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第四回公演
12、デカ長!ホシが見つかりそうです!
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「はるちゃんスタンプラリーあるよ」
「やらんがな」
単線の、地方駅にて。
劇場跡地の取材を終えた二人は、近くにあるまだご存命中の劇場へと向かうため電車を待っていた。
だが当然本数は少なく、次の電車までかなり時間がある。
暇を持て余した詩帆がホーム内をうろうろしてると、スタンプラリー用の台を見つけた。
置いてあった文鎮をどけて台紙を一枚取り、企画意図を読み込んでいく。
「でも集めると、おめざちゃんステッカーが貰えるみたい」
「誰だよ」
ここら辺は白あん和菓子が名産らしく、おめざ文化を推進していた。
それをテーマにしたご当地キャラのステッカーが貰えるらしいが、初めて来た者達には誰だよ、知らんがなだ。
「でも結構台紙減ってる」
「娯楽がないんじゃない?」
遥心に言われて、詩帆はふと考えてみる。
娯楽のない町にやってくる踊り子達は刺激がなく、退屈しないのだろうか。
いや、仕事は昼から深夜までで、午前中はずっと劇場で寝ているとかならば関係ないのかもしれないが、
「コンビニとかでもスタンプラリーあるよね」
「そうなの?」
遥心がそういえば、という風に言うが、詩帆はピンとこない。
「男の子アニメとか女の子アニメとコラボってるようなの。あとアイドルとか戦隊モノ。レジ前にスタンプ台があったりしてさ、場所まちまちだけど、大体レジカウンターの近くだから大きいお友達はやりづらいって」
「へえ」
そう言われてみれば見かけたことがある気がする。なんだろうこれ邪魔だなあというものが。
しかし戦隊モノと言われ、そういえば好きだった友人がいたなと思い出す。
「それさ、」
「うん」
「どこでもいいの?お店。どのスタンプ押しても」
「っていうか店によってスタンプが違うから、それをかぶらないように回るんじゃなかったかな。確か」
「全国バラバラ?」
「たぶん…」
どちらも実際にやってないので情報があやふやだ。
駅はその地域でやらなくてはならないが、コンビニのスタンプラリーなら、コンビニなら全国チェーン展開していれば全国どこにでもある。
そして踊り子は全国を飛び回る。
その合間になら、暇つぶしや買い物の途中で出来そうだ。
詩帆の頭の中で何かが繋がりそうになる。
「それ集めると何が貰える?」
「えっ?えっと、ステッカーとかじゃないの?」
いつになく真剣に訊いてくる詩帆に気圧されながら、遥心が答える。
このスタンプラリーがそうであったように、その程度ではと。
詩帆の視線がホームを彷徨う。まるでそこに答えがあるように。
もし自分だったら。いや、彼女だったら。あるいは、踊り子に貢物をする客だったら。
しばらくそう考え、
「ねえ、はるちゃん」
「マモナク、イチバンセンニ」
やっと電車が来たので二人は乗り込んだ。
電車に乗り込むと、詩帆は自分の推理を元に情報収集を始めた。
引っかかりそうなワードでネット検索する。
そういったことは今まで積極的にやらなかった。
いなくなった友人から足取りを追うなと言われてるようで。
だがやらずにはいられなかった。
ストリップ 踊り子 まで打ち込み、一瞬考え、戦隊 特撮 スタンプラリー コンビニ というキーワードと合わせ検索してみる。
果たして結果は、
「あ…」
出てきた。
遥心が言っていたコンビニのスタンプラリーだ。
スタンプでいっぱいになった台紙と、歴代特撮ヒーローがずらりと並んだシールを並べて撮り、誰かがSNSにアップしていた。
最新映画の公開を記念しての、コンビニとのコラボ企画らしい。
が、踊り子ではない。
プロフィールを見るとストリップ観劇を趣味としている男性だった。
このシールを戦隊モノ好きのオキニへの差し入れとする、と書いてあった。
詩帆の指が震える。
彼女にはある予感があった。
友人が付き人ではなく、踊り子としてデビューしたのではないかという。
見てくれは悪くなく度胸もある、変身願望に似た趣味も。
