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24、背脂ラーメンを飲んだりするイチャイチャアドベンジャー

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 次の日、二人はまた待ち合わせてオサレビルに行った。
  昨日と同じ道をひた走り、打ち合わせ通りビルの下に入っていたコンビニへ。
  事情を話すと対応したおばさん店員はそういうことならと快く応じてくれた。
  もし断られた場合の時を考えて、二人は名女優ばりの即興演技でお願いじまずぅうう、私達姉妹にお情けをぉぉと懇願しようと思っていたのだが、優しい店員さん達になんだか拍子抜けする。
  二人が生きる時代は思った以上に人情に厚く、世知辛くないようだが、

 「……なんか買いましょうか、柿内お姉さま」
 「…そうね。帆波さん」

  せっかく用意してきた女優オーラをまとったまま、二人は昨日のことを思い出し、何も買わないのも、と飲み物を購入した。
  そしてマニアックスイーツを求め、店内へ。



 「その日食べたのがシナモn」
 「そのくだりいいから」

  何を食べたか思いだそうとするのを響季が遮り、

 「それで、まあ、なんやかんや食べて、喋って。……会話が無くなって」

  その時の空気を思い出したのか、柿内君が下を向く。
  まだ二人は完全には打ち解けきってはいない。
  即興コントならいざ知らず、差し向かいでの食事では途中で会話が途切れた。
  その流れでああそういえばと柿内君が話をしたらしい。

 「またパイセンがうちのクラスに来たって話して」
 「えっ」

  何でという顔を響季がする。

 「特に、話すこともなくて」
 「で、でもさ」

  よりによってその話題かと、空気の読めない親友を呪う。
  いやひょっとして、わざとなのかと疑う。
  どっち?わざと?ほんとに他に話すことなかった?お母さんって自分がライブの物販で買ったタオルとかピンポイントでトイレ用のタオルにするからムカつくよねとかそんな話題でもよかったのよ?
  そう親友の目を見ながら心の中で問うが、彼の真意はわからない。
  とりあえず、彼が今後ワクワクしながら買うちょっと高めのカップラーメンが拍子抜けな味であれと呪いをかけておく。

  そして、その日のことを思い出してみる。
  パイセンと何をして遊んでいたか。
  確かトランプをして、パイセンが自分の膝に座ったから手の内と丸の内が丸見えで。
  その後一緒にいた女の子がお菓子を持ってきていたがその味が微妙だったので、なぜかおしおきとしてパイセンの片パイを鷲掴みにしてやった。
  パイセンはぎあっ!みたいな悲鳴を上げて、響季はフハハハと悪魔の笑い声を上げて、一緒にいたクラスメイト達がそれを見て笑って。
  顔を真赤にしたパイセンが怒ったように響季を叩き、その隙に反対のパイを拳でうにゅっと触ってやってまたパイセンが悲鳴を上げて。
  そんなことを思い出していた響季の視線が泳ぐが、いや、あんなのは先輩後輩の戯れの範囲内だと言い聞かせる。

 「なんて、話したの?パイセンがうちのクラス来て、それで」
 「響季達とトランプして遊んでたって」

  やはり柿内君は見ていた。存在を全く感じさせなかった。
  楽し過ぎて周囲が見えてなかったのだ。だが、

 「ああ、あとパイセンの片パイ揉みまくってたって」

  続いて言われたことに響季が自分の下唇をちゅいーっと吸う。
  その情報はさすがにヤバない?と。いらなくない?と。
  しかし事実だ。

 「それ、で?」

  それからどうしたのかと恐る恐る訊くが、

 「で、まあシナモン系のやつ食って、模型屋行って、フィギュアとか見て」
 「また?」

  思いの外早く話を切り上げてくれたようだ。
  そして昨日と同じデートコースに響季が呆れる。
  が、いくら見ても毎日見ても零児は飽きないんだろうなあと思った。

 「充電させてもらったコンビニでおにぎり買って」
 「また食うんかいっ!」
 「100円セールで安かったからさ。で、次の日はココナッツ系の食べにいって」
 「ぉぅ…」

  また不意打ちでメニューを言うんじゃないかと警戒するが、

 「食べながら、れーじ君から今日響季学校で何してたって訊かれて」

  普段の生活ぶりを気にされることは嬉しかった。しかし、

 「昼休みにまた遊びにきたパイセンと遊んでたって」

  案の定告げられたのは少々都合の悪いことだった。
  何で言うかなと親友を睨むが、またしても事実だった。
  そして、その日は何をして遊んだか思い出す。
  確かみんなで将棋崩しをして。
  段々白熱してきて床に腹這いになる形で挑戦し、邪魔するようにパイセンの上に乗っかり、親子亀スタイルをとったりしていた。
  更に上から脇腹をさわさわしてパイセンがびくんびくん跳ねまわったり。、

 「確か、将棋崩しをしてて、 響季が取った駒を指で弾いてパイセンに当てようとしてびびらせたって」

  実際に自分が見た風景と報告したことを思い出しながら柿内君が言う。
  やはり見られていた。
  しかしパイセンにちょっかいを出すのは楽しいから仕方ない。
  びっくりした時のリアクションがいちいち面白いのだ。
  零児がこれらをどう受け取っただろうと心配していると、

 「で、今度は俺が行きたかった自転車屋に行って、前の日とは別の充電させてもらってたコンビニでパン買って」
 「また食うの?」

  二人の健啖ぶりに響季が呆れる。

 「次の日は、ラムレーズン系を食べにいって」

  だんだんと日付が現実に近づいてくるが、同時に胸焼けがしてきた。
  食べたくはないが連日スイーツ祭り、プラスしてコンビニ買い食いだ。

 「で、まあ、響季は今日何してたってれーじ君に訊かれて」

  どんだけ普段の生活気になるねんとツッコみつつ、その日は何をしてたか思い出す。
  確か湯けむりカルタをして。
  教室後方の床に取り札を置き、後半はテンションがあがり過ぎてパイセンと響季はまた床に腹這いになるような形になった。
  邪魔するようにお手つき上等でパイセンの手をぶっ叩いたり。腹ばいになったパイセンの潰れ胸に手を差し入れて怒られたり。
  意外と早く決着が付き、その後は特にすることもないので響季はジャージとパイセンの持参菓子を使って二人羽織をしてみた。
  お菓子を食う、と見せかけてパイセンの乳首をつまんでみせたりと、響季のいじわるプレイにクラスメイトはお腹を抱えて笑っていたが。
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