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「初めて見せる素顔。」
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俺は、目の前で諦めかけた顔をしている䴇に向かって気がついたら、声を発していた。
「䴇、聞いてくれ。これからお前に話すことは、すべて真実だ。偽りなんて一つも無い。䴇。俺は、とても弱い男なんだ。䴇にかっこ悪い兄の姿なんて見せたくなくて、いつも必死に何でも華麗にこなせる完璧な兄を演じてきたんだ。䴇にも、本当の俺はばれていないと思って、ずっと、こんな卑怯なことを続けてきたんだ。でも、ある日䴇に、『僕の前では素顔を見せて。』と言われたとき、俺はぎょっとしてしまった。だって、これまで完璧な兄を演じてきたのに、そんな俺に対して、素顔を見せてと言うってことは、俺が完璧な兄を演じていることが䴇には、ばれていて...䴇を安心させるために頑張っていたのに、それが重荷になっていたということが、分かってしまったから。それでも、俺は偽りの兄の顔を続けるしかなかった。長年、厚い仮面を被っていたせいで、本当の俺は一体どんなものだったのか、全く思い出すことが出来なかったからだ。その時から俺は、お前に感情を...気持ちまでもを見透かされるように思ってしまい、いつしかお前の兄ではなくなってしまうような見えない恐怖に襲われる様になったんだ。それからだ...。俺がお前と距離を置くように、これまで以上にバイトに打ち込むようになったのは。そんな時、奎佐木 叶芽に出会ったんだ。叶芽は、こんな弱い俺を助けてくれた初めての友達だったんだ。俺は嬉しかった。そうして、俺たちはいつしか互いになくてはならない存在になり、俺は叶芽に密かな恋心を抱いていた。でも、なかなか言い出すことができないでいた。だって、初めて出来た友達を失うのがとてつもなく怖かったから。そんな俺の気持ちを知った叶芽は、嫌うどころか、俺を抱きしめてくれたんだ。そんな叶芽のおかげで、叶芽と俺は、恋人同士になったんだ。もちろん、周りの人は、あんまり理解してくれなくて......でも俺は...俺たちはそれで良かった。誰に認めてもらえなくても、例え性別が一緒でも、生きるために...将来を一緒に歩んでいきたいと考える人は、そんなちっぽけな偏見関係ないと思ったから。でもな、俺と叶芽の関係を知った狩人達が、俺と叶芽の仲を裂こうと動き出したんだ。俺は、叶芽に一生叶芽の事を守るからという約束を果たすため、大学を去った。今叶芽が大学に残っているのは、俺の敵を取るためだと思う。本当は、そんなことしなくていいんだ。元はと言えば、俺が神楽だった叶芽に手を出してしまったのが悪いんだから。それに叶芽には、俺の敵を取るなんて辛いことして欲しくない。でも、叶芽は優しいからそんな俺が傷つかないように...ただ、それだけを考えて生きてくれている。そんな叶芽の姿を見るのが辛くなって、俺は叶芽に何も言わずに黙って大学をやめた。そう、優しい他人の思いから逃げたんだ。」
すべてを話し終えた俺に、目からこぼれ落ちそうになる涙をこらえている䴇は、震える声で、こう訊ねてきた。
「ねぇ、それってどういうこと??叶芽が、兄ちゃんを陥れて大学をやめさせたんじゃないの??ねぇ、兄ちゃん。叶芽が兄ちゃんの事を苦しめていたんだろ???兄ちゃんの事を、虐めていたんだろ???だから、あの日もあんなにぼろぼろになった状態で家に帰ってきたんだろ!???違うのか???なぁ!!!どうなんだよ!!!!なんか答えろよ!!!(怒)」
「...すべて事実だ。だから、叶芽をこれ以上責めることは間違っている。叶芽は悪くない。俺が、叶芽を助けようとしたから、俺が自分から傷ついただけ。ただそれだけだ。」
俺の話を聞いた䴇は、頭を抱えたかと思ったら、次の瞬間大声で叫びだした。
きっと、ずっと我慢していた思いが、整理の着かない思いを、抑えきれなくて叫ばずには、いられなかったんだろう。
そんな䴇の姿に俺は何も言えずに、ぐっと拳を握ると䴇の叫ぶ姿をただじっと見つめていた。
本当は、抱きしめてやりたかったよ...。
今までろくな愛情を与えられなかった分を、存分に与えてあげたかった。
でも今の俺に、そんな資格はない。
抱きしめるなんてしたら、今度は俺が涙をこらえることが出来なくなりそうだったから。
そんな俺に声を掛けてきたのは、昨日俺に対して非常識なことを言ってきた男の人だった。
俺はその人に誘われて、外に出て話をすることになった。
はぁ、今度は何を言われるのだろう。
兄失格とでも言われるのか??