性的なものにも抵抗はない。
踊り子はダンス経験がなくとも出来るという。
だが友人のそんな姿を見たくないという思いで検索しなかったのだ。
もし舞台で肌を晒しているという事実に辿り着いたらと思うと、怖くて出来なかった。
男性のSNSからオキニの踊り子さんとやらを探す。
こんなモノを欲しがる踊り子とは誰かと。
しかし、
「ん?」
その踊り子さんは、床に特撮ヒーローのシールをずらりと並べた画像を上げていた。
いわく、男性と同じような、自分が特撮好きと知っている客が差し入れしてくれたらしい。
要はオレ考案の気の利いた差し入れがかぶってしまったようだ。
保存用観賞用でも余るから、せっかくだからお客さんに撮ってもらった写真に貼ろうか等と書いてあるが、『それともポンちゃんにあげよかな。』という一文に詩帆は引っかかった。
ポンちゃん ストリッパー 戦隊 などの組み合わせで検索すると、別の踊り子さんのSNSで、
『ポンさん、コンビニまで戦隊もんスタンプラリー集める旅に出るらしい。買うものあるか訊かれたのでヨーグルトを頼んだ。』
という発言を見つける。
更に情報を掘り進めていくと、
『ポポン氏、スタンプラリーコンプ。暇かよっ!』
と、別の踊り子さんからツッこまれていた。
ポンちゃん、ポンさん、ポポン氏とやらについて劇場が同じ週になった踊り子さんが呟いてるらしい。
戦隊モノ好きのポンなんとかいう人が仮に同一人物だとしたら。
一人の容疑者が、捜査線上に浮かんだ。
「…はるちゃん」
自分の推理を聞かせるべく、詩帆が隣りに座る相方を呼ぶが、
「寝てるっ!」
週末ごとの取材疲れでか、遥心はぐっすり眠り込んでいた。
「んもーっ」
せっかくそれらしき人物が出てきたのにと、詩帆が不満そうな声を上げるが、
「……かわいい」
無防備な寝顔にぽつりと呟く。
閉じた一重瞼が子供みたいで可愛い。
疲れていてもお行儀よく閉じた口が可愛い。
それを見て、んんっ、とわざとらしく咳払いし、寝てるのー?なんて言いながら顔を覗き込むように近づくと、
「ちぅぅーっ」
「んぅぅっ」
詩帆は唇の端っこを吸ってやった。
音と感触に、遥心が眠ったままうざったそうな声を上げるが知ったことではない。
「やらんがな」
単線の、地方駅にて。
劇場跡地の取材を終えた二人は、近くにあるまだご存命中の劇場へと向かうため電車を待っていた。
だが当然本数は少なく、次の電車までかなり時間がある。
暇を持て余した詩帆がホーム内をうろうろしてると、スタンプラリー用の台を見つけた。
置いてあった文鎮をどけて台紙を一枚取り、企画意図を読み込んでいく。
「でも集めると、おめざちゃんステッカーが貰えるみたい」
「誰だよ」
ここら辺は白あん和菓子が名産らしく、おめざ文化を推進していた。
それをテーマにしたご当地キャラのステッカーが貰えるらしいが、初めて来た者達には誰だよ、知らんがなだ。
「でも結構台紙減ってる」
「娯楽がないんじゃない?」
遥心に言われて、詩帆はふと考えてみる。
娯楽のない町にやってくる踊り子達は刺激がなく、退屈しないのだろうか。
いや、仕事は昼から深夜までで、午前中はずっと劇場で寝ているとかならば関係ないのかもしれないが、
「コンビニとかでもスタンプラリーあるよね」
「そうなの?」
遥心がそういえば、という風に言うが、詩帆はピンとこない。
「男の子アニメとか女の子アニメとコラボってるようなの。あとアイドルとか戦隊モノ。レジ前にスタンプ台があったりしてさ、場所まちまちだけど、大体レジカウンターの近くだから大きいお友達はやりづらいって」
「へえ」
そう言われてみれば見かけたことがある気がする。なんだろうこれ邪魔だなあというものが。
しかし戦隊モノと言われ、そういえば好きだった友人がいたなと思い出す。
「それさ、」
「うん」
「どこでもいいの?お店。どのスタンプ押しても」
「っていうか店によってスタンプが違うから、それをかぶらないように回るんじゃなかったかな。確か」
「全国バラバラ?」
「たぶん…」
どちらも実際にやってないので情報があやふやだ。
駅はその地域でやらなくてはならないが、コンビニのスタンプラリーなら、コンビニなら全国チェーン展開していれば全国どこにでもある。
