秋良のシェアハウス 2 〜新たな住人??〜

日向 ずい

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「家に帰ると...。」

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 シェアハウスの玄関を入り、真っ先に自室へと向かった俺は、部屋のドアを閉めると、大きく息を吐き、ベッドに力なく倒れ込んだ。

 だって、疲れたから...。

 いっつも思うんだけど、やっぱり人間は嫌いだ...。

 いっつも、自分のことだけ考えて行動する...。

 自分がやりたいことがあるのなら、たとえ他人の迷惑になっても、平気でそれを達成しようとする...。

 俺の嫌いな人間の悪い癖だ。

 ...でも、鈴斗さんは違ったな...。

 俺の事を...助けてくれた。

 自分のことだけじゃなくて...俺の事も考えてくれた。

 何だろう...この胸に灯るあたたかい気持ちは...。

 ...って!本気で何を考えているんだ!!...俺は人間が嫌いで、シェアハウスにいるのさえ、苦痛に感じているはずなのに...。

 なんでこんな...こんな...。

「こんなにも...リビングに行きたいって考えちゃうんだろう...くそっ...。」

 俺は、目に溜まりかけていた涙を慌てて消し去り、龍と秋良を離れ離れにさせる為の作戦を達成するため、部屋のドアを開け、リビングに向かった。

 「秋良さん??ちょっといいですか??」

「...っ!!...うっ、うん。どうしたの...??」

「いやー、ちょっと話したいことがあって...ここではあれなので、秋良さんの部屋に行ってもいいですか??」

「...わっ...分かった。」

 俺は、リビングへ行くと龍さんと仲良くテレビを見ている秋良に声をかけ、明らかに不機嫌そうな龍を横目に、秋良と共に秋良の部屋へと向かった。

 部屋に入ると、秋良は、俺に警戒心を含んだ目を向けて、じっと俺が話すのを待っていた。

「特に、話っていう話もないんだけど...秋良ってさ...なんでこのシェアハウスに来たの??」

「えっ...それは...親の勧めで...。」

「ふーん、親の勧めねぇ~。実の親が、シェアハウスで、息子が男に抱かれまくってるなんて知ったら、どんな顔するんだろうねぇ??」

 俺の言葉に、途端に顔を強ばらせた秋良を見ると、何故か心がスカッとした。

 人間のこういう顔は、嫌いではない。

 そんな俺に顔を強ばらせたまま、秋良が震える声で言葉を返してきた。

「...だったら、なんだって言うんだよ...。確かに...男に抱かれてるのは、事実だけど...。でも、それは皆の俺に対する愛だと思ってる。...必要とされているって...。信頼されている証拠だと思ってる。...お前には...分からないだろうけど...。」

 俺は、秋良の言葉に無性にイライラしてしまい、気付けば秋良を押し倒して、両手で力いっぱいに秋良の首を絞めていた。

 苦しそうにする秋良に俺は、笑顔でこういった。

「...男に抱かれるのが信頼とか...寂しいやつだな。...俺にわからないだろうけど??...あぁ、たしかに分からないだろうね。俺は、お前みたいに優しい両親や、信頼してくれる...必要としてくれる人間なんて、誰一人いない環境で育ったんだからな...。...人間なんて、腐ってる史上最悪のゴミでしかない。...まるで悪魔だよ。」

 こういう俺に、秋良は、クビを締められているため、苦しいはずなのに、すごく優しい顔をして、俺の頭を撫でだしたんだ。

「...いい子っ...いい...こ...。ゴメン...ね...。俺っ...なにも...しっ...らなくて...君のこと...。」

「...うるさい、黙れ!!!...てめぇ、に同情なんてして欲しくない!!...俺の気持ちなんて、わかって欲しくない!!!...お前らが別れてくれれば、俺の中で、全て上手くいくんだよ!!!」

 俺はこう言うと、頭に乗っていた秋良の手を乱暴に振り払い、サッと立ち上がると自分の部屋に走っていった。

 ほんとに...何なんだよ!!この家...!!

 ...どうして...みんなこんなに温かいんだよ!!!

 どうして...俺は、秋良を傷つけようとする度に、胸が張り裂けそうなほど痛くなるんだよ!!!こんなの慣れっ子のはずなのに...。
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