まぁ、もう今更なにを言われたところで、俺は、䴇と一緒にいることは叶わないだろうけどな......。
「䴇、聞いてくれ。これからお前に話すことは、すべて真実だ。偽りなんて一つも無い。䴇。俺は、とても弱い男なんだ。䴇にかっこ悪い兄の姿なんて見せたくなくて、いつも必死に何でも華麗にこなせる完璧な兄を演じてきたんだ。䴇にも、本当の俺はばれていないと思って、ずっと、こんな卑怯なことを続けてきたんだ。でも、ある日䴇に、『僕の前では素顔を見せて。』と言われたとき、俺はぎょっとしてしまった。だって、これまで完璧な兄を演じてきたのに、そんな俺に対して、素顔を見せてと言うってことは、俺が完璧な兄を演じていることが䴇には、ばれていて...䴇を安心させるために頑張っていたのに、それが重荷になっていたということが、分かってしまったから。それでも、俺は偽りの兄の顔を続けるしかなかった。長年、厚い仮面を被っていたせいで、本当の俺は一体どんなものだったのか、全く思い出すことが出来なかったからだ。その時から俺は、お前に感情を...気持ちまでもを見透かされるように思ってしまい、いつしかお前の兄ではなくなってしまうような見えない恐怖に襲われる様になったんだ。それからだ...。俺がお前と距離を置くように、これまで以上にバイトに打ち込むようになったのは。そんな時、奎佐木 叶芽に出会ったんだ。叶芽は、こんな弱い俺を助けてくれた初めての友達だったんだ。俺は嬉しかった。そうして、俺たちはいつしか互いになくてはならない存在になり、俺は叶芽に密かな恋心を抱いていた。でも、なかなか言い出すことができないでいた。だって、初めて出来た友達を失うのがとてつもなく怖かったから。そんな俺の気持ちを知った叶芽は、嫌うどころか、俺を抱きしめてくれたんだ。そんな叶芽のおかげで、叶芽と俺は、恋人同士になったんだ。もちろん、周りの人は、あんまり理解してくれなくて......でも俺は...俺たちはそれで良かった。誰に認めてもらえなくても、例え性別が一緒でも、生きるために...将来を一緒に歩んでいきたいと考える人は、そんなちっぽけな偏見関係ないと思ったから。でもな、俺と叶芽の関係を知った狩人達が、俺と叶芽の仲を裂こうと動き出したんだ。俺は、叶芽に一生叶芽の事を守るからという約束を果たすため、大学を去った。今叶芽が大学に残っているのは、俺の敵を取るためだと思う。本当は、そんなことしなくていいんだ。元はと言えば、俺が神楽だった叶芽に手を出してしまったのが悪いんだから。それに叶芽には、俺の敵を取るなんて辛いことして欲しくない。でも、叶芽は優しいからそんな俺が傷つかないように...ただ、それだけを考えて生きてくれている。そんな叶芽の姿を見るのが辛くなって、俺は叶芽に何も言わずに黙って大学をやめた。そう、優しい他人の思いから逃げたんだ。」
すべてを話し終えた俺に、目からこぼれ落ちそうになる涙をこらえている䴇は、震える声で、こう訊ねてきた。
「ねぇ、それってどういうこと??叶芽が、兄ちゃんを陥れて大学をやめさせたんじゃないの??ねぇ、兄ちゃん。叶芽が兄ちゃんの事を苦しめていたんだろ???兄ちゃんの事を、虐めていたんだろ???だから、あの日もあんなにぼろぼろになった状態で家に帰ってきたんだろ!???違うのか???なぁ!!!どうなんだよ!!!!なんか答えろよ!!!(怒)」
「...すべて事実だ。だから、叶芽をこれ以上責めることは間違っている。叶芽は悪くない。俺が、叶芽を助けようとしたから、俺が自分から傷ついただけ。ただそれだけだ。」
俺の話を聞いた䴇は、頭を抱えたかと思ったら、次の瞬間大声で叫びだした。
きっと、ずっと我慢していた思いが、整理の着かない思いを、抑えきれなくて叫ばずには、いられなかったんだろう。
そんな䴇の姿に俺は何も言えずに、ぐっと拳を握ると䴇の叫ぶ姿をただじっと見つめていた。
本当は、抱きしめてやりたかったよ...。
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でも今の俺に、そんな資格はない。
抱きしめるなんてしたら、今度は俺が涙をこらえることが出来なくなりそうだったから。
そんな俺に声を掛けてきたのは、昨日俺に対して非常識なことを言ってきた男の人だった。
俺はその人に誘われて、外に出て話をすることになった。
はぁ、今度は何を言われるのだろう。
兄失格とでも言われるのか??
まぁ、もう今更なにを言われたところで、俺は、䴇と一緒にいることは叶わないだろうけどな......。
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