと、そう言えばここには理系や文系...色々いるんだったな......えっと、結論を言うとだな...つまり、明日...空港で演奏会をする。」
俺の言葉に、皆が一斉に俺へと注目したことが分かった。
俺は、皆が何を言いたいのか直感で分かったが、あえて黙っておくことにした。
そんな俺の様子に、優が驚いた声で反論してきた。
「虎雅さん!???街中で演奏するのとは訳が違うんですよ!???よりにもよって空港なんて...!!一体全体、誰が責任を取るんですか!???」
優の言葉は最もだった。
空港は、一般のお客さんが沢山いるところだ。
そんなところで、大学生が誰の許可も得ずに、勝手に演奏会なんてしたら、当然活動停止だけの処分じゃ済まないことも目に見えている。
だから、優が俺の意見に反論するのは正しい。
でも俺は、それが分かった上でわざとこう言ったんだ。
それに気付いていた翔真は、優のことを優しく制すと、今度は自らが口を開いたのだった。
「優が言うこともよく分かる。確かにそうだ。折角、月並みとしてこれから活動していけるにもかかわらず、空港のような公共の場所で...しかも、無許可で楽器を演奏するなんてことしたら、月並みが活動出来なくなるだけじゃなく、警察沙汰になり、最終的には営業妨害や迷惑条例に違反して、逮捕なんて事にもなりかねない。でもな??...月並みに奏也がいなくなったら、誰がこのバンドでボーカルをしてくれる??ボーカルになりたい人はたくさんいるだろうから、そこから代わりの人を連れてくればいいのかもしれない。でも、月並みとして考えたとき、奏也がボーカルをしてくれなかったら、誰が月並みのボーカルをやってくれる???月並みとして考えたときに奏也がいないんじゃ、それはもう月並みではなくなってしまうだろ??皆はそれでいいのか???俺は嫌だ。折角イベントで盛大に名前を売ったのに......これからって時に、もう月並みとして活動できなくなるのは、俺としては絶対に避けたい...。」
翔真の意見に、まわりの雰囲気が変わり、話し合いは上手くいくように思えたが...七緒はため息を一つつくと、おもむろにパイプ椅子から立ち上がり、俺にこう言って、練習部屋を去って行った。
「ごめんだけどリーダー。俺はその意見に賛成することは出来ない。確かに奏也を連れ戻すには、いい方法かもしれない。でも、その作戦を実行して上手くいっても、奏也は素直に喜ぶことは出来るのかな??少なくとも奏也は、多くの人に迷惑を掛けることは、一番嫌うはずだから、俺はその案に賛成することは出来ない。...奏也が悲しむから。」
俺が言葉を返そうとしたときには、七緒の姿は練習部屋からなくなっていた。
七緒がいないまま、話し合いは進み、結局七緒抜きで、俺たちは明日の夕方に奏也を連れ戻すべく、俺たちの一生をかけた演奏会をすることで、話はまとまり各自家に帰ることとなった。
明日の朝練習をしてから、空港に向かうことになった。
曲はもう決まっている。
奏也との思い出の曲だ。
七緒が来なくても、俺たちだけでも奏也を連れ戻す。
極めて低い可能性にかけること...やらないで後悔するよりも、何倍もいいと思ったから...。
だから俺たちは、この作戦を実行することに決めたんだ。
奏也の両親は、俺たちにこう言って部屋から去って行ったのだ。
「...奏也に変なことを吹き込んだときは、あなたたちのバンドも活動できなくするからそのつもりでね??あー、あと
それから、奏也は明日の飛行機で私たちと一緒に、海外のオペラの学校に向かうから。今から、変なことを企まない方が身のためよ。」
俺たちは、去って行く奏也の両親に何も言い返すことが出来なかった。
だって、奏也の気持ちを考えたときに俺たちは、一体どう動いて良いのか分からなくなってしまったのだから。
そんな俺たちでも、このまま奏也を海外に送る気なんて、サラサラなく、パイプ椅子に腰をかけ、話し合いを始めていた。
「奏也は明日の夕方に旅立つそうだが、どうする??」
