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伊勢谷慎二/miu√

悪意に満ちた反乱『上』

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 作戦内容を伝え終えた僕は、部屋に戻り一人考えていた。この作戦に終木神をどう混ぜるかで、だ。当然、簡単なことじゃない。それでもたった一度だけあいつを信用したことがある。死にかけた時だ。僕はもう能力が使えなかった。そこで、あいつに奪わせ一命をとりとめる未来につないでもらった――といった具合だ。まあ、当然信用する道理はない。義理もない。

 義理堅い性格の奴ならすぐさま信用していただろう。だが、僕はずっとこいつと一緒を約束されてしまった。それ故にこいつの信用など端から無い。それどころかこいつと一緒が嫌だ。
 といった具合に毛嫌いしているのである。わかってもらえただろうか。わかっただろうな。当然だ。しかしこう言ってしまってはあれだが、こいつ一体何なんだ? 人に喰らわれて乗り移るなんて。能力者でも説明がつかないぞ。

「影の存在……ねえ」
「なにかお気に召しましたか?」
「ん? いや」

 気に召してないと言えばうそになる。しかし、嘘をつかなかったところで何にも言えんからなあ。うん。お気に召したって言っとこう。

「お気に召したわ」
「マジすか」
「うっそー」

 なんて低レベルの争いを繰り広げながら僕はこいつの処分をどうするのか決めていた。圭に言うわけにもいかない存在だ。何故なら、あいつらはまだ未熟。それ故にこの問題は早すぎる。だからこそあいつらには内緒にしてきたって言うのに。でも、徐々にそれもばれ始めていた。何かを隠してるんじゃないのか――そう、あいつらが言ってきたことがあった。当然間違いなんかじゃない。
 あいつらの未熟さでこの能力問題に首を突っ込んでみろ。それこそ首ひとつ残らんぞ。それだけじゃない。首どころか頭二つくらい吹っ飛ぶ。それだけこの問題は重要なんだ。

 さて。こいつの恐ろしさは伝わったと思う。次に、今回の問題の整理だ。問題はこうだ。
 恐ろしい敵が現れた。その敵は能力を酷使して、世界征服をもくろんでいる。しかし僕たちにはそれを止めるすべがある。ならやるしかない。命に代えてもやるしかない。
 だって、僕らは勇者だから。

「引きこもりの僕が勇者にされた理由……か」
「ん?」
「そんなん決まってんじゃん……」

 引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。それは、父さんの夢だったから。父さんの叶えさせたい夢があったから。だから、だから僕は勇者になった。それはずっと前から決まっていたことだ。故に理由なんていらない。引きこもりの勇者の物語は何事でもない、ただの運命だったのだ。
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