彼女の中指が勃たない。

坪庭 芝特訓

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『末端冷え性』 2指目

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「あっためる?」
「うん」
「貸して」

 今日の若葉は違った。
 両手で差し出された冷たい右手を掴むと、ゆっくり小さな口を開けた。
 何をしようとしているのか詞亜にもわかった。
 しかし若葉が躊躇う。指先についた体液に。
 それは若葉から、自分から出たものなのだが。
 それを詞亜が理解し、濡れた自分の指を自分で咥え込む。
 これで自分のではなく、愛する人の体液にまみれた。
 安心したように若葉が咥え込むと、

「う、あ」

 詞亜の口から声が出た。左手でぎゅうと握り拳を作る。
 やばい、と思った。
 予想以上の感覚だった。
 若葉が口内で舌を這わせ、頭を前後させてストロークさせる。
 指の間を小さな舌でペロペロ嘗める。
 子犬がじゃれているようだが、意思と目的を持った目が違うと言っている。
 もっと性的で、官能的だった。

「は、ああ」

 詞亜の内部と小さな剣が疼く。
 それは、男性器を舐める行為に似ていた。
 中指、薬指、人差し指を嘗め、熱い口内の体温を宿らせると、

「もういい?」
「うん…」

 訊かれた詞亜が返事をする。
 充分あったまった。準備は整った。
 左手で若葉の背中を支え、ベッドに横たわらせようとすると、

「待って」
「えっ?」

 掠れた声で、なに?と訊く。
 早く入れたかったが、

「あぐらかいて」

 言われるままベッドにあぐらをかく。
 若葉がそこに座ると、右手を濡れた部分に誘う。
 若葉の喉がくるるっと鳴る。
 目の前の首に腕を回して抱きつくと、温められた中指と薬指を、下で咥えこんでいく。
 侵食されていく嬉しさと、飲み込まれていく怖さ。
 痛くない?などとは詞亜は訊かない。
 若葉は痛さすら自分のものにしてしまうからだ。

「うう、うう」

 若葉が腰を動かすと、ぐちゅう、ぐぷうという空気を含んだ音がし、詞亜の耳を犯す。
 動くたびに互いの胸が擦れる。
 密着したい。が、刺激も欲しい。
 若葉が自分の小さな右手を詞亜の部分にもあてがう。

「んん」

 詞亜が腰を動かしてその右手にぶつける。
 その振動が若葉の中に伝わる。
 夢中になって行う永久運動。しがみつき、中を締めつける。
 いくんだと感じた時、詞亜は自分の小さな剣を更に押し付けた。
 一緒にいきたい。
 そう思った瞬間、

「いいいっ」

 若葉は歯を食い縛り、痛みに耐えるように声をあげる。

「んんんっ」

 逆に詞亜は奥歯を噛みしめ、声を殺す。
 お互いの脈動がシンクロし、収まると、

「ああっ、ああ」

 詞亜の目から涙が出てきた。
 頬を伝う涙を若葉が嘗めとる。
 そうしてくれるのが好きだとわかっているからだ。
 軽く押してベッドに詞亜を倒れさせる。
 指は中に入れたままだ。

「抜く、よ」
「うん」

 ぬるりと抜くと、中指、薬指、人差し指に白っぽい粘液がまとわりついていた。
 中で特に感じた時に出てくる謎の粘液だ。
 精液みたい、と若葉が言う。

「見たことないよ」
「あたしも」

 笑う頬に口付ける。
 男をしらない部分が長い指を三本も咥え込む。
 なんていやらしい、と思うが詞亜は言わないでおく。
 粘液の付いた指をティッシュで拭うと、二人でベッドに横たわった。
 しばらく気だるい雰囲気に包まれるが、

「…寒い」

 詞亜が思い出したように言う。

「いましたじゃん」

 したばかりだから身体はあったまったはずだと若葉は言うが、詞亜は布団を引き上げて二人の身体に被せる。
 むき出しの肩のあたりまで引き上げ、寝かしつけるようにトントンと叩くが、火照った若葉は少しうっとうしいぐらいだった。
 仕返しに詞亜の何もつけていない、まだしっとりしている部分を腿でなぞりあげてやる。
 が、ふと思いついたように、

