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「俺ができることは...。」
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俺は、目の前で酷く悲しむ咲季に震える声でこう話しかけていた。
「ごめん...。君の気持ちには、気付いていた...。...慰めたのは、覚えているよ。君がまだ...狩人を作ってまもない頃、俺は家族のことで病んでいた。これから、何をして生きていこうか...今、俺は何がしたいのだろうか...。って事を四六時中考えて、でも全く分からなくて...また考えての繰り返しだった。そんな時...俺よりも酷く落ち込んでいる君を見かけたんだ。その時、本当は悪いと思ったけど、眉間に皺を寄せている君の顔が、へなちょこ侍に出てくる喋る刀...こしぬ剣にそっくりで、思わず笑っちゃったんだよ。(笑)...それで、そんな顔をしてまで何を真剣に悩んでいるのか、すごく気になってね...。興味本意で、声をかけたんだ。...まさか、それで君を更に傷つけていたなんて、知らなかった...。本当にごめん...。でも、君のやった事は許されることじゃないと思うし...俺も、十希という大切な人を傷つけられたから、今も殺してやりたいほど憎いよ??...でも、君の考えていたこと。君の過去を聞いて...君だけに全責任を負わせるのは、なんだか違う気がした。」
俺が、咲季を見つめながらこういうと、咲季は、俺に背を向けたまま肩を上下に揺らしていた。
俺は彼女を怒らせてしまったと確信した。だから、彼女に次にかけるべき言葉を必死に心で準備していたのだが...。
俺が話し終わったと同時に俺の方を振り向いた彼女は、いつかと同じこしぬ剣の顔をしてこう言ってきたんだ。
「...叶芽様。あなたの褒め言葉は、私の心には大きすぎます!!...こしぬ剣と同じと言ってくださるのなんて、後にも先にも叶芽様だけしかいなかった。叶芽様...私、その言葉だけで十分です!!」
「えっ...。(なんか違う気がする...。)」
俺は、正直戸惑ってしまった。
だって彼女に言った言葉は、褒めた言葉という訳ではなく...どちらかと言えば、貶したに近いと言えることだったのだから。
こしぬ剣に似ていると言われて怒らない子は、いないと思ったんだけどな...これは予想外だ...どうしよう...。
ここで彼女を怒らせることで、シェアハウスの仲間が飛び込んでくるっていう当初の計画が...これじゃあパー通り越してグーじゃんけんぽいじゃん...。
あー、どうしよ...。
こんなことを考えている間にも、目の前の咲季は、勝手に話を進めてしまっている...ちょっと待って欲しいものだ。
「...まさか、叶芽様もへなちょこ侍を知っていらっしゃるなんて...。これはもう、運命としかいいようがないのでは!??...さぁ、叶芽様???これから、へなちょこ侍について一緒に語り合いましょう???」
目の前の咲季が俺の腕をとり、強引に立ち上がらせようとしたため、俺は咄嗟に叫び声を上げたんだ。それは、もう盛大に...。
そしたら...。
「咲季!!!もう観念しろ!!!!お前はもう既に包囲されている!!...ってあれ???何してんだ...お前ら...??」
部屋に飛び込んできた十希の目が点になっていたのも無理はない。
何故なら、咲季がポケットから取り出していたのは、へなちょこ侍の大量についたこしぬ剣の原寸大刀を手に持って、俺の首に構えていたのだから。
そんな誰もが困惑する状況のはずだが...ここにいる奴らは、馬鹿じゃないのか...??
