ファンタジア!!

日向 ずい

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第1章 「俺たちの出会い。」

翔真と虎雅

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 「おはよう!翔真!!」

 「おはよう!!虎雅!」

 「今日は、弟くんに付きまとわないのか??」

 「うっ.........聞いてくれよ~。今日の朝...琉架に心配だから学校一緒に行こうって言ったら...兄貴邪魔...って言われた~。(泣)虎雅~、助けてくれよ~!!!」

 「...って、どうせ...手を繋いで行こうとか...1時間に1回は、お兄ちゃんに連絡して...とか言ったんだろ...??」

 「えっ??そんなのあったりまえじゃん!!!だって、俺の可愛い可愛い琉架なんだぞ???何かあってからでは困る...!!!」

「はははっ...もう何も言えねぇーわ...。弟ちゃん、ご愁傷さま...。」

 目の前で、涙目の翔真に虎雅は、苦笑いを浮かべて琉架に同情の意思を示すのであった。

 しばらく大学までの道のりを歩いていた二人だったが、虎雅が思い出したように琉架に話しを切り出した。

「なぁ、翔真。今日もバンド練あるのか??(汗)お前...最近毎日じゃないか??大丈夫なのかよ...。」

「...ん??あー、そう言えばここ一ヶ月朝早く集まって、一限始まるまでの時間と、大学終わってから夜の12時まで...バンド練してたな...。でも、流石にさ...先輩達いるじゃん??休めないよ...。(笑)」

こう言って、苦笑いしている虎雅に翔真は、意を決したように話し出した。

「...なぁ??虎雅...。俺達が3年生になったら、一緒にバンド組もうよ...。ねぇ、どうかな??そしたら、虎雅も...こんなにしんどい思いしなくて...。」

「ありがとう...。翔真...そうだな...。ちょっと考えておくか...。来年だな...。まぁ、それまでは頑張るよ!!(笑)ありがとう。心配してくれて!」

「うっ、うん。心配するのは当たり前だけど......約束だよ??」

 「あぁ!絶対って...約束は、出来ないけど...楽しそうだとは思うな!(笑)」

心配そうに首をかしげて、虎雅を見つめる翔真に虎雅は、ニコッと笑うと翔真の背中をバシッと叩いた。

「早く行かないと一限遅刻する...。」

「あっ!!待って!!俺...次遅れたら、無条件で単位出ない...!!(汗)」

そう言って二人は、走って講義室へと向かうのだった。

 大学が終わり虎雅は、いつも通りバンド練習のために練習部屋に来ていた。

 ドアを開けようとドアノブに手をかけた時、中から先輩方の声が聞こえた...。

 悪いとは思ったが、足が動かず立ち聞きしてしまった虎雅だったが、内容を聞いてから後悔した。

「...なぁ??最近の二年って生意気じゃない??なんかさぁ、俺達が必死にやってるのに...それよりも目立とうとしてさ...。(笑)正直...バンドなんてモテるための口実だって言うのに...あんなに目立たれたらねぇ~...俺たちの立場なくね??」

「ほんとほんと...。大学なんだから、もっとゆる~く行かないとね~。(笑)と言うよりさ...桜宮だっけ??あいつが1番目障りだよな...。あれだけ人気かっさらうとか、何もんなのって話だよね??」

 部屋の中では、明らかに自分のバンド仲間で...自分のことを真剣に育ててくれていた憧れの先輩が、自らの悪口を言っていることに...。

 虎雅は、あまりのショックにその場から動けず、話を全て聞いてしまった...。

 聞いた後にようやく足が動き...その場から、すぐさま立ち去ったのだった。

 無我夢中で走り辿り着いたのは、翔真とよく星を眺めに来る絶景スポットだった。

「...ほんとに...俺何やってるんだろう...。一生懸命バンドに打ち込んで、本気で楽しんでたのに...。先輩方の姿に憧れて...入ったのに...。これじゃあ、俺...バンドやる理由見つけられないじゃん...。...くそっ!!!俺の何が悪いんだよ!!!!毎日毎日、眠気も我慢して一生懸命に練習していたのに!!!!!人一倍練習していたんだから、上手いのは当たり前だろ!!!!なんで俺のせいにするんだよ!!!!『...分かるよ!虎雅のその気持ち...。』...えっ...翔真!??何でいるんだよ...!??だって今日は...。」

 真っ暗な中に、月明かりだけしかない環境で泣き叫ぶ虎雅の背後から、優しく声をかけたのは、翔真だった。

 虎雅は、翔真を目に捉えた瞬間、慌てて涙を拭い、途端に焦った表情をした。

「...俺さ...バンド辞めてきたんだ。だって、あのバンドの先輩方...本気じゃないただの女たらしだったんだもん...。俺がやりたかったのは、本気のバンド。だから、『...だからって!!お前...今日は、日本一難しいって言われている限定オーディションの最終審査があるんじゃ...ここで合格すれば、晴れてバンドデビューできるんだろ!!??』...だからだよ!!あんな中途半端な先輩方がさぁ??...必死で夢を追いかけている人達でも到達できない頂点を、なんの努力もしていないクズ人間がとるなんて...どう考えてもおかしいでしょ???だから、あえて今日...この大事な日に...あのバンドを抜けてやったんだ。」

 こう言った翔真の目は、いつも以上に真剣な表情をしており、それだけで翔真がバンドに命をかけていることが良くわかった。

 そんな翔真の携帯には、ずっと電話がかかってきている。

 目の前の虎雅は、翔真の電話の相手がバンドの先輩達だってことが、一発でわかった。

 だって、翔真がいないとあのバンドは、ただの幼稚園児のお遊戯なのだから...。

 「虎雅...。ゴメンだけど...来年まで俺待てない...。今すぐに...俺とバンド組んで...本気でデビュー狙ってみないか???」

「えっ...翔真...その...嬉しいけど...俺には...『...言っとくけど...虎雅がなんと言おうと俺とバンド組んでもらうから...拒否権とかないから。ほら!!手ぇ出せよ!!!オレのお手手が寂しがってるだろ???(照)』...翔真...わっ...分かった。...俺とバンドを...組もう。」

 こう言って二人は、互いに手を握り合い決意を固めるのだった。
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