「どうするも何も、そんなの決まってるじゃん!!!奏也を止めないと...!!!」
「でも、一体どうやって???時間が...どう考えても足りないだろう???」
俺が話し始めると、みんな奏也を止めようという風に言っていたことから、意見は一致していることは分かったが、七緒は悲しそうな表情で時間が足りないとわめきだしたのだった。
確かに、今日聞かされて、明日の夕方に日本からいなくなってしまうと考えると、あまりにも時間がなさ過ぎると思えるのは明白だった。
だから俺は、少し考えてから皆にこう言った。
「やっぱりさ、俺たちには音楽しか無いと思う。...でもその音楽は、奏也がいないとただの雑音にしかならない。...っと、そう言えばここには理系や文系...色々いるんだったな......えっと、結論を言うとだな...つまり、明日...空港で演奏会をする。」
俺の言葉に、皆が一斉に俺へと注目したことが分かった。
俺は、皆が何を言いたいのか直感で分かったが、あえて黙っておくことにした。
そんな俺の様子に、優が驚いた声で反論してきた。
「虎雅さん!???街中で演奏するのとは訳が違うんですよ!???よりにもよって空港なんて...!!一体全体、誰が責任を取るんですか!???」
優の言葉は最もだった。
空港は、一般のお客さんが沢山いるところだ。
そんなところで、大学生が誰の許可も得ずに、勝手に演奏会なんてしたら、当然活動停止だけの処分じゃ済まないことも目に見えている。
だから、優が俺の意見に反論するのは正しい。
でも俺は、それが分かった上でわざとこう言ったんだ。
それに気付いていた翔真は、優のことを優しく制すと、今度は自らが口を開いたのだった。
「優が言うこともよく分かる。確かにそうだ。折角、月並みとしてこれから活動していけるにもかかわらず、空港のような公共の場所で...しかも、無許可で楽器を演奏するなんてことしたら、月並みが活動出来なくなるだけじゃなく、警察沙汰になり、最終的には営業妨害や迷惑条例に違反して、逮捕なんて事にもなりかねない。でもな??...月並みに奏也がいなくなったら、誰がこのバンドでボーカルをしてくれる??ボーカルになりたい人はたくさんいるだろうから、そこから代わりの人を連れてくればいいのかもしれない。でも、月並みとして考えたとき、奏也がボーカルをしてくれなかったら、誰が月並みのボーカルをやってくれる???月並みとして考えたときに奏也がいないんじゃ、それはもう月並みではなくなってしまうだろ??皆はそれでいいのか???俺は嫌だ。折角イベントで盛大に名前を売ったのに......これからって時に、もう月並みとして活動できなくなるのは、俺としては絶対に避けたい...。」
翔真の意見に、まわりの雰囲気が変わり、話し合いは上手くいくように思えたが...七緒はため息を一つつくと、おもむろにパイプ椅子から立ち上がり、俺にこう言って、練習部屋を去って行った。
「ごめんだけどリーダー。俺はその意見に賛成することは出来ない。確かに奏也を連れ戻すには、いい方法かもしれない。でも、その作戦を実行して上手くいっても、奏也は素直に喜ぶことは出来るのかな??少なくとも奏也は、多くの人に迷惑を掛けることは、一番嫌うはずだから、俺はその案に賛成することは出来ない。...奏也が悲しむから。」
俺が言葉を返そうとしたときには、七緒の姿は練習部屋からなくなっていた。
七緒がいないまま、話し合いは進み、結局七緒抜きで、俺たちは明日の夕方に奏也を連れ戻すべく、俺たちの一生をかけた演奏会をすることで、話はまとまり各自家に帰ることとなった。
明日の朝練習をしてから、空港に向かうことになった。
曲はもう決まっている。
奏也との思い出の曲だ。
七緒が来なくても、俺たちだけでも奏也を連れ戻す。
極めて低い可能性にかけること...やらないで後悔するよりも、何倍もいいと思ったから...。
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