「...っ!!!咲季!!お前は、何をしようとしているのか分かっているのか!!!!?...いいか!!早まるな!!叶芽の首に突きつけている剣を大人しく下ろすんだ。ゆっくり床に置いて...叶芽をこちらに渡すんだ!!」
「...っ!!嫌ね!!誰がそんなことするものですか!!叶芽様は、昔から私のものだって決まっているのよ!!...あなたの構えているその銃を下ろさないと...叶芽を今ここで殺すわ!!」
...なんだろうか...この茶番劇は...。
そして、どうして十希がへなちょこ侍の宿敵であるピストルンをこちらの構えているのか、全く理解が追いつかない。
そして十希の背後から駆けつけてきたシェアハウスの皆が構えていたものを見て、俺はとうとう我慢の限界を迎えた。
『お前らは、馬鹿じゃないのか!!!!!なんて茶番劇をしているんだ!!!第一、咲季が構えているこの剣はな、おもちゃなんだよ!!!そして、十希...真面目なお前まで一体何をしているんだ!!!お前が構えているのは、ピストルン仕様のちゃっちいおもちゃだろ????それから、シェアハウス民が構えているそれは、ツッコんで下さいと言っているようなものじゃないか!!!!.........なっ....なんだよ。(汗)『いや~、ちゃっちいおもちゃってそれ本気で言ってる???叶芽さん。』...あっ...当たり前だろ。『ふ~ん、おもちゃっていうんだね??ねぇ、咲季さん???叶芽さん...へなちょこ侍のこと馬鹿にしたよ???咲希さんは本当にこんな人が運命の人だと思うの???』...はぁ!?何わけの分からないこと言ってんだよ!!!そんなの『えない....あり得ないわ!!!!へなちょこ様を侮辱するなんて、最低!!!!貴様、命が惜しくないようだな???いいぞ、お望み通り私のこの刀で成敗してくれるわ!!!!(怒)』....冗談きつすぎ。だいたいこんなおもちゃで...ぐわぉ....バタンッ。」
俺は完全に甘く見ていた。
オモチャだろうと思っていた刀や銃...そしてシェアハウス民が構えていた大きな原寸大のへなちょこ侍フィギュアは、なんと本物並みの威力を持っていたのである。
咲季が俺に振り下ろした刀は木刀で出来ており、それで勢いよく殴られたため、俺は一瞬にして気を失った。
倒れ込んだ俺の横で、咲季は酷く幻滅しており、倒れて気を失っている俺に一言『最低!!!あんたなんかこっちから願い下げよ!!!!』と吐き捨てて部屋を出て行ったのだった。
部屋に残っていた他の人たちは、倒れた叶芽を抱えてシェアハウスに戻るのだった。
「ごめん...。君の気持ちには、気付いていた...。...慰めたのは、覚えているよ。君がまだ...狩人を作ってまもない頃、俺は家族のことで病んでいた。これから、何をして生きていこうか...今、俺は何がしたいのだろうか...。って事を四六時中考えて、でも全く分からなくて...また考えての繰り返しだった。そんな時...俺よりも酷く落ち込んでいる君を見かけたんだ。その時、本当は悪いと思ったけど、眉間に皺を寄せている君の顔が、へなちょこ侍に出てくる喋る刀...こしぬ剣にそっくりで、思わず笑っちゃったんだよ。(笑)...それで、そんな顔をしてまで何を真剣に悩んでいるのか、すごく気になってね...。興味本意で、声をかけたんだ。...まさか、それで君を更に傷つけていたなんて、知らなかった...。本当にごめん...。でも、君のやった事は許されることじゃないと思うし...俺も、十希という大切な人を傷つけられたから、今も殺してやりたいほど憎いよ??...でも、君の考えていたこと。君の過去を聞いて...君だけに全責任を負わせるのは、なんだか違う気がした。」
俺が、咲季を見つめながらこういうと、咲季は、俺に背を向けたまま肩を上下に揺らしていた。
俺は彼女を怒らせてしまったと確信した。だから、彼女に次にかけるべき言葉を必死に心で準備していたのだが...。
俺が話し終わったと同時に俺の方を振り向いた彼女は、いつかと同じこしぬ剣の顔をしてこう言ってきたんだ。
「...叶芽様。あなたの褒め言葉は、私の心には大きすぎます!!...こしぬ剣と同じと言ってくださるのなんて、後にも先にも叶芽様だけしかいなかった。叶芽様...私、その言葉だけで十分です!!」