そして踊り子は全国を飛び回る。
その合間になら、暇つぶしや買い物の途中で出来そうだ。
詩帆の頭の中で何かが繋がりそうになる。
「それ集めると何が貰える?」
「えっ?えっと、ステッカーとかじゃないの?」
いつになく真剣に訊いてくる詩帆に気圧されながら、遥心が答える。
このスタンプラリーがそうであったように、その程度ではと。
詩帆の視線がホームを彷徨う。まるでそこに答えがあるように。
もし自分だったら。いや、彼女だったら。あるいは、踊り子に貢物をする客だったら。
しばらくそう考え、
「ねえ、はるちゃん」
「マモナク、イチバンセンニ」
やっと電車が来たので二人は乗り込んだ。
電車に乗り込むと、詩帆は自分の推理を元に情報収集を始めた。
引っかかりそうなワードでネット検索する。
そういったことは今まで積極的にやらなかった。
いなくなった友人から足取りを追うなと言われてるようで。
だがやらずにはいられなかった。
ストリップ 踊り子 まで打ち込み、一瞬考え、戦隊 特撮 スタンプラリー コンビニ というキーワードと合わせ検索してみる。
果たして結果は、
「あ…」
出てきた。
遥心が言っていたコンビニのスタンプラリーだ。
スタンプでいっぱいになった台紙と、歴代特撮ヒーローがずらりと並んだシールを並べて撮り、誰かがSNSにアップしていた。
最新映画の公開を記念しての、コンビニとのコラボ企画らしい。
が、踊り子ではない。
プロフィールを見るとストリップ観劇を趣味としている男性だった。
このシールを戦隊モノ好きのオキニへの差し入れとする、と書いてあった。
詩帆の指が震える。
彼女にはある予感があった。
友人が付き人ではなく、踊り子としてデビューしたのではないかという。
見てくれは悪くなく度胸もある、変身願望に似た趣味も。
性的なものにも抵抗はない。
踊り子はダンス経験がなくとも出来るという。
だが友人のそんな姿を見たくないという思いで検索しなかったのだ。
もし舞台で肌を晒しているという事実に辿り着いたらと思うと、怖くて出来なかった。
男性のSNSからオキニの踊り子さんとやらを探す。
こんなモノを欲しがる踊り子とは誰かと。
しかし、
「ん?」
その踊り子さんは、床に特撮ヒーローのシールをずらりと並べた画像を上げていた。
いわく、男性と同じような、自分が特撮好きと知っている客が差し入れしてくれたらしい。
要はオレ考案の気の利いた差し入れがかぶってしまったようだ。
保存用観賞用でも余るから、せっかくだからお客さんに撮ってもらった写真に貼ろうか等と書いてあるが、『それともポンちゃんにあげよかな。』という一文に詩帆は引っかかった。
ポンちゃん ストリッパー 戦隊 などの組み合わせで検索すると、別の踊り子さんのSNSで、
『ポンさん、コンビニまで戦隊もんスタンプラリー集める旅に出るらしい。買うものあるか訊かれたのでヨーグルトを頼んだ。』
という発言を見つける。
更に情報を掘り進めていくと、
『ポポン氏、スタンプラリーコンプ。暇かよっ!』
と、別の踊り子さんからツッこまれていた。
ポンちゃん、ポンさん、ポポン氏とやらについて劇場が同じ週になった踊り子さんが呟いてるらしい。
戦隊モノ好きのポンなんとかいう人が仮に同一人物だとしたら。
一人の容疑者が、捜査線上に浮かんだ。
「…はるちゃん」
自分の推理を聞かせるべく、詩帆が隣りに座る相方を呼ぶが、
「寝てるっ!」
週末ごとの取材疲れでか、遥心はぐっすり眠り込んでいた。
「んもーっ」
せっかくそれらしき人物が出てきたのにと、詩帆が不満そうな声を上げるが、
「……かわいい」
無防備な寝顔にぽつりと呟く。
閉じた一重瞼が子供みたいで可愛い。
疲れていてもお行儀よく閉じた口が可愛い。
それを見て、んんっ、とわざとらしく咳払いし、寝てるのー?なんて言いながら顔を覗き込むように近づくと、
「ちぅぅーっ」
「んぅぅっ」
詩帆は唇の端っこを吸ってやった。
音と感触に、遥心が眠ったままうざったそうな声を上げるが知ったことではない。
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