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第四回公演
14、ここが、あの女のシアターね
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例によって劇場跡地での取材、撮影、インタビューその他もろもろを終えた後。
二人はいまだ現存するストリップ劇場 柳子(りゅうこ)劇場にやってきた。
ここに、二人が探し求めていた友人が踊り子として、紅たんぽぽとしてステージに立っているという。
最初、二人は友人を連れ戻す気でいた。
しかし、踊り子たる彼女はネットで見る限り必要とされていた。
今は元気がどうか、それだけわかればよかった。
劇場前に掲げられた今週の踊り子を紹介するポスターでも、紅たんぽぽだけは黒いシルエットになっていた。
やはりどうあっても顔出しはしないらしい。
見たいのなら是非劇場で、生でということか。
「いざ」
ふっ、と遥心が一息つくのを合図に、二人は劇場に乗り込んだ。
「はぁーい、お次ー。おっ、おはようございまあーす」
二人が入った時は、ちょうど撮影ショーの途中だった。
明るい場内では踊り子さんがにこやかに撮影客を消化していていく。
アニパロショーという演目があるせいか、場内はやはり女性客が多かった。文系の、成人して尚図書委員風ガールというか少しモサッとした感じの子達が。
興味本位でやってきたというより、明確なこの踊り子さんが見たくてというオーラを放っていた。
「どんな踊り子さんなんだろ」
それを見ながら、詩帆が呟く。
二人は紅たんぽぽについて予習をしてこなかった。
出番がトリなので人気ということはわかる。
SNSをチェックすればある程度どんな踊り子さんか、好きな曲のジャンル、ショーの傾向などがわかるのに。
「どんなだろうね」
遥心が答える。わからないね、と。
二人は敢えて予習をしなかったのだ。意図的に。
見てのお楽しみにしたかった。
探ればすぐ答えが出てしまうのはつまらない。
うっかりネタバレしてしまうのはつまらない。
劇場で、生のモノを自分で実際に見てびっくりしたかった。
程なくして撮影ショーが終わり、オープンショーとなるが、
「あっ、なんだっけこれ」
暗くなった場内で、詩帆が天井を見上げる。
流れてきた曲は少し前によく耳にしたケータイCMソングだったが、曲名が出てこない。
CMソングらしい覚えやすいサビになると、踊り子さんが本舞台の方を向いたまま身体を倒し、リズミカルに女性器を観客に向かってふりふりする。
それを二人は薄目でやり過ごし、次の踊り子さんの出番となった。
流れてきた曲に女性客の背筋が伸びる。これはと。
それは遥心達も同じだった。
少し気だるげな、でもしっかり主張するドラム。
女子高生達の日常がアニメなのに、ボクという一人称から始まるガールズロック。
流れてきたのは アニメ JK フライアウェイ↑ウェイ↑ エンディング曲 チェッケ・ザ・ジャパネーズ だった。
スクールカーディガンにプリーツスカート、ローファーという女子高生姿で踊り子さんが登場する。
若く、セミロングの髪が可愛らしいのであまりお店の人感はない。
手には星形タンバリン。それを体に当てて、曲に合わせて音を出す。
始まってすぐはどうだろうと遥心は思ったが、きびきびしたダンスとタンバリン遣いが上手く、なかなかいい。
主張の強いドラムが少年のような少し硬質な歌声に華を添え、更に踊り子さんが合間合間でタンバリンのシャラララという音を効果的に使う。
女性客は当然のように皆知ってるので、リズミカルに手拍子する。
それに対し、ようし対決だとばかりにタンバリンマンが商売道具を打ち鳴らすが、遥心はうるさくて仕方なかった。
学生記者 H隊員による取材メモ
その後もショーでは女子高生系日常アニメの曲が続いた。
衣装は最初ただのJKコスプレだと思ったが、きちんと踊りやすい衣装としてカスタマイズされていた(当然か)
最初は下ろしていた髪を、衣装替え、撮影、オープンのたびにポニーテールにしたりサイドテールにしたりと変化をつけていたのは高評価。
ああいうちょっとした変化が観客を楽しませるということを演者側はもっと理解してほしい。
学生記者 S隊員による取材メモ
次の踊り子さんは刀を使った演舞でした。(剣劇?)
たぶんアジア系のそういった映画のBGMを使ってた様子ですが、普段映画見ないのでわかりませんでした。
見応えがある、にも拘わらず段々とお客さんが飽きてくるのがわかりました。
理由はわからない。独りよがり?場にそぐわない力量?
選曲は何の映画かわかりそうでわかりません。
わからないだらけですいません。
でもリボンマンがいたので人気な踊り子さんのはずです。
たまたまハズレ演目だったのかな?
