秋良のシェアハウス 2 〜新たな住人??〜

日向 ずい

文字の大きさ
上 下
19 / 61

「はぁ...やっぱり一人はいいな。」

しおりを挟む
 「䴇ちゃん??...その飲み物、あのテーブル置いたら、今日は上がっていいよ。」

「あっ、はい。...分かりました!」

 俺は、いつもの様に時給が高い居酒屋でバイトをしていた。

 今日も、普段通り飲み物を出したら、上がっていいって言われたから、テーブルにビールを運びに行ったんだ。

「大変お待たせ致しました、生ビールでございます。」

 こう言って、席を去ろうとした俺の腕を強引に掴み、引き止めたのは、俺がビールを運んでやった客だった。

 俺は、イラッとしたが、バイト中であるため笑顔を崩さずに、腕を掴んできた客を振り返った。

「...あの~、なにか御用でしょうか...?『なぁ、ねぇちゃん...めっちゃ可愛い顔してんな~。ちょっと、飽きてたところやから、話し相手になってぇ~やぁ!』...いや、あの...大変申し訳ないのですが、仕事の最中ですので...『あ??...客の相手をすんのが仕事やろ??...俺の相手はできんゆうんか???』...いえ、決してそういう訳では無いのですが...その...。」

 俺は、イライラしていたが、ぐっと怒りを抑えると、どうやってこの状況を切り抜けようか、必死で頭をフル回転させていた。

 そんな俺の様子に構いもせず、男の客は、おもむろにズボンの上から俺の太ももを触ってきた。

 俺は、全身鳥肌が走り、今すぐにでもこの客をぶっ叩きたかったが、ここは店で俺は、バイト...下手なことをすれば、バイトをクビにさせられることを考え、抵抗出来ずにいた。

 すると...次の瞬間、男性客の腕をひっつかむと同時に、斜め上からとても低い声が男に向けられ、放たれたのを聞いた。

「...あの、うちの住人に何か御用でしょうか??...と言うよりも、おじさんも趣味が悪いですよね...??この子...男の子なのに...。(笑)」

「はぁ???...お前誰だよ??趣味が悪いだ~ぁ??ふん、てめぇに言われたかねぇよ!この若作り野郎が!!」

 俺の目の前にいたのは、鈴斗さんだった。

 なんで、鈴斗さんがここに居るのかは分からなかったが、それよりもさっきから男を睨みつける鋭い目と、威圧感が尋常ではなかった。

 そんな鈴斗さんに、お酒に酔っているせいか、平気な顔をして反論してくる客に対して、鈴斗さんは男性客の耳元で何か囁くと、次の瞬間、男性客の腕を思い切り捻ったのだ。

「...っ!??痛っ...痛たたたた!!!!!...この馬鹿っ!離せ!!!...うっ...痛っ...おっ、折れる折れる!!!...馬鹿!!!シャレにならんわ!!!」

「...では、この男の子に謝って...とっととお金払って帰ってもらえますか??...ではないと、次はさっきあなたに耳うったこと...実行しますよ???『わっ...分かったよ!!!...姉ちゃんゴメンな。...ほら、代金...釣り要らないから!』...うん、よく出来ました!...もう、来んなよ??」

 客は、鈴斗さんに腕を捻られ痛さのあまり、額から冷や汗をダラダラと流しだした。

 そんな客の様子に、笑みを深くした鈴斗さんは、客に俺に謝罪することと、この店に来ないことを条件に腕を離すと言い出したため、客は、慌てて俺に謝罪をしてお金を机に置き、さっさと帰っていったのだった。

 事が終わり、ただ、呆然と立ち尽くす俺に、鈴斗さんは、ニッコリと笑顔を作ると俺の頭を軽く撫でてこう言った。

「...無事でよかった。...そんな事よりも、バイト...大変だね。お疲れ様。...家に帰ってきたら、何か甘いものでも作っておくから、皆で食べようね。...じゃあ、俺は、会社の人待たせてるからまた後でね。」

 こう言い残すとレジで会計をしていた先輩に頭を下げて、店を出ていった。

 鈴斗さん...って、見かけによらずに強くて、いい人だな。

 ...って、俺。何考えてんだか...。

 一人の方が、気楽だったのに...いや、今も一人の方が気楽だろ!?

 はぁ...早くシェアハウスの自分の部屋に帰ろ...。

 こう考えると、䴇は社員の人に『お疲れ様です!』と、100パーセント作り笑いで口にすると、帰路につくのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人外シェアハウス

いつかの天使
BL
日本とは似ても似つかない人と人以外の種族が共存する世界。全てがご都合主義であり、なんでもやり放題な世界。そんな世界にある、どこか訳アリの人外たちが集まるシェアハウスの話。 ようこそ、管理人さん。これからはあなたがここの管理人です。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

秋良のシェアハウス。(ワケあり)

日向 ずい
BL
物語内容 俺は...大学1年生の神代 秋良(かみしろ あきら)。新しく住むところ...それは...男ばかりのシェアハウス!?5人暮らしのその家は...まるで地獄!プライバシーの欠けらも無い...。だが、俺はそこで禁断の恋に落ちる事となる...。 登場人物 ・神代 秋良(かみしろ あきら) 18歳 大学1年生。 この物語の主人公で、これからシェアハウスをする事となる。(シェアハウスは、両親からの願い。) ・阿久津 龍(あくつ りゅう) 21歳 大学3年生。 秋良と同じ大学に通う学生。 結構しっかりもので、お兄ちゃん見たいな存在。(兄みたいなのは、彼の過去に秘密があるみたいだが...。) ・水樹 虎太郎(みずき こたろう) 17歳 高校2年生。 すごく人懐っこい...。毎晩、誰かの布団で眠りにつく。シェアハウスしている仲間には、苦笑いされるほど...。容姿性格ともに可愛いから、男女ともにモテるが...腹黒い...。(それは、彼の過去に問題があるみたい...。) ・榛名 青波(はるな あおば) 29歳 社会人。 新しく入った秋良に何故か敵意むき出し...。どうやら榛名には、ある秘密があるみたいで...それがきっかけで秋良と仲良くなる...みたいだが…? ・加来 鈴斗(かく すずと) 34歳 社会人 既婚者。 シェアハウスのメンバーで最年長。完璧社会人で、大人の余裕をかましてくるが、何故か婚約相手の女性とは、別居しているようで...。その事は、シェアハウスの人にあんまり話さないようだ...。

処理中です...