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『氷食症』 2キーン目
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そんなことを、ふと思い出し、
「さきち、氷系アイス食べる?」
「たまにね。割と美味しい。あれ」
文華が訊いてみると、早希はもうその域に達していた。
甘いアイスを脱して氷系を攻めてるならば身体の負担が減るのでは、と思ったが違う。
それが食べたいというより、食べたい新商品アイスを食べ尽くしてしまったのだ。
だからアイスではなく、氷菓と呼ばれるようなものにまで手を出していた。
新商品買いはバラのコンビニならそれがしやすい。箱は量が多い分、新商品は少ない。
となれば、
「あのさ、」
文華が前から思っていたことを提案する。
ファミリーサイズを買ってみてはどうだろうと。
それならば食べきるまで、時間稼ぎが出来る。
一つのカップアイスを三回にも分けて食べる早希なら、食べ過ぎるということもない。だが、
「ええー?それはダメだよぉー」
ダメと言いつつなぜか嬉しそうだ。笑顔で身体をクネクネさせている。
「買ったことないの?」
「あるけど、ほら…」
「……ああ」
最後まで言われずとも理解出来た。
ファミリーサイズはその容量ゆえ、かなり場所をとる。
箱アイスでさえちょっと、と思っているのだ。
こちらはわざわざ箱を潰し、アイスだけを冷凍庫にしまうなど気を使ってるのに。
おまけに家庭用ではなく自分用。家族に白い目で見られた過去があるのだろう。
「あと当たりハズレあるしさ」
早希が言うには、安くて量が多いのは乳脂肪分の比率がおかしく、嘘くさい味らしい。
「詳しいね」
「大体のやつは食べたから」
「そうなの?」
一つのファミリーサイズアイスに手を出すと、大概バニラ、チョコ、ストロベリーなどの味が展開されているので、これを食べたら次コレを食べようと、登るべき山がたくさんそびえていて安心するらしい。
しかしそれもなんだかんだで食べ尽くしてしまった。
いよいよ食べるのが無いのでは、と文華が思っていると、
「あとさ、」
「うん」
「買って帰るのが大変」
言われてそうかと納得する。
二リットル、二キロあるアイスを買って帰るのだ。
車やバイクがあるならまだしも、中学生位の二人にとって移動手段は自転車くらいしかない。
「あと、意外とマニアックなスーパーとかで売ってるから」
マニアックなアイスは家から遠い、郊外のスーパーなどで見つけることが多いという。
バラでも箱でもファミリーサイズでも。
あるいはコンビニアイスとしてデビューしたアイスが思いの外売れず、業務スーパー、100円ショップ、マニアックスーパーのアイスコーナーで投げ売りされていることもあるという。
値段を抑えるためにはそのあたりは大変重宝する。
早希はそう言っていた。
家から遠い場合そんなお宝を見つけても、泣く泣くその場で食べれるバラを一個だけ買うのだと。
おうち用には買えないと。
そして、文華は見つけてしまった。
「これ…」
たまたま飲み物を買うために入ったスーパーで。そのアイスコーナーで。
なんとなく以前聞いたマニアックアイスの話を思い出し、覗いてみたら。
ちょっと見たことのないパッケージ、聞いたことのないメーカーのファミリーサイズアイス、2リットル。
しかもパッケージの説明を見ると、濃厚バニラとほろ苦キャラメルのマーブルアイスに、微細なカリカリキャラメルが入っている、というあまりアイスを食べない文華でも惹かれる商品だった。
おそらく輸入モノではないか、そしてあの子も見たことはないのでは。
アイス好きのあの子も知らないアイスを見つけたのではと、興奮を抑えつつスマホで調べてみる。
マイナーか有名か。すると、
「なんだ、結構有名なのか」
ヒットした情報にがっかりする。
思った通り海外産で、アイスマニアの間ではかなり有名なものらしい。
しかしマニアの間では有名なだけで、文華のような一般人は知らないようだ。
海外に行ったら必ず買って食べる、日本じゃ売ってないから、という声が多い。
じゃあなぜそんなアイスがここに、と思っているとニュース記事が合わせてヒットしていた。