「しあちゃん、足曲げて」

 言われた通りに詞亜が膝を抱え込むと、爪先に触れる。

「あしつめたい」

 末端冷え性なだけあって手先も冷たいが足先も冷たい。
 更に布団にもぐると足側に抜け、

「あしのばして」

 操り人形のように詞亜が言われた通りにする。

「伸ばしすぎだわ。もうちょい曲げて」
「どっち」

 何をしたいのかわからないが言われる通りにする。
 犬が伏せをするように若葉が身体を下げる。
 そして身長からすれば当然な、25センチの足を掴むと、大きな安い菓子パンでも食べるように口に含もうとしてきた。
 気付いた詞亜が足を引っ込めようとするのを、若葉が手に力をこめて留まらせる。
 無理に動かせば顔を蹴ってしまう。
 詞亜はシーツを掴んで耐えた。
 親指から順番に、一本一本口に含み、冷たい足先を温かい口内が溶かしていく。

「あーっあーっ」

 初めての感覚に、詞亜が声にならない声をあげた。
 爪に歯をたて指の腹を甘噛みする。
 足裏を嘗めあげる。
 隙をついて足を引っ込めると、今度は伸ばしたままだった右足を掴んだ。
 何かを思いついた顔で若葉が詞亜を見上げる。
 視線を絡ませたまま右足を自分の股間へ持っていき、ぐちゃぐちゃと粘液をまぶすと、そのまま足の指を内部に埋め込んだ。

「ひうっ」

 未体験なおぞましい感覚が詞亜を襲い思わず目を瞑る。
 長さは、手に比べれば全くもって足らない。
 入り口しか満たせない。
 何の意味もない行為。
 しかし嫌じゃない。
 熱を持つ入り口が冷えきった足先を溶かす。
 子供みたいだと言っていた手の指も、足の指に比べれば大人と子供ほどの差がある。
 閉じたままだった目で若葉を見ると、それが合図だったとばかりに獣の早さで胸に飛び込んで来た。
 詞亜の濡れた部分を、見もしないで小さな手指でぐちゃぐちゃと捏ね回した。

「あはあっ」

 気持ちよさと嬉しさで、詞亜が今まで出したことのない声が出る。
 好き勝手にする手遊びみたいで、だから気持ち良かった。
 中には入れない。あくまで表面を、入り口を。
 詞亜は若葉と違い、小さな指でも中は痛がる。
 体の大きさと内部の大きさは比例しない。
 自分とは違ってそんな慎ましい詞亜が若葉が大好きだった。

「しあちゃん」
「あああ」
「気持ちいい?」
「んんん」

 詞亜は返事もろくにできない。
 快感に壊れてしまいそうだった。

「だっこしてえ」

 若葉が甘える幼児の声で言う。
 かまってもらえないことと、彼方へ飛んでいってしまうことへの恐怖か。
 幼子を詞亜は右腕だけで抱きしめる。
 若葉の背中は汗ばみ、匂いたつほどの女の香りがした。
 右腕と身体の前面で抱きしめる。
 それは大きな詞亜の体が若葉の身体を取り込んでしまうようだった。
 身動きがとりづらい中、若葉が右手だけを動かす。
 詞亜の長い腕に力が込められる。

「いきそう?」

 答える代わりに訊かれた方は肩口に顔を埋める。
 小さな中指と薬指で限界まで膨らんだ剣を優しく挟む。
 限界まで膨らんでもなお、体に見合わず小さいそれを。

「んううっ」

 詞亜の腹筋が痛いほど収縮し、ゆっくりと弛緩する。
 肺に溜め込んだ息をゆっくり吐くと、若葉がくすぐったそうに身を捩る。
 くすぐったさは気持ちよくさせたという満足感も含んでいたが。

「おつかれたん」

 抱きしめられたまま若葉が言う。

「うん」
「だいじょーぶ?」
「うん」
「きもちかった?」
「…うん」

 詞亜は返事しかできない。肯定しか。

「しあちゃんないてる」

 若葉が左手で流れてきた涙を拭ってやる。

「こどもみたい」

 笑いながら鼻を摘ままれ、詞亜は自分の鼻先が冷たいことに気付いた。

「寒い」
「まださむいの?あたしあついくらいだけど。コーラのみたい」
「バカじゃないの」
 
 笑うと腹筋が痛かった。
 お腹が冷えてしまうかもしれない。
 布団を引っ張る。
 抱きしめた体勢のままなので若葉の体に布団がかかる形になり、詞亜の背中は寒かった。
 だがそれなりに暖かった。

                             (了)
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