幽霊だって怖いものはコワイ ～うちの幽霊ちゃんは怖がり～

１４ 幽霊ちゃんは魚の頭がこわい

近くの魚屋で鯵を買った。
夕飯にしようと思って買ったものだ。
刺身でも食べられるということだったので、２匹ほど捌いてもらって、頭や大きな骨等のアラも貰って来た。
刺身はどんぶりにして、頭とかのアラはあら汁にでもするつもりだ。
鯵丼に心躍らせながら家に帰るのだった。

『おにいさんおかえりー』
「ただいま」
『今日の夕飯はなに？』
「鯵の刺身買ってきたから、鯵丼だな」
『お刺身？』
「刺身だ」
『わーい』

喜ぶこいつを尻目にカバンを降ろして着替え、夕食の準備を始めるのだった。




炊いておいたご飯をどんぶりによそい、既に捌いてある刺身をご飯の上に乗せる。
ショウガを下ろして、その上に乗せれば完成である。お手軽鯵丼だ。

さすがに生ものは一日置いておけないので、一つだけ作って、こいつが先に少しだけ吸う、という方式である。

『お兄さん、こっちの袋は何？』
「魚のあらだよ。煮て味噌汁でもしようかと思ってな」

取り出すと骨と頭が出てきた。

『ひいいいいいい！！！！』

こいつは魚の頭を見て悲鳴を上げて後ずさりする。

「どうしたんだ？」
『目が怖い！！！』

涙目になりながら訴えられる。
まあ確かに、死んだ魚のような眼って少し怖いよな。でも死んでるし……
ひとまず金笊にポイッと入れると水で洗い始める。

「下処理だけしちゃうから、先に食ってていいぞ」
『これって、その頭の身なんだよね……』
「そうだが？」
『……　やっぱりボクはいいや……』

そのままふよふよと、浮いて移動すると、ぽてっとぬいぐるみに不時着した。
そんな怖かったかなぁ。

鯵丼は新鮮で非常においしかった。あら汁も翌日食べたが美味しかった。
しかし、こいつは両方とも口をつけようとしなかった。