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36 幽霊ちゃんは読書がすき

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うちには有象無象の本がいっぱいある。
俺が古本屋などで買ってきた本だ。
基本的には大体目を通しているが、読んでいない本も時々本棚や箱の中にしまってあったりする。

そんな本たちを最近あいつが読み始めたらしい。
最初のころは文字を読むのすら怪しかったが、最近はかなり頭がよくなったように思う。
そんなあいつが今呼んでいるのは「地方自治法」というタイトルだ。新書版だからそんな難しいことを書いているわけではないだろうが、なんというか、なんでそれを選んだのだろう、とちょっと思うものだった。

ベランダに出ているデッキチェアに座ってゆっくりと本を読むその姿は優雅でどこかのお嬢様のようである。
しかしそのタイトルは「地方自治法」である。
意味が分からない。
その意味の分からなさっぷりがちょっと笑えて来る。



しばらくあいつの様子を見ていると、いつもの黒猫がベランダにあがってきた。
そのままあいつの足にすりついた後、膝の上に飛び乗った。
最近色がずいぶん濃くなってきたせいか、猫ぐらいだったら乗れるらしい。
そのままあいつは猫にかまうこともなく、また猫の方も特に気にせずに膝の上で眠り始めた。
このご時世だとちょっと暑そうである。
いや、案外幽霊だから涼しいのだろうか。
絵にはなるな、と思って写真を撮ってみたのだが、残念ながらあいつは映らず、猫と本が宙に浮いている心霊画像になってしまった。
残念である。



最近はあいつもちゃんと飯を食うようになった。
結構よく食べる。
そのせいで問題はこいつの昼飯である。
まあ料理は好きだからこいつの分まで作るのは構わないのだが、平日の昼間は仕事でいないのが基本だ。
その時間帯、こいつが腹を空かせているのはかわいそうだし、かといって作り置きは結構面倒だ。
まだベランダと玄関程度が限界のようなので買い物に行くのも難しい。
ひとまず適当に冷蔵庫をあさって食べるように言っているが、大したものはいってないしなぁ……

『お兄さん、ボクも今度料理覚えたい』
「ん、どうしたんだ?」
『昼ご飯ぐらい自分で作ろうかなって』
「なるほどそうか」

こちらの考えを読んだのか、それとも気まぐれなのかわからないがそんなことを言い始めた。

「まあひとまずカップ麺からかな」
『それくらいはボクでも作れるし!!!』

そういっていたのだが、翌日の昼間、本に夢中になってぬるくて伸びたカップ麺をこいつは作り出してしまうのだった。
なんにしろ、少しずつ料理も教えてやろうと思った。
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