引きこもりの僕がある日突然勇者になった理由。ファイナル

伊勢谷慎二/miu√

逆境の上の勇者

　客入れじゃないなら何なのか。それは――

「……能力者同士のバトル、か」
「え？」
「次の任務だよ」
「そう……なんですか？」
「ああ」

　能力バトル。と言っても能力の取り押さえだ。能力は今、十二年前、封印されていた記憶の後、繁栄を始めていた。パイロキネシス、サイコキネシス。そんなありきたりな能力ばかりで、世界は反映していった。

「能力の取り押さえねえ……終木神。出来るのか？」
「出来ますよ？　もちろん」

　こいつの能力は能力の剥奪。能力を奪い、自分のものにする。――そうである。あの三国エルザの力も超能力の一種である。
　時空切断なんて人間業じゃないこと超能力じゃなかったら無理に決まっている。

　だがしかし、こいつのやろうとしていたことは能力制度による能力者の統率である。それ故に、止めなければいけなかった。理由は、レベルの低いもの、能力のないものは即刻排除。処刑させられてしまうからである。だが、それは止めなければいけない。そう思って止めた。

「お前のやろうとしたことは許せない。だけどだ」

　許さなければいけない。ということだ。でないとこいつは暴走していた。だから何も被害がない方法でやる必要があった。だからこそ、こいつと一心同体を選んだというわけだ。最初はなんだか悔しかったが、今はそんなことは思わない。むしろ、俺がこうして出て居れば絶対に安心というわけだ。
　だが、絶対に俺が出ているという保証はない。例えば――

「美雨さん。愛してます」
「は？　キモイ」
「ははー、冗談がおきつい」
「タヒね」

　なんてことがあったり……

「……はあ、どうするか」

　こいつが中に居るとろくなことにならねえからな……さてさて、どうするか。

　なんてこと考えながら、僕は作戦の説明をしていた。正直眠い。