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施設に戻った僕たちは、花園くんを探した。
「おーい、花園くーん!」
「圭ちゃーん!!」
……返事がない。それどころか、人影すら感じられない。
「……箱の、力か?」
『ええ、そうですよ』
「糞野郎が!!」
『あの箱は望んだ願いの真逆を叶えるもの。つまり、あなた達の望んだ因果から外れた平和な世界線。を、最悪の状態で叶えたんですよぉ!』
「……因果からはるかに遠い……それどころか、因果の干渉できない、何もない世界……」
それは、何もなかった。パッチワークゾーンとはまた違う、何かだった。
町もない。水もない。食料もない――そんな世界線だった。
「あ、伊勢谷さん、あれ」
「っ!!」
いた。人が、いた。あれは――
「花園君!!」
唯一の生存者――いや、唯一因果から外れることのできたとしたら、それは箱の力を持った僕やヘレンのような人間だけだ。
生存者一名。人類はわずか三人。街もない。食料もない。それは――
「死ぬしか……無い……」
「ヘレン……?」
「死ぬしかないのよ!!! こうなった以上!!!」
やめろ――
「もう後は死ぬだけじゃない!!!」
そんな彼女を止めたのは、花園君だった。
「やめて」
「どいて……」
「嫌だ」
「あなたもろとも殺すわよ!?」
「いいよ! 気が済むまで!!」
「つ……!」
取りあえず――何をするかは明確だった。
「僕は旅に出る。君たちは、残ってくれ」
「え……?」
生還者を、箱に触れた者たちを探し出す。これは、僕がそう決めたからだ。
「施設だけは何故か無事みたいだし。ここに居れば食料も水もある程度なら何とかなる。僕は、他に君たちみたいなのがいないか探してくる」
「私も行きます!!」
「……正気か?」
「はい。長くなってもいい。いつになっても終わらなくてもいい。でも、自分で起こした悲劇は、自分の手でけじめをつけたい」
……いい心構えだ。それでこそ、勇者だ。
伊勢谷さんが旅に出るとき、どうしてもと言ったが、止められた――そこで、私は生存者のみんなと共に、nextを作った――ところまでは何ら変わらない。変わるとすれば――
「ねえ、どうしたらいいの?」
「え? な、何が?」
「僕は何をすればいいの?」
圭の性格がまるっきり違うことだ――
すべてを感情をこめずにやりこなすマシーンのような性格――そこは、変わってはないんだとは思う。でも、感情を失い――マシーンと化した人生が、楽しいわけがない。苦しいだけに決まってる。
そんなの間違ってると言いたいけど――私も、繰り返す時間歩行の中で感情を失いかけた。
その時に助けてくれたのが圭だったら――
私が今の圭を助けてあげるまで。
「何をすればいいかじゃないわ。あなたのしたいことを決めなさい。それが、あなたにあげる命令よ」
「……何を、したいか……」
その表情は、何を悟っていたのかは知らない。
「おーい、花園くーん!」
「圭ちゃーん!!」
……返事がない。それどころか、人影すら感じられない。
「……箱の、力か?」
『ええ、そうですよ』
「糞野郎が!!」
『あの箱は望んだ願いの真逆を叶えるもの。つまり、あなた達の望んだ因果から外れた平和な世界線。を、最悪の状態で叶えたんですよぉ!』
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それは、何もなかった。パッチワークゾーンとはまた違う、何かだった。
町もない。水もない。食料もない――そんな世界線だった。
「あ、伊勢谷さん、あれ」
「っ!!」
いた。人が、いた。あれは――
「花園君!!」
唯一の生存者――いや、唯一因果から外れることのできたとしたら、それは箱の力を持った僕やヘレンのような人間だけだ。
生存者一名。人類はわずか三人。街もない。食料もない。それは――
「死ぬしか……無い……」
「ヘレン……?」
「死ぬしかないのよ!!! こうなった以上!!!」
やめろ――
「もう後は死ぬだけじゃない!!!」
そんな彼女を止めたのは、花園君だった。
「やめて」
「どいて……」
「嫌だ」
「あなたもろとも殺すわよ!?」
「いいよ! 気が済むまで!!」
「つ……!」
取りあえず――何をするかは明確だった。
「僕は旅に出る。君たちは、残ってくれ」
「え……?」
生還者を、箱に触れた者たちを探し出す。これは、僕がそう決めたからだ。
「施設だけは何故か無事みたいだし。ここに居れば食料も水もある程度なら何とかなる。僕は、他に君たちみたいなのがいないか探してくる」
「私も行きます!!」
「……正気か?」
「はい。長くなってもいい。いつになっても終わらなくてもいい。でも、自分で起こした悲劇は、自分の手でけじめをつけたい」
……いい心構えだ。それでこそ、勇者だ。
伊勢谷さんが旅に出るとき、どうしてもと言ったが、止められた――そこで、私は生存者のみんなと共に、nextを作った――ところまでは何ら変わらない。変わるとすれば――
「ねえ、どうしたらいいの?」
「え? な、何が?」
「僕は何をすればいいの?」
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すべてを感情をこめずにやりこなすマシーンのような性格――そこは、変わってはないんだとは思う。でも、感情を失い――マシーンと化した人生が、楽しいわけがない。苦しいだけに決まってる。
そんなの間違ってると言いたいけど――私も、繰り返す時間歩行の中で感情を失いかけた。
その時に助けてくれたのが圭だったら――
私が今の圭を助けてあげるまで。
「何をすればいいかじゃないわ。あなたのしたいことを決めなさい。それが、あなたにあげる命令よ」
「……何を、したいか……」
その表情は、何を悟っていたのかは知らない。
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