「えっ...。(なんか違う気がする...。)」
俺は、正直戸惑ってしまった。
だって彼女に言った言葉は、褒めた言葉という訳ではなく...どちらかと言えば、貶したに近いと言えることだったのだから。
こしぬ剣に似ていると言われて怒らない子は、いないと思ったんだけどな...これは予想外だ...どうしよう...。
ここで彼女を怒らせることで、シェアハウスの仲間が飛び込んでくるっていう当初の計画が...これじゃあパー通り越してグーじゃんけんぽいじゃん...。
あー、どうしよ...。
こんなことを考えている間にも、目の前の咲季は、勝手に話を進めてしまっている...ちょっと待って欲しいものだ。
「...まさか、叶芽様もへなちょこ侍を知っていらっしゃるなんて...。これはもう、運命としかいいようがないのでは!??...さぁ、叶芽様???これから、へなちょこ侍について一緒に語り合いましょう???」
目の前の咲季が俺の腕をとり、強引に立ち上がらせようとしたため、俺は咄嗟に叫び声を上げたんだ。それは、もう盛大に...。
そしたら...。
「咲季!!!もう観念しろ!!!!お前はもう既に包囲されている!!...ってあれ???何してんだ...お前ら...??」
部屋に飛び込んできた十希の目が点になっていたのも無理はない。
何故なら、咲季がポケットから取り出していたのは、へなちょこ侍の大量についたこしぬ剣の原寸大刀を手に持って、俺の首に構えていたのだから。
そんな誰もが困惑する状況のはずだが...ここにいる奴らは、馬鹿じゃないのか...??
「...っ!!!咲季!!お前は、何をしようとしているのか分かっているのか!!!!?...いいか!!早まるな!!叶芽の首に突きつけている剣を大人しく下ろすんだ。ゆっくり床に置いて...叶芽をこちらに渡すんだ!!」
「...っ!!嫌ね!!誰がそんなことするものですか!!叶芽様は、昔から私のものだって決まっているのよ!!...あなたの構えているその銃を下ろさないと...叶芽を今ここで殺すわ!!」
...なんだろうか...この茶番劇は...。
そして、どうして十希がへなちょこ侍の宿敵であるピストルンをこちらの構えているのか、全く理解が追いつかない。
そして十希の背後から駆けつけてきたシェアハウスの皆が構えていたものを見て、俺はとうとう我慢の限界を迎えた。
『お前らは、馬鹿じゃないのか!!!!!なんて茶番劇をしているんだ!!!第一、咲季が構えているこの剣はな、おもちゃなんだよ!!!そして、十希...真面目なお前まで一体何をしているんだ!!!お前が構えているのは、ピストルン仕様のちゃっちいおもちゃだろ????それから、シェアハウス民が構えているそれは、ツッコんで下さいと言っているようなものじゃないか!!!!.........なっ....なんだよ。(汗)『いや~、ちゃっちいおもちゃってそれ本気で言ってる???叶芽さん。』...あっ...当たり前だろ。『ふ~ん、おもちゃっていうんだね??ねぇ、咲季さん???叶芽さん...へなちょこ侍のこと馬鹿にしたよ???咲希さんは本当にこんな人が運命の人だと思うの???』...はぁ!?何わけの分からないこと言ってんだよ!!!そんなの『えない....あり得ないわ!!!!へなちょこ様を侮辱するなんて、最低!!!!貴様、命が惜しくないようだな???いいぞ、お望み通り私のこの刀で成敗してくれるわ!!!!(怒)』....冗談きつすぎ。だいたいこんなおもちゃで...ぐわぉ....バタンッ。」
俺は完全に甘く見ていた。
オモチャだろうと思っていた刀や銃...そしてシェアハウス民が構えていた大きな原寸大のへなちょこ侍フィギュアは、なんと本物並みの威力を持っていたのである。
咲季が俺に振り下ろした刀は木刀で出来ており、それで勢いよく殴られたため、俺は一瞬にして気を失った。
倒れ込んだ俺の横で、咲季は酷く幻滅しており、倒れて気を失っている俺に一言『最低!!!あんたなんかこっちから願い下げよ!!!!』と吐き捨てて部屋を出て行ったのだった。
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