いや、見応えはあったんですが。パフォーマンスに多少息切れ感があるというか。
息切れというのは踊り子さん自身の体力ではなく、興味を持続させるための手数が少ないというか。
あ、引きつけておく、アレだ。
引力?磁場?ちがうなうまくいえない。
なんだろう、私が子供なのかな。
わかんねーなこりゃ。
二人はいまだ現存するストリップ劇場 柳子(りゅうこ)劇場にやってきた。
ここに、二人が探し求めていた友人が踊り子として、紅たんぽぽとしてステージに立っているという。
最初、二人は友人を連れ戻す気でいた。
しかし、踊り子たる彼女はネットで見る限り必要とされていた。
今は元気がどうか、それだけわかればよかった。
劇場前に掲げられた今週の踊り子を紹介するポスターでも、紅たんぽぽだけは黒いシルエットになっていた。
やはりどうあっても顔出しはしないらしい。
見たいのなら是非劇場で、生でということか。
「いざ」
ふっ、と遥心が一息つくのを合図に、二人は劇場に乗り込んだ。
「はぁーい、お次ー。おっ、おはようございまあーす」
二人が入った時は、ちょうど撮影ショーの途中だった。
明るい場内では踊り子さんがにこやかに撮影客を消化していていく。
アニパロショーという演目があるせいか、場内はやはり女性客が多かった。文系の、成人して尚図書委員風ガールというか少しモサッとした感じの子達が。
興味本位でやってきたというより、明確なこの踊り子さんが見たくてというオーラを放っていた。
「どんな踊り子さんなんだろ」
それを見ながら、詩帆が呟く。
二人は紅たんぽぽについて予習をしてこなかった。
出番がトリなので人気ということはわかる。
SNSをチェックすればある程度どんな踊り子さんか、好きな曲のジャンル、ショーの傾向などがわかるのに。
「どんなだろうね」
遥心が答える。わからないね、と。
二人は敢えて予習をしなかったのだ。意図的に。
見てのお楽しみにしたかった。
探ればすぐ答えが出てしまうのはつまらない。
うっかりネタバレしてしまうのはつまらない。
劇場で、生のモノを自分で実際に見てびっくりしたかった。
程なくして撮影ショーが終わり、オープンショーとなるが、
「あっ、なんだっけこれ」
暗くなった場内で、詩帆が天井を見上げる。
流れてきた曲は少し前によく耳にしたケータイCMソングだったが、曲名が出てこない。
CMソングらしい覚えやすいサビになると、踊り子さんが本舞台の方を向いたまま身体を倒し、リズミカルに女性器を観客に向かってふりふりする。
それを二人は薄目でやり過ごし、次の踊り子さんの出番となった。
流れてきた曲に女性客の背筋が伸びる。これはと。
それは遥心達も同じだった。
少し気だるげな、でもしっかり主張するドラム。
女子高生達の日常がアニメなのに、ボクという一人称から始まるガールズロック。
流れてきたのは アニメ JK フライアウェイ↑ウェイ↑ エンディング曲 チェッケ・ザ・ジャパネーズ だった。
スクールカーディガンにプリーツスカート、ローファーという女子高生姿で踊り子さんが登場する。
若く、セミロングの髪が可愛らしいのであまりお店の人感はない。
手には星形タンバリン。それを体に当てて、曲に合わせて音を出す。
始まってすぐはどうだろうと遥心は思ったが、きびきびしたダンスとタンバリン遣いが上手く、なかなかいい。
主張の強いドラムが少年のような少し硬質な歌声に華を添え、更に踊り子さんが合間合間でタンバリンのシャラララという音を効果的に使う。
女性客は当然のように皆知ってるので、リズミカルに手拍子する。
それに対し、ようし対決だとばかりにタンバリンマンが商売道具を打ち鳴らすが、遥心はうるさくて仕方なかった。
学生記者 H隊員による取材メモ
その後もショーでは女子高生系日常アニメの曲が続いた。
衣装は最初ただのJKコスプレだと思ったが、きちんと踊りやすい衣装としてカスタマイズされていた(当然か)
最初は下ろしていた髪を、衣装替え、撮影、オープンのたびにポニーテールにしたりサイドテールにしたりと変化をつけていたのは高評価。
ああいうちょっとした変化が観客を楽しませるということを演者側はもっと理解してほしい。
学生記者 S隊員による取材メモ
次の踊り子さんは刀を使った演舞でした。(剣劇?)
たぶんアジア系のそういった映画のBGMを使ってた様子ですが、普段映画見ないのでわかりませんでした。
見応えがある、にも拘わらず段々とお客さんが飽きてくるのがわかりました。
理由はわからない。独りよがり?場にそぐわない力量?
選曲は何の映画かわかりそうでわかりません。
わからないだらけですいません。
でもリボンマンがいたので人気な踊り子さんのはずです。
たまたまハズレ演目だったのかな?
いや、見応えはあったんですが。パフォーマンスに多少息切れ感があるというか。
息切れというのは踊り子さん自身の体力ではなく、興味を持続させるための手数が少ないというか。
あ、引きつけておく、アレだ。
引力?磁場?ちがうなうまくいえない。
なんだろう、私が子供なのかな。
わかんねーなこりゃ。
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