幽霊だって怖いものはコワイ ～うちの幽霊ちゃんは怖がり～

１８ 幽霊ちゃんは風邪がこわい

「うー、３８度ちょうどか、完全に夏風邪だな」

最近ちょっと忙しかったり、あいつと暮らし始めて生活パターンが変わったりして、体力を予想以上に使っていたのかもしれない。風邪をひいてしまった。

『大丈夫？　おにーさん？』

風邪薬を飲んで布団に入っているとあいつが心配そうにのぞき込んでくる。
お前の方が死にそうな顔だが大丈夫か？

「ああ、風邪だからな。寝てりゃ治る。水分補給だけは欠かさないようにしないとな。葛桜、いつものところに置いてあるから勝手に食べろよ」
『ん、わかった』

そう言って台所へと消えるあいつ。俺もさっさと寝て体調戻さないとな。



そう思って５分もたっていないだろう。

『大丈夫？　おにーさん』

あいつが戻ってくる。

「大丈夫だって、あ、タオル硬く絞って持ってきてくれないか」

本当は代える必要はあまりないのだが、一応用件としておでこにあてていたタオルを渡す。

『わかった！』

元気にタオルを水で浸して絞ったのを持ってくる。
それを俺の頭に乗せると、台所のいつものところに戻っていくあいつ。
さて、俺もさっさと寝て体調戻さないとな。



そう思って５分もたっていないだろう。

『大丈夫？　おにーさん』

またあいつが戻ってきた。
親犬とはぐれた子犬のようなかわいらしさはあるが、正直若干うっとおしい。

「もう寝るからな、声をかけるなよ」
『うー、わかった』

そう言ってあいつは戻っていった。
心配なのはわかったが、少し放置してくれるだろうか。
そう思って目をつぶり、必死に眠るのだった。



『おにーさん』

眠るおにーさんはすごく静かだ。死体のように身じろぎしないし、呼吸も小さい。
特にこういうときだとすごく嫌な感じがする。

『心配なんだよ、ボクは何もできないし』

吸い取るだけで喜ぶおにーさん。しかし、生気を返すことはできない。こういう時に返せればすぐに元気になるかもしれないのに、そう思うと悔しくてしょうがない。
おでこに手を当てて、熱を吸い取る。こうやって狙ったエネルギーだけ吸い取るような器用なこともできるようになってきた。おにーさんが生気をいっぱいくれるから、ボクも成長しているみたいだ。

『元気になってよ、おにーさん』

とっておきらしい葛桜は、一人で食べたらひどく味気ない気がした。