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「彼女の新の企み」
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暫くして、部屋に咲季が入ってきた。
俺は、咲季を見た瞬間とてつもない恐怖に襲われた。
そんな俺に気味の悪い笑みを濃くさせた咲季は、スタスタと俺に近づくと、床に倒れ込む俺の顎をすくい、自らの方を向かせた。
そうして咲季は俺の顔を見ながら、こう言ったんだ。
「うーん、やっぱり。叶芽様は、私の運命の人に違いないわ!ねぇ、私がどれだけあなたのことを待ち続けていたのか分かる??私はね、あの忌々しい十希が私の叶芽様を奪うよりも、ずっと前から叶芽様を第一に思ってきたの。なのに、なんであの男が私の叶芽様を横取りしたの??ねぇ、なんで叶芽様は、あんな男を選んだりしたの??(怒)」
正直自己中心的な態度に今すぐに殴ってやりたかったが、身動きが取れないため、目線を鋭くさせ、彼女をじっと睨みつけていた。
そんな俺の様子に、明らかに不機嫌そうな態度で彼女は、俺の顎から手を放すと、次の瞬間俺の背中に思い切り蹴りを入れてきた。
さすがに、痛みに耐えられなかった俺は、酷く顔を歪ませていた。
そんな俺の姿は、まるで目に入っていないのか、咲季は何かに取り憑かれたように声を震わせながら、次にこう話し始めた。
「私は、悪くないわ。全ては、あの男が悪いのよ。あの男は、私の大切だった彼氏をぶんどった上に、私を悪者に仕立て上げたんだわ。あいつさえいなければ、今頃私と彼は、ずっと一緒にいられたのに。恨むのなら、しゅんを恨むのね。あいつが、京(けい)を...私の大切な恋人を奪ったんだから。(怒)...叶芽様には、特別に教えといてあげるわね??私が、神楽と狩人の制度を作ったのはね...しゅんという男が、私と小さいときからずっと一緒だった京を奪ったからなの。私は京に自分の気持ちを伝えて、京もその気持ちに応えてくれていた。私は、幸せだった。京がいてくれれば、どんなに辛いことでも乗り越えられた。なのに、突然現れたしゅんが、京の気持ちを惑わしたの。京のことが好きだと言って、私から京を奪ったくせに、あろう事かしゅんは、京が自分に好意を示してくれるのかどうかで、大学の仲間と賭け事をしていたのよ。そのことに気付いてしまった京は、酷く心を病んでしまい、私の励ましも何の意味も持たず、京は自殺を図ったの。そう、しゅんに殺されたのよ。(怒)だから、私はその頃から、しゅんのことが憎くて...。そんな不幸な人を増やしたくない一心で作り上げたのがこの制度。でもね、叶芽様は、そんな私の王子様のような存在だった。叶芽様は、覚えてないかもしれないけれど、私が嫉妬に駆られていたときに、叶芽様が落ち込んでいる私に声をかけて下さったときがあったの。その時に、京のことを話したら、あなたは、優しく頭をなでてくれて......『辛かったね。一人でずっと抱えていたんだとしたら、君は本当によく頑張ったね。』って。私の凍り付いた心を溶かしてくれたの。だから、叶芽様に一生ついて行こうとその時心に誓ったの...でも直ぐに十希が現れたの。また昔みたいに、大切な人が奪われるのが、堪らなく怖かった。だから、私はあなたたちを引き離そうと手を尽くしたの。十希が大学からいなくなって、やっと叶芽様が私のものになると思っていたら、叶芽様は、私の事を酷く恨むようになって。私はその時から、あなたのことを嫌いになろうと努力した。でも、無駄だった。嫌いになろうとすればするほど、あなたの優しさを思い出してしまって。忘れる事は愚か、嫌いになることすら出来なかった......。」
目の前の咲季は、俺に背を向けているから、表情は分からないが、きっと彼女は酷く涙を流しているのだろう。彼女の、すすり泣く音が静寂のこの部屋には、痛いほどよく響いていたのだから。
俺が、この子を傷つけていた張本人なのではないのか。
こう考えた瞬間、俺はどうしようも無い罪悪感に苛まれたのだった。
もし彼女を傷つけていたのなら、俺が何とかしないと...。
