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8 幽霊ちゃんはあざらしちゃんのぬいぐるみがすき

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でかいアザラシのぬいぐるみを手に入れた。
1m以上ある結構な大きさの白いアザラシのぬいぐるみである。

同業の懇親会でボーリング場に行ったのだが、そこにUFOキャッチャーがあって、そこでとったのだ。
試しに1回やってみただけだが、どうせ取れないだろうからと無駄に一番でかいのを狙ったのがあだになった。
爪に引っかかって穴に転げ落ちたのだ。でかすぎて穴の途中で引っかかって、取り出すのに一番苦労した。

なんにしろ1m以上のぬいぐるみだ。
でかい。とてもでかい。そのあとのボーリングでネタとして、背中に縛り付けて投げ続けたらそれなりに周りに受けていた。
そのせいで、子供にいる家庭に完全に押し付け損ねた。そもそも汗臭そうなので、渡すのに躊躇した。
とぼとぼと、白いアザラシのぬいぐるみを担いで帰る。幸い、警察官とはすれ違わなかったので、職務質問されずに済んだ。白いアザラシを担いだ中年男性なんて、訳が分からな過ぎて不審であっただろう。
代わりに大家さんに見つかった。なんか畏敬の念を抱いた眼で遠巻きに見られた。事故物件に住み着くやつは一味違うな、という感じだろうか。泣きたくなった。



『わー、かわいいー』

家に帰ったらこいつはこいつで一瞬にして気に入ったようだ。
俺の背に縛り付けられて、少し顔がゆがんでしまったぬいぐるみを嬉しそうに受け取る。
そのまま台所の隅に持っていくと、ぬいぐるみに乗っかって、ぽよんぽよんはね始めた。

『どうしたの? この子』
「ゲームの景品でもらったんだよ」
『もらっていい?』
「ああ、いいぞ」
『わーい♪』

ぬいぐるみの上でぽよんぽよんはねたり、抱き着いたりしている。
ずいぶんと気に入ったようだった。
かなり大きいぬいぐるみだから乗っても抱き着いてもちょうどいいのかもしれない。
あいつがぬいぐるみにじゃれているのを尻目に、俺は夜食の準備をするのだった。






「おい、羊羹切れたぞ」

いつもの高級羊羹を二切れ切って、綺麗なお皿に盛ってあいつの定位置に置く。隣にはいつもの緑茶だ。
代わりに昨日からおいてある羊羹は、自分のものとして食べるのだ。お茶はさすがに冷めていておいしくないので、一息で飲み干して新しいのを入れる。和菓子は在庫によって変わるが、だいたいいつものセットである。
用意ができたので、あいつを呼ぶが反応がない。いつもなら大好物を前にした犬のように飛んでくるのに……
ぬいぐるみの上でつぶれているあいつをのぞき込むと……

「寝てる……」

すやすやと眠っていた。こいつ、寝るのか。前に寝ないとか言っていたし、夜中中動画とか見てて、朝になっても元気いっぱいだから寝ないものだと思っていたが……
おこすのも忍びないし、上にタオルケットだけかけて放置することにした。
羊羹は置いておけば食べるだろう。昨日切った羊羹は若干ぱさぱさしていた。
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