33 / 47
勇者覚醒
詰み状態
しおりを挟む
「役目は終わった。行くぞ」
「しかし花沢晴の確保が……」
「気が変わった。今日のところは撤退だ」
そういうと何事も無かったかのように彼らは撤退していく。今の数十分のやり取りは、鮮明に記憶に残った。彼は笑っていた……平然と人体実験をする、そういった。それほどまでに狂気に満ちた人間に、太刀打ちできるのか……?
「うっ、……くっ、逃げられたか……」
「エルザさん、半蔵さん!」
とりあえず2人の応急処置をする為に、晴ちゃんが医務室へ向かった。
だけど、何故ああなってしまったのか。聞かない訳にも行かない。情報共有はもはや必須だ。ふたりの知っている情報を、教えてもらう。
「ケビン・アルトベルト……あいつはやばい。だから私達は深くまで探らずに撤退してきたが……」
傷を見ながら、エルザさんは拳を地面に叩きつけながら言う。もし力があればあの場で彼を止めれた、と。だが彼は既に「手に入れている」のだ。力を。その圧倒的なまでの力の前に彼らは何も出来ずに吹き飛ばされた。そして、彼の計画もいよいよ本題に入った。十分だ。それだけの理由があるなら彼が勝ち誇るには十分だ。
僕らに力が無かっただけの話。彼らに力があっただけの話。それだけなんだ……
「晴ちゃんを今度は本気で殺しにかかるかもしれない。だけど、彼らを止めなきゃ行けない……」
「連れていけば死ぬ。連れていかなくても死ぬ、か。板挟みだな……」
晴ちゃんをどうするか。それについて議論をしていた。彼女の身柄は今はまだこちらにあるが、今後はどうなるかはわからない。途中で誘拐されるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
どうすれば正解なのか僕達にもよく分からない。これから僕達はケビンという男を止めるために行動するが、どうすればいいのか分からない……どうやって止めるのか。どうしたら敵わないはずの彼を止めるのか。
その全てにおいて現状は手詰まりという状況だった。
「……とりあえず、今は二人とも傷の完治を優先してください。きっと、彼らは僕達が動かなければ何もしてこないはずです」
「何故そう言いきれる……?」
「彼のあの目は……きっとただでは殺さないはずです」
「そうか……」
こちらから動かなければーーとは言っても限界はある。だが、今はその限界ギリギリまで粘るしかできなかった。
「しかし花沢晴の確保が……」
「気が変わった。今日のところは撤退だ」
そういうと何事も無かったかのように彼らは撤退していく。今の数十分のやり取りは、鮮明に記憶に残った。彼は笑っていた……平然と人体実験をする、そういった。それほどまでに狂気に満ちた人間に、太刀打ちできるのか……?
「うっ、……くっ、逃げられたか……」
「エルザさん、半蔵さん!」
とりあえず2人の応急処置をする為に、晴ちゃんが医務室へ向かった。
だけど、何故ああなってしまったのか。聞かない訳にも行かない。情報共有はもはや必須だ。ふたりの知っている情報を、教えてもらう。
「ケビン・アルトベルト……あいつはやばい。だから私達は深くまで探らずに撤退してきたが……」
傷を見ながら、エルザさんは拳を地面に叩きつけながら言う。もし力があればあの場で彼を止めれた、と。だが彼は既に「手に入れている」のだ。力を。その圧倒的なまでの力の前に彼らは何も出来ずに吹き飛ばされた。そして、彼の計画もいよいよ本題に入った。十分だ。それだけの理由があるなら彼が勝ち誇るには十分だ。
僕らに力が無かっただけの話。彼らに力があっただけの話。それだけなんだ……
「晴ちゃんを今度は本気で殺しにかかるかもしれない。だけど、彼らを止めなきゃ行けない……」
「連れていけば死ぬ。連れていかなくても死ぬ、か。板挟みだな……」
晴ちゃんをどうするか。それについて議論をしていた。彼女の身柄は今はまだこちらにあるが、今後はどうなるかはわからない。途中で誘拐されるかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
どうすれば正解なのか僕達にもよく分からない。これから僕達はケビンという男を止めるために行動するが、どうすればいいのか分からない……どうやって止めるのか。どうしたら敵わないはずの彼を止めるのか。
その全てにおいて現状は手詰まりという状況だった。
「……とりあえず、今は二人とも傷の完治を優先してください。きっと、彼らは僕達が動かなければ何もしてこないはずです」
「何故そう言いきれる……?」
「彼のあの目は……きっとただでは殺さないはずです」
「そうか……」
こちらから動かなければーーとは言っても限界はある。だが、今はその限界ギリギリまで粘るしかできなかった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
異世界グルメ紀行~魔王城のレストラン~商品開発部
ペンギン饅頭
ファンタジー
予算使い放題、自由出勤、ノルマ無し、命の危険多少あり。魔界最強を誇り、闘う事にしか生きる意義を見出せない 『堕天使ロキエル』 現代日本からやって来た、料理を作る事しかできない、ちょっとアホっ娘な 『天才料理人マリ』 ふたりのポンコツが織りなす、美味しい異世界ファンタジー。
魔王様は日本からの稀人である、マリの才能をいち早く見抜き、その守護者として、ロキエルに白羽の矢を立てた。魔界統一を目前にした血塗れの最前線から、急遽、呼び戻されたロキエルに、まるで畑違いのレストラン商品開発部への異動辞令が下される。と或る事情があって、日本通のロキエルは、戸惑いながらも、すぐにマリと心を通わせ合う事ができたのだが、マリの謎の言動に振り回されてばかり。どうなる事やらと、ため息混じりの日々を送っていた。
挨拶代わりに人を殴りつける『勇者様』 やたらと爽やかな、心優しき好青年『魔王様』 魔界の至宝と讃えられる、冷静沈着なダークエルフ『給仕長』 とにかく可愛い、メイドの兎っ娘『ラビ』 元気一杯、メイドの狼っ娘『ウル』 マリに反感を持つ『総料理長』 魔王様の座を虎視眈々と狙う『謎の人物』 入り乱れての、大騒ぎ、大乱闘!?
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
オルタナティブバース
曇天
ファンタジー
高校生、堂上 早苗《どうがみ さなえ》は夏休みに、MT《マインドトランスファー》型MMORPGのテストプレイヤーとして選ばれる。 そのゲームプレイ中、テストプレイヤーたちはゲームからでられなくなってしまった。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる