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第二景
9、時間がないのでハイライトでお見せします。
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それなりに見応えのあるチームショーが終わると、また踊り子さん一人によるショーが始まったが、
「(訳)入れてる?」
「(訳)どうでしょう」
シャオちゃんの母国語で二人が小声で囁き合う。
踊り子さんの涙袋が異常に膨らんでいた。メイクや生まれつきにしては不自然だった。
だが遠目ではわからない。
多少のメンテや加工はあるあるなのであろうが、どうも気になってショーに集中出来ない。先程のチームショーのダメージもあるだろうが。
メイド服風の衣装でのショーだったが、しばらくすると曲が変わり、
「あ、知ってる」
詩帆が小声で呟く。イカニモなアニソン風イントロだったが曲名が思い出せない。
が、Aメロで突如思い出した。
だがそのきっかけはあまりにもアレだった。
作品自体は見ていないのだが、エンディングアニメの出来があまりにも作画がおかしいと言われ、話題になったのだ。
「(訳)えっ、こんな曲だったっけ」
「(訳)そうですよ」
小声で訊く詩帆にシャオちゃんが少し迷惑そうに答える。
なにせ初めてまともに聴いたのだ。
ヒロイン声優三人による歌声。編曲も細やかな小技が効いている。
それでも曲名は思い出せない。ついでに作品名も。
何しろ話題だったからと、ネットで見てみただけなのだ。
本編は一度も、一話も見ていない。作品情報はあのキテレツな作画しかない。
あの目の焦点が合ってないような笑顔と、グキグキしたダンス。
二番に入ると一番で言いたいことをほとんど言ってしまったのか、当たり障りのない歌詞が展開される。
途中でヒロインたちが主人公を取り合うような掛け合いも入るが、
「(訳)ほんとにこんな曲だった?」
「(訳)そうですってば」
シャオちゃんが不思議そうな声で答える。詩帆は本当に何も知らなかった。
ショーを見ながら、そういえば好きでもないアニメのエンディング曲をフルサイズで聴かなくなってどれくらいだろうと考えていた。
その後もショーは続く。
トリ前の踊り子さんはなんだか若奥様みたいな踊り子さんだった。
ステージは平々凡々なものだったが、あどけないきゅるりとした目と赤い唇、全身から滲み出る楚々とした雰囲気がよかった。
母性を醸すにはまだ満たない。爽やかな香りがするのに絶対的な誰かのもの感がある。
本当なら小高い丘にある一軒家で。エプロン姿でお鍋をコトコトさせながら旦那様の帰りを待ってるような。まだ子供はおらず、今は新婚を満喫してるような。
そんな踊り子さんに見えた。
団地妻がエロいの代名詞であるなら、若奥様の魅力とはなんだろう。
結婚、妻、奥様とは。家を守り、待つ者とは。
場末のストリップ小屋で詩帆はそんなことを考えていた。
トリの踊り子さんは見た目は綺麗かつカリスマ性みたいなものもあるが、ショー自体はあまり、という内容だった。
トリ前の踊り子さんより年は若いだろうが、トリを務めるという責任感よりも、私がトリよ、トリなのよという大味感が出ていた。
フィナーレはなぜか全員裸エプロンという格好だったが、
「さて、本日は皆様おなじみ、経産婦ショーとなっております。是非神秘の門をご堪能されたい方は、どうぞ前の方のお席にお座りください」
すぐに始まった次回公演のアナウンスで、二人はk-3Pが何の略かようやくわかった。
何の事はない経産婦、出産経験のある踊り子さんだけを集めたショーらしい。
それを踏まえて見ると、みんなお母さんなのにお綺麗な人ばかりだった。
いつもは見ない生命の出口や、腹部に帝王を引きずり出した聖痕がないかもっと見ればよかったと少し後悔する。
そして、たくましいお母ちゃんだが、裸を見せて得たお金で子供を育てるのかと考える。
それが子供に知れたら、あるいはお友達に知れたら。
ぶるぶるっと首を振って詩帆はそんな考えを追い払う。
どう考えたところで人様の人生だ。自分には関係がないと。
「しフォさん?」
様子のおかしい友人をシャオちゃんが心配そうに見るが、
「ううん。なんでもないよ」
そう言うのが精一杯だった。
「(訳)入れてる?」
「(訳)どうでしょう」
シャオちゃんの母国語で二人が小声で囁き合う。
踊り子さんの涙袋が異常に膨らんでいた。メイクや生まれつきにしては不自然だった。
だが遠目ではわからない。
多少のメンテや加工はあるあるなのであろうが、どうも気になってショーに集中出来ない。先程のチームショーのダメージもあるだろうが。
メイド服風の衣装でのショーだったが、しばらくすると曲が変わり、
「あ、知ってる」
詩帆が小声で呟く。イカニモなアニソン風イントロだったが曲名が思い出せない。
が、Aメロで突如思い出した。
だがそのきっかけはあまりにもアレだった。
作品自体は見ていないのだが、エンディングアニメの出来があまりにも作画がおかしいと言われ、話題になったのだ。
「(訳)えっ、こんな曲だったっけ」
「(訳)そうですよ」
小声で訊く詩帆にシャオちゃんが少し迷惑そうに答える。
なにせ初めてまともに聴いたのだ。
ヒロイン声優三人による歌声。編曲も細やかな小技が効いている。
それでも曲名は思い出せない。ついでに作品名も。
何しろ話題だったからと、ネットで見てみただけなのだ。
本編は一度も、一話も見ていない。作品情報はあのキテレツな作画しかない。
あの目の焦点が合ってないような笑顔と、グキグキしたダンス。
二番に入ると一番で言いたいことをほとんど言ってしまったのか、当たり障りのない歌詞が展開される。
途中でヒロインたちが主人公を取り合うような掛け合いも入るが、
「(訳)ほんとにこんな曲だった?」
「(訳)そうですってば」
シャオちゃんが不思議そうな声で答える。詩帆は本当に何も知らなかった。
ショーを見ながら、そういえば好きでもないアニメのエンディング曲をフルサイズで聴かなくなってどれくらいだろうと考えていた。
その後もショーは続く。
トリ前の踊り子さんはなんだか若奥様みたいな踊り子さんだった。
ステージは平々凡々なものだったが、あどけないきゅるりとした目と赤い唇、全身から滲み出る楚々とした雰囲気がよかった。
母性を醸すにはまだ満たない。爽やかな香りがするのに絶対的な誰かのもの感がある。
本当なら小高い丘にある一軒家で。エプロン姿でお鍋をコトコトさせながら旦那様の帰りを待ってるような。まだ子供はおらず、今は新婚を満喫してるような。
そんな踊り子さんに見えた。
団地妻がエロいの代名詞であるなら、若奥様の魅力とはなんだろう。
結婚、妻、奥様とは。家を守り、待つ者とは。
場末のストリップ小屋で詩帆はそんなことを考えていた。
トリの踊り子さんは見た目は綺麗かつカリスマ性みたいなものもあるが、ショー自体はあまり、という内容だった。
トリ前の踊り子さんより年は若いだろうが、トリを務めるという責任感よりも、私がトリよ、トリなのよという大味感が出ていた。
フィナーレはなぜか全員裸エプロンという格好だったが、
「さて、本日は皆様おなじみ、経産婦ショーとなっております。是非神秘の門をご堪能されたい方は、どうぞ前の方のお席にお座りください」
すぐに始まった次回公演のアナウンスで、二人はk-3Pが何の略かようやくわかった。
何の事はない経産婦、出産経験のある踊り子さんだけを集めたショーらしい。
それを踏まえて見ると、みんなお母さんなのにお綺麗な人ばかりだった。
いつもは見ない生命の出口や、腹部に帝王を引きずり出した聖痕がないかもっと見ればよかったと少し後悔する。
そして、たくましいお母ちゃんだが、裸を見せて得たお金で子供を育てるのかと考える。
それが子供に知れたら、あるいはお友達に知れたら。
ぶるぶるっと首を振って詩帆はそんな考えを追い払う。
どう考えたところで人様の人生だ。自分には関係がないと。
「しフォさん?」
様子のおかしい友人をシャオちゃんが心配そうに見るが、
「ううん。なんでもないよ」
そう言うのが精一杯だった。
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