こう考えた俺は、震えそうになる声で、恐る恐る咲季に話しかけたのだった。
俺は、咲季を見た瞬間とてつもない恐怖に襲われた。
そんな俺に気味の悪い笑みを濃くさせた咲季は、スタスタと俺に近づくと、床に倒れ込む俺の顎をすくい、自らの方を向かせた。
そうして咲季は俺の顔を見ながら、こう言ったんだ。
「うーん、やっぱり。叶芽様は、私の運命の人に違いないわ!ねぇ、私がどれだけあなたのことを待ち続けていたのか分かる??私はね、あの忌々しい十希が私の叶芽様を奪うよりも、ずっと前から叶芽様を第一に思ってきたの。なのに、なんであの男が私の叶芽様を横取りしたの??ねぇ、なんで叶芽様は、あんな男を選んだりしたの??(怒)」
正直自己中心的な態度に今すぐに殴ってやりたかったが、身動きが取れないため、目線を鋭くさせ、彼女をじっと睨みつけていた。
そんな俺の様子に、明らかに不機嫌そうな態度で彼女は、俺の顎から手を放すと、次の瞬間俺の背中に思い切り蹴りを入れてきた。
さすがに、痛みに耐えられなかった俺は、酷く顔を歪ませていた。
そんな俺の姿は、まるで目に入っていないのか、咲季は何かに取り憑かれたように声を震わせながら、次にこう話し始めた。
「私は、悪くないわ。全ては、あの男が悪いのよ。あの男は、私の大切だった彼氏をぶんどった上に、私を悪者に仕立て上げたんだわ。あいつさえいなければ、今頃私と彼は、ずっと一緒にいられたのに。恨むのなら、しゅんを恨むのね。あいつが、京(けい)を...私の大切な恋人を奪ったんだから。(怒)...叶芽様には、特別に教えといてあげるわね??私が、神楽と狩人の制度を作ったのはね...しゅんという男が、私と小さいときからずっと一緒だった京を奪ったからなの。私は京に自分の気持ちを伝えて、京もその気持ちに応えてくれていた。私は、幸せだった。京がいてくれれば、どんなに辛いことでも乗り越えられた。なのに、突然現れたしゅんが、京の気持ちを惑わしたの。京のことが好きだと言って、私から京を奪ったくせに、あろう事かしゅんは、京が自分に好意を示してくれるのかどうかで、大学の仲間と賭け事をしていたのよ。そのことに気付いてしまった京は、酷く心を病んでしまい、私の励ましも何の意味も持たず、京は自殺を図ったの。そう、しゅんに殺されたのよ。(怒)だから、私はその頃から、しゅんのことが憎くて...。そんな不幸な人を増やしたくない一心で作り上げたのがこの制度。でもね、叶芽様は、そんな私の王子様のような存在だった。叶芽様は、覚えてないかもしれないけれど、私が嫉妬に駆られていたときに、叶芽様が落ち込んでいる私に声をかけて下さったときがあったの。その時に、京のことを話したら、あなたは、優しく頭をなでてくれて......『辛かったね。一人でずっと抱えていたんだとしたら、君は本当によく頑張ったね。』って。私の凍り付いた心を溶かしてくれたの。だから、叶芽様に一生ついて行こうとその時心に誓ったの...でも直ぐに十希が現れたの。また昔みたいに、大切な人が奪われるのが、堪らなく怖かった。だから、私はあなたたちを引き離そうと手を尽くしたの。十希が大学からいなくなって、やっと叶芽様が私のものになると思っていたら、叶芽様は、私の事を酷く恨むようになって。私はその時から、あなたのことを嫌いになろうと努力した。でも、無駄だった。嫌いになろうとすればするほど、あなたの優しさを思い出してしまって。忘れる事は愚か、嫌いになることすら出来なかった......。」
目の前の咲季は、俺に背を向けているから、表情は分からないが、きっと彼女は酷く涙を流しているのだろう。彼女の、すすり泣く音が静寂のこの部屋には、痛いほどよく響いていたのだから。
俺が、この子を傷つけていた張本人なのではないのか。
こう考えた瞬間、俺はどうしようも無い罪悪感に苛まれたのだった。
もし彼女を傷つけていたのなら、俺が何とかしないと...。
こう考えた俺は、震えそうになる声で、恐る恐る咲季に話しかけたのだった。
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