8 / 65
8 幽霊ちゃんはあざらしちゃんのぬいぐるみがすき
しおりを挟む
でかいアザラシのぬいぐるみを手に入れた。
1m以上ある結構な大きさの白いアザラシのぬいぐるみである。
同業の懇親会でボーリング場に行ったのだが、そこにUFOキャッチャーがあって、そこでとったのだ。
試しに1回やってみただけだが、どうせ取れないだろうからと無駄に一番でかいのを狙ったのがあだになった。
爪に引っかかって穴に転げ落ちたのだ。でかすぎて穴の途中で引っかかって、取り出すのに一番苦労した。
なんにしろ1m以上のぬいぐるみだ。
でかい。とてもでかい。そのあとのボーリングでネタとして、背中に縛り付けて投げ続けたらそれなりに周りに受けていた。
そのせいで、子供にいる家庭に完全に押し付け損ねた。そもそも汗臭そうなので、渡すのに躊躇した。
とぼとぼと、白いアザラシのぬいぐるみを担いで帰る。幸い、警察官とはすれ違わなかったので、職務質問されずに済んだ。白いアザラシを担いだ中年男性なんて、訳が分からな過ぎて不審であっただろう。
代わりに大家さんに見つかった。なんか畏敬の念を抱いた眼で遠巻きに見られた。事故物件に住み着くやつは一味違うな、という感じだろうか。泣きたくなった。
『わー、かわいいー』
家に帰ったらこいつはこいつで一瞬にして気に入ったようだ。
俺の背に縛り付けられて、少し顔がゆがんでしまったぬいぐるみを嬉しそうに受け取る。
そのまま台所の隅に持っていくと、ぬいぐるみに乗っかって、ぽよんぽよんはね始めた。
『どうしたの? この子』
「ゲームの景品でもらったんだよ」
『もらっていい?』
「ああ、いいぞ」
『わーい♪』
ぬいぐるみの上でぽよんぽよんはねたり、抱き着いたりしている。
ずいぶんと気に入ったようだった。
かなり大きいぬいぐるみだから乗っても抱き着いてもちょうどいいのかもしれない。
あいつがぬいぐるみにじゃれているのを尻目に、俺は夜食の準備をするのだった。
「おい、羊羹切れたぞ」
いつもの高級羊羹を二切れ切って、綺麗なお皿に盛ってあいつの定位置に置く。隣にはいつもの緑茶だ。
代わりに昨日からおいてある羊羹は、自分のものとして食べるのだ。お茶はさすがに冷めていておいしくないので、一息で飲み干して新しいのを入れる。和菓子は在庫によって変わるが、だいたいいつものセットである。
用意ができたので、あいつを呼ぶが反応がない。いつもなら大好物を前にした犬のように飛んでくるのに……
ぬいぐるみの上でつぶれているあいつをのぞき込むと……
「寝てる……」
すやすやと眠っていた。こいつ、寝るのか。前に寝ないとか言っていたし、夜中中動画とか見てて、朝になっても元気いっぱいだから寝ないものだと思っていたが……
おこすのも忍びないし、上にタオルケットだけかけて放置することにした。
羊羹は置いておけば食べるだろう。昨日切った羊羹は若干ぱさぱさしていた。
1m以上ある結構な大きさの白いアザラシのぬいぐるみである。
同業の懇親会でボーリング場に行ったのだが、そこにUFOキャッチャーがあって、そこでとったのだ。
試しに1回やってみただけだが、どうせ取れないだろうからと無駄に一番でかいのを狙ったのがあだになった。
爪に引っかかって穴に転げ落ちたのだ。でかすぎて穴の途中で引っかかって、取り出すのに一番苦労した。
なんにしろ1m以上のぬいぐるみだ。
でかい。とてもでかい。そのあとのボーリングでネタとして、背中に縛り付けて投げ続けたらそれなりに周りに受けていた。
そのせいで、子供にいる家庭に完全に押し付け損ねた。そもそも汗臭そうなので、渡すのに躊躇した。
とぼとぼと、白いアザラシのぬいぐるみを担いで帰る。幸い、警察官とはすれ違わなかったので、職務質問されずに済んだ。白いアザラシを担いだ中年男性なんて、訳が分からな過ぎて不審であっただろう。
代わりに大家さんに見つかった。なんか畏敬の念を抱いた眼で遠巻きに見られた。事故物件に住み着くやつは一味違うな、という感じだろうか。泣きたくなった。
『わー、かわいいー』
家に帰ったらこいつはこいつで一瞬にして気に入ったようだ。
俺の背に縛り付けられて、少し顔がゆがんでしまったぬいぐるみを嬉しそうに受け取る。
そのまま台所の隅に持っていくと、ぬいぐるみに乗っかって、ぽよんぽよんはね始めた。
『どうしたの? この子』
「ゲームの景品でもらったんだよ」
『もらっていい?』
「ああ、いいぞ」
『わーい♪』
ぬいぐるみの上でぽよんぽよんはねたり、抱き着いたりしている。
ずいぶんと気に入ったようだった。
かなり大きいぬいぐるみだから乗っても抱き着いてもちょうどいいのかもしれない。
あいつがぬいぐるみにじゃれているのを尻目に、俺は夜食の準備をするのだった。
「おい、羊羹切れたぞ」
いつもの高級羊羹を二切れ切って、綺麗なお皿に盛ってあいつの定位置に置く。隣にはいつもの緑茶だ。
代わりに昨日からおいてある羊羹は、自分のものとして食べるのだ。お茶はさすがに冷めていておいしくないので、一息で飲み干して新しいのを入れる。和菓子は在庫によって変わるが、だいたいいつものセットである。
用意ができたので、あいつを呼ぶが反応がない。いつもなら大好物を前にした犬のように飛んでくるのに……
ぬいぐるみの上でつぶれているあいつをのぞき込むと……
「寝てる……」
すやすやと眠っていた。こいつ、寝るのか。前に寝ないとか言っていたし、夜中中動画とか見てて、朝になっても元気いっぱいだから寝ないものだと思っていたが……
おこすのも忍びないし、上にタオルケットだけかけて放置することにした。
羊羹は置いておけば食べるだろう。昨日切った羊羹は若干ぱさぱさしていた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました
山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。
でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。
そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。
長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。
脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、
「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」
「なりすましヒロインの娘」
と同じ世界です。
このお話は小説家になろうにも投稿しています
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜
日向はび
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」
二人は再び手を取り合うことができるのか……。
全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)
神送りの夜
千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。
父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。
町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。
【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。
現在 100話 越え。
エブリスタ・カクヨム・小説家になろうに同時掲載中
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
【総文字数 700,000字 超え 文庫本 約7冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~4巻が発売中!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。
第8巻は12月16日に発売予定です! 今回は天狼祭編です!
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる