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第六章 無能姫のエフラ王戴冠
2 エフラ王アデライド
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ヨハンの提案した、ボクのエフラ王就任は、とんとん拍子に進んでしまった。
フルギア王も積極的に動いて、フルギア王からの推挙への同意のみならず、東方大陸南方の森林王国からも承認を取ってきた。
寿命の長い森の民が暮らす森林王国は、規模は小さいが歴史は長く、箔付けにはぴったりの相手だ。
どうやら交易路を南方にも伸ばしてほしいらしく、航路延長を引き換えに承認を取ってきたようだ。
他にも周辺諸侯も賛成したらしい。
こうして3人の王、6つの公、そして28の諸侯の推挙を得て、ボクはエフラ王に就任してしまった。
訳が分からなかった。
王都はポート・アルテミアと改名した旧ポート・マリーに決めた。
母の名を付けた都市にできてちょっとうれしかったのは秘密である。
ここはもともとロンバルディアの領地だったが、前ロンバルディア王が略奪したため支配権が宙に浮いている状態であった。
今回ボクの王位就任で正式にエフラ王国の領土と認められたのであった。
「せっかくベルと一緒に南方大陸で探検家になろうとしてたのに」
南方大陸は数十年前に見つかった未開の大陸であり、現在も植民と探検が細々と続けられている。
そこにベルトルドと二人冒険者になって大冒険をする、というプランは今回のことで完全に破綻した。
ベルトルドの膝に頭をのせて、ゴロゴロと不満を愚痴る。
「嫌なら『王になりません』って書き置き残して逃げてもいいんじゃない?」
「ベルも時々すごいこと言うよね。さすがにヨハンとフルギア王は裏切れないよ」
「じゃああきらめて王様になりましょうね」
「むぴゅぅぅ」
不満に頬を膨らませようとしたら指で頬をつつかれた。空気が抜ける間抜けな音がした。
ポート・アルテミアの発展は著しかった。
新型の黒石を使った蒸気機関の工房がいくつも設置されてた、港湾施設も非常に立派なものが出来上がっていく。
港湾設備に合わせて繁華街も発展する。
そんな中で一番大きな建物なのが王国政務省である。
王国の政治すべてを司るそこは、実用的でありながら美しく、来る人たち皆感嘆していた。
ラッザロ先生が作ったそれは、万能の人の最高傑作とのちの世にまで歌われたらしいが、それにふさわしい立派な建物であった。
エフラ王宮ともよく言われるが、実は王が住む王宮は別であった。
政務省の隣にある一軒家がボクたちが住む家であり、書類上ここが王宮であった。
ボクたち夫婦とメイドと執事が一人ずつというとてもこじんまりした場所であり、一般的に見たらそれなりに立派な家なのだが、隣の政務省と比べると貧相であった。
しばしば物置に誤解された建物であったが、ボク自身はここを気に入っていて、次の代に変わるまで、王宮はずっとこの建物であった。
フルギア王も積極的に動いて、フルギア王からの推挙への同意のみならず、東方大陸南方の森林王国からも承認を取ってきた。
寿命の長い森の民が暮らす森林王国は、規模は小さいが歴史は長く、箔付けにはぴったりの相手だ。
どうやら交易路を南方にも伸ばしてほしいらしく、航路延長を引き換えに承認を取ってきたようだ。
他にも周辺諸侯も賛成したらしい。
こうして3人の王、6つの公、そして28の諸侯の推挙を得て、ボクはエフラ王に就任してしまった。
訳が分からなかった。
王都はポート・アルテミアと改名した旧ポート・マリーに決めた。
母の名を付けた都市にできてちょっとうれしかったのは秘密である。
ここはもともとロンバルディアの領地だったが、前ロンバルディア王が略奪したため支配権が宙に浮いている状態であった。
今回ボクの王位就任で正式にエフラ王国の領土と認められたのであった。
「せっかくベルと一緒に南方大陸で探検家になろうとしてたのに」
南方大陸は数十年前に見つかった未開の大陸であり、現在も植民と探検が細々と続けられている。
そこにベルトルドと二人冒険者になって大冒険をする、というプランは今回のことで完全に破綻した。
ベルトルドの膝に頭をのせて、ゴロゴロと不満を愚痴る。
「嫌なら『王になりません』って書き置き残して逃げてもいいんじゃない?」
「ベルも時々すごいこと言うよね。さすがにヨハンとフルギア王は裏切れないよ」
「じゃああきらめて王様になりましょうね」
「むぴゅぅぅ」
不満に頬を膨らませようとしたら指で頬をつつかれた。空気が抜ける間抜けな音がした。
ポート・アルテミアの発展は著しかった。
新型の黒石を使った蒸気機関の工房がいくつも設置されてた、港湾施設も非常に立派なものが出来上がっていく。
港湾設備に合わせて繁華街も発展する。
そんな中で一番大きな建物なのが王国政務省である。
王国の政治すべてを司るそこは、実用的でありながら美しく、来る人たち皆感嘆していた。
ラッザロ先生が作ったそれは、万能の人の最高傑作とのちの世にまで歌われたらしいが、それにふさわしい立派な建物であった。
エフラ王宮ともよく言われるが、実は王が住む王宮は別であった。
政務省の隣にある一軒家がボクたちが住む家であり、書類上ここが王宮であった。
ボクたち夫婦とメイドと執事が一人ずつというとてもこじんまりした場所であり、一般的に見たらそれなりに立派な家なのだが、隣の政務省と比べると貧相であった。
しばしば物置に誤解された建物であったが、ボク自身はここを気に入っていて、次の代に変わるまで、王宮はずっとこの建物であった。
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