どうやらこの有名アイスが地方のスーパー限定で輸入されているらしい。
それについて、
なんで売ってるのがこんなマイナースーパーなんだ…。普通に輸入食料品屋で売れよ。
実家の近くだから年老いた両親に買いだめしといてもらおう
全国展開してェえええ。おねがいいいいい。
売れたら全国進出するかな
人気ってことが日本に知れ渡ればあるいは
オクで流すやついそう
などアイスに掛ける執念が凄まじい。
これならばとすぐに早希に連絡してみる。
『なんか珍しいアイス見つけたんだけど買ってく?』
というメールを、撮ったパッケージ写真とともに。
いやあ、偶然見つけたんだけどさあという雰囲気とともに。
『それネットで見たことある!食べたい!買ってきて!』
すぐに届いたテンションの高い返信に嬉しくなる。
「へへっ。…あ」
しかし、文華は一番大事なことを忘れていた。
距離と、気温だ。
最近の文華はお寺にいる猫をカメラで撮ることにハマっていた。
夏でも涼やかな境内で気持ちよさそうに寝そべっている猫を撮る。
そんな、趣味ともいえない遊びにハマっていた。
ちょうど今日は自分が住む街と隣の街の境あたりにある寺を攻めた。今はその帰りだ。
距離は一度来た道なのだからわかるがさほどだ。
だがアイスを持って、だとしたら。
「ありがとうございましたぁー」
ハキハキとした店員の声を背に受け。
文華は袋に入れられた二リットルアイスを手に店の外に出ようとして、一旦足を止める。
ガラス越しでも、店内に居てもわかる。外はジリジリと暑そうだ。
店内をうろつき、アイスについて調べてる間にまた気温が上がった気がする。
一歩外に出た途端、おそらくアイスが溶け始める。そんなことが容易に想像出来る。
何より、クーラーの効いたこの空間から出たくない。それでも、
「ええいっ!」
文華は意を決して、暑い暑い店外へ出た。
「うはあ」
目も眩むような暑さ。涼しい空間に居たから余計にそう感じる。
しかし暑さに面食らってもいられない。
ここからは1秒でも早くアイスをお届けし無くてはならないのだ。だが、
「重いィ」
カゴがない文華の自転車は、買い物袋はハンドルに引っ掛けるしか無い。
片ハンドルにニキロの重さというのはバランスが悪過ぎ、ハンドルが取られる。
オシャレ度を優先してカゴ無し自転車を買ったことを後悔した。
「リュックに、ああでも」
背負ったリュックに入れようかと思ったが、ケータイやカメラなど大事な機器が多すぎる。
「…いいや。行っちゃえ!」
悩んでいるうちにアイスが溶けてしまう。だったらもう進んでしまった方がいい。
しかし、そう簡単には行かなかった。
「よしっ。これなら、あっ!、っく」
「すいません。迂回お願いしまーす」
せっかくスピードに乗っていたのに、工事にぶつかりブレーキをかける。
ハンドルのバランスを取り直し、再度走り出す。
わんわんっ!
「うわわ、」
「あーっ、すいません。こら、ペルシアっ!」
躾の出来ていないバカ犬に吠えられる。
ハンドルのバランスを取り直し、再度走り出す。
極めつけは、
「あれー?文華ーっ!」
「げっ」
中学生なのに社会人と付き合っている、というのが唯一の自慢の同級生に出くわした。
彼氏の車の助手席から、馬鹿でかい大声で呼び止められた。
「何ー?なにしてんのー?」
「ちょっと、アイス買って」
だから早く帰らなきゃということをアピールするが、
「アイス?そんなでっかいの?なにそれ意味わかんなーい」
同級生はキャキャキャと、必要以上に楽しそうに笑う。
今が何の時間か、文華にはわかる。
年上の彼氏とのデートを自慢したい時間だ。
「ウチらはねえ、これから」
そこから、本当に無駄でしかない長無駄話が始まる。
変なサングラスをかけた社会人という彼氏は、そろそろ、とも言わない。
アイスがどうのというのも聞こえていたはずなのに。
自分たちは冷房の効いた車内で、片方は炎天下で自転車に跨っているのに。
「あー…、うんうん。そうだね」
話が終わらないならと文華は早希にメールを送る。
「そういえば聞いたあ?二組の高橋さあ」
ケータイをいじっていても、同級生は話をやめない。
炎天下の中、この道を通った自分が悪いのだ、自分の脚力を信じ、ドライアイスを貰ってこなかった自分が悪いのだと文華は思うことにした。そして、
