秋良のシェアハウス 2 〜新たな住人??〜

日向 ずい

文字の大きさ
上 下
40 / 61

「なんで、お前は冷静なんだよ。」

しおりを挟む
「おい、龍。お前は、一体いつまでそうしているつもりなんだ。なんで、秋良がいなくなったのに、お前は外に探しにも行かず、ずっと自分の部屋にこもっている事が出来るんだよ!!」

 俺は、普段シェアハウスの人にキレることなんてさらさら無いんだが...。

 今日は、違った...純粋に腹が立った。

 今まで他人に無関心だった俺が相手の行動に興味を示したのなんて、これが初めてなんじゃないのか。

 秋良がいなくなってから、はや2週間が経とうとしていた。

 毎日毎日、俺や虎太郎は秋良がいそうな所を、家に帰ってきてから、必死に捜している。

 でも、一向に見つからなくて...。

 何か事件に巻き込まれたんじゃないのかな...なんて最悪の事態を考え、日に日に不安が大きくなっていた。

 そんなとき、いつものように会社から帰ってきた俺は、龍の部屋の前を通ったんだ。

 疲れた俺の耳に聞こえてきたのは、龍の楽しそうな笑い声だったんだ...。

 俺は耳を疑った。

 どうして、秋良がいなくなったこんな時に、呑気に笑ってられるのか。

 俺には理解できなかったし、あいつが一番秋良のことを大切にしていたはずなのに......。

 秋良がいなくなってから、龍が一回も秋良を捜しにいく姿を、見たことがなかった。

 だから俺は、龍に文句が言いたくなりキレてしまったんだ。

 そんな俺の声に、龍は部屋の鍵を開けると、ニヤッとほほえみ、俺に挑発的な目を向けてきた。

「何??青波さん。俺は、今忙しいんだけど...。『はぁ??秋良がいなくなって、散々自室から出てこない癖に、何が忙しいんだよ!!お前、何企んでるのか知らないけど、秋良の家族じゃないのか!??秋良の事大切なんじゃないのか!??なんで、こんなに皆が...このシェアハウスが崩壊しかけているのに、お前は平気な顔していられるんだ!!!少なくとも俺は、この家の仲間が大好きだ。...でも、秋良がいないこのシェアハウスは、廃墟同然なんだよ。心地よさも温かさも、何一つ...今のこのシェアハウスには、何一ついい物なんて無い。』...だから??だから俺に、秋良を捜しに行けって言うのか??䴇が言っていただろ??俺が、秋良をこのシェアハウスから追い出した張本人なんだよ。そんな奴に、もう一回逢いたいと思うか??俺は、二度と逢いたいなんて思わない。だから俺は...近いうちに、このシェアハウスから出て行く。俺が出て行けば、秋良も今まで通りこのシェアハウスで暮らせるだろ。皆も、俺が居るより秋良が戻って来てくれる方がいいだろ??分かったら、そのいつまでも俺の胸ぐらを掴んでいる手を放してくれない??」

 俺は、何も言えなかった。

 だって、龍の目には、今にもこぼれ落ちそうなほどの涙が溜まっていたのだから。

 俺はその瞬間、自らの無力さを感じてしまい、龍の部屋のドアが、冷たく閉ざされた後も、暫くその場所から離れることが出来なかった。

 秋良が、戻ってくればいいだって??

 そんなわけ無いだろ??

 秋良が戻ってきて、龍がいなくなったんじゃ、結局、秋良がいない今と状況は、変わらない。

 それどころか秋良は、正気を失ってしまうかもしれない。

 だって、秋良はこのシェアハウスの誰よりも、人思いだから。

 俺も、そんな秋良に助けられて、また踊ることを始めたんだ。

 秋良のおかげで今の俺がある。

 いいや、秋良だけじゃない。

 このシェアハウス皆のお陰で、俺は、悲しい過去を塗り替えることが出来たんだ。

 このシェアハウスの住人皆がいないと、俺はやっぱり...駄目だ...やっていけないよ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人外シェアハウス

いつかの天使
BL
日本とは似ても似つかない人と人以外の種族が共存する世界。全てがご都合主義であり、なんでもやり放題な世界。そんな世界にある、どこか訳アリの人外たちが集まるシェアハウスの話。 ようこそ、管理人さん。これからはあなたがここの管理人です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

処理中です...