「あー、アイス溶けちゃうねー。じゃあね、またねーっ!」
そんな今更なことを言われ、文華はやっと解放された。
「さきち、氷系アイス食べる?」
「たまにね。割と美味しい。あれ」
文華が訊いてみると、早希はもうその域に達していた。
甘いアイスを脱して氷系を攻めてるならば身体の負担が減るのでは、と思ったが違う。
それが食べたいというより、食べたい新商品アイスを食べ尽くしてしまったのだ。
だからアイスではなく、氷菓と呼ばれるようなものにまで手を出していた。
新商品買いはバラのコンビニならそれがしやすい。箱は量が多い分、新商品は少ない。
となれば、
「あのさ、」
文華が前から思っていたことを提案する。
ファミリーサイズを買ってみてはどうだろうと。
それならば食べきるまで、時間稼ぎが出来る。
一つのカップアイスを三回にも分けて食べる早希なら、食べ過ぎるということもない。だが、
「ええー?それはダメだよぉー」
ダメと言いつつなぜか嬉しそうだ。笑顔で身体をクネクネさせている。
「買ったことないの?」
「あるけど、ほら…」
「……ああ」
最後まで言われずとも理解出来た。
ファミリーサイズはその容量ゆえ、かなり場所をとる。
箱アイスでさえちょっと、と思っているのだ。
こちらはわざわざ箱を潰し、アイスだけを冷凍庫にしまうなど気を使ってるのに。
おまけに家庭用ではなく自分用。家族に白い目で見られた過去があるのだろう。
「あと当たりハズレあるしさ」
早希が言うには、安くて量が多いのは乳脂肪分の比率がおかしく、嘘くさい味らしい。
「詳しいね」
「大体のやつは食べたから」
「そうなの?」
一つのファミリーサイズアイスに手を出すと、大概バニラ、チョコ、ストロベリーなどの味が展開されているので、これを食べたら次コレを食べようと、登るべき山がたくさんそびえていて安心するらしい。
しかしそれもなんだかんだで食べ尽くしてしまった。
いよいよ食べるのが無いのでは、と文華が思っていると、
「あとさ、」
「うん」
「買って帰るのが大変」
言われてそうかと納得する。
二リットル、二キロあるアイスを買って帰るのだ。
車やバイクがあるならまだしも、中学生位の二人にとって移動手段は自転車くらいしかない。
「あと、意外とマニアックなスーパーとかで売ってるから」
マニアックなアイスは家から遠い、郊外のスーパーなどで見つけることが多いという。
バラでも箱でもファミリーサイズでも。
あるいはコンビニアイスとしてデビューしたアイスが思いの外売れず、業務スーパー、100円ショップ、マニアックスーパーのアイスコーナーで投げ売りされていることもあるという。
値段を抑えるためにはそのあたりは大変重宝する。
早希はそう言っていた。
家から遠い場合そんなお宝を見つけても、泣く泣くその場で食べれるバラを一個だけ買うのだと。
おうち用には買えないと。
そして、文華は見つけてしまった。
「これ…」
たまたま飲み物を買うために入ったスーパーで。そのアイスコーナーで。
なんとなく以前聞いたマニアックアイスの話を思い出し、覗いてみたら。
ちょっと見たことのないパッケージ、聞いたことのないメーカーのファミリーサイズアイス、2リットル。
しかもパッケージの説明を見ると、濃厚バニラとほろ苦キャラメルのマーブルアイスに、微細なカリカリキャラメルが入っている、というあまりアイスを食べない文華でも惹かれる商品だった。
おそらく輸入モノではないか、そしてあの子も見たことはないのでは。
アイス好きのあの子も知らないアイスを見つけたのではと、興奮を抑えつつスマホで調べてみる。
マイナーか有名か。すると、
「なんだ、結構有名なのか」
ヒットした情報にがっかりする。
思った通り海外産で、アイスマニアの間ではかなり有名なものらしい。
しかしマニアの間では有名なだけで、文華のような一般人は知らないようだ。
海外に行ったら必ず買って食べる、日本じゃ売ってないから、という声が多い。
じゃあなぜそんなアイスがここに、と思っているとニュース記事が合わせてヒットしていた。
どうやらこの有名アイスが地方のスーパー限定で輸入されているらしい。
それについて、
なんで売ってるのがこんなマイナースーパーなんだ…。普通に輸入食料品屋で売れよ。
実家の近くだから年老いた両親に買いだめしといてもらおう
全国展開してェえええ。おねがいいいいい。
売れたら全国進出するかな
人気ってことが日本に知れ渡ればあるいは
オクで流すやついそう
などアイスに掛ける執念が凄まじい。
これならばとすぐに早希に連絡してみる。
『なんか珍しいアイス見つけたんだけど買ってく?』
というメールを、撮ったパッケージ写真とともに。
いやあ、偶然見つけたんだけどさあという雰囲気とともに。
『それネットで見たことある!食べたい!買ってきて!』
すぐに届いたテンションの高い返信に嬉しくなる。
「へへっ。…あ」
しかし、文華は一番大事なことを忘れていた。
距離と、気温だ。
最近の文華はお寺にいる猫をカメラで撮ることにハマっていた。
夏でも涼やかな境内で気持ちよさそうに寝そべっている猫を撮る。
そんな、趣味ともいえない遊びにハマっていた。
ちょうど今日は自分が住む街と隣の街の境あたりにある寺を攻めた。今はその帰りだ。
距離は一度来た道なのだからわかるがさほどだ。
だがアイスを持って、だとしたら。
「ありがとうございましたぁー」
ハキハキとした店員の声を背に受け。
文華は袋に入れられた二リットルアイスを手に店の外に出ようとして、一旦足を止める。
ガラス越しでも、店内に居てもわかる。外はジリジリと暑そうだ。
店内をうろつき、アイスについて調べてる間にまた気温が上がった気がする。
一歩外に出た途端、おそらくアイスが溶け始める。そんなことが容易に想像出来る。
何より、クーラーの効いたこの空間から出たくない。それでも、
「ええいっ!」
文華は意を決して、暑い暑い店外へ出た。
「うはあ」
目も眩むような暑さ。涼しい空間に居たから余計にそう感じる。
しかし暑さに面食らってもいられない。
ここからは1秒でも早くアイスをお届けし無くてはならないのだ。だが、
「重いィ」
カゴがない文華の自転車は、買い物袋はハンドルに引っ掛けるしか無い。
片ハンドルにニキロの重さというのはバランスが悪過ぎ、ハンドルが取られる。
オシャレ度を優先してカゴ無し自転車を買ったことを後悔した。
「リュックに、ああでも」
背負ったリュックに入れようかと思ったが、ケータイやカメラなど大事な機器が多すぎる。
「…いいや。行っちゃえ!」
悩んでいるうちにアイスが溶けてしまう。だったらもう進んでしまった方がいい。
しかし、そう簡単には行かなかった。
「よしっ。これなら、あっ!、っく」
「すいません。迂回お願いしまーす」
せっかくスピードに乗っていたのに、工事にぶつかりブレーキをかける。
ハンドルのバランスを取り直し、再度走り出す。
わんわんっ!
「うわわ、」
「あーっ、すいません。こら、ペルシアっ!」
躾の出来ていないバカ犬に吠えられる。
ハンドルのバランスを取り直し、再度走り出す。
極めつけは、
「あれー?文華ーっ!」
「げっ」
中学生なのに社会人と付き合っている、というのが唯一の自慢の同級生に出くわした。
彼氏の車の助手席から、馬鹿でかい大声で呼び止められた。
「何ー?なにしてんのー?」
「ちょっと、アイス買って」
だから早く帰らなきゃということをアピールするが、
「アイス?そんなでっかいの?なにそれ意味わかんなーい」
同級生はキャキャキャと、必要以上に楽しそうに笑う。
今が何の時間か、文華にはわかる。
年上の彼氏とのデートを自慢したい時間だ。
「ウチらはねえ、これから」
そこから、本当に無駄でしかない長無駄話が始まる。
変なサングラスをかけた社会人という彼氏は、そろそろ、とも言わない。
アイスがどうのというのも聞こえていたはずなのに。
自分たちは冷房の効いた車内で、片方は炎天下で自転車に跨っているのに。
「あー…、うんうん。そうだね」
話が終わらないならと文華は早希にメールを送る。
「そういえば聞いたあ?二組の高橋さあ」
ケータイをいじっていても、同級生は話をやめない。
炎天下の中、この道を通った自分が悪いのだ、自分の脚力を信じ、ドライアイスを貰ってこなかった自分が悪いのだと文華は思うことにした。そして、
「あー、アイス溶けちゃうねー。じゃあね、またねーっ!」
そんな今更なことを言われ、文華はやっと解放された。
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