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第五章 無能姫の西方大陸動乱 ロンバルディア戦役
10 ロンバルディア王 ヨハン1世
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戦争が終わり、ロンバルディアの王にヨハンがついた。
今後、紆余曲折もあるだろうが、ヨハンならうまくやっていくだろう。
ボクを推す声がないわけではなかったが、ボクはフルギア側の人間である上に魔力がない。
ヨハンを押しのけて王になるつもりはなかった。
ロンバルディア国内の論功についてはヨハンに任せるとして、問題はフルギアとの賠償問題だった。
王都フリギアで行われた両国の講和会議は紛糾した。
現状ロンバルディアに残っているヨハンについたの領主たちは、フルギア侵攻を知らなかったか、反対していた者たちばかりだ。かといってフルギア側は汚い不意打ちによって損失が出ているわけで、何もなしというわけにはいかない。
フルギア王宮では最低でも領地を、という声も上がっているようだ。
西方大陸の領土をフルギアがもらっても統治なんてできるわけがないのだから、フルギア王も苦慮しているようだ。
会議は紛糾したが、ボクがどうにか奔走し、話はまとまることになった。
まず、ボクの持つイチルの町とセヴァン盆地はイチル伯領として、イスハクに譲ることにした。
もともとイチルの町は王領でありイスハクの父アデルが代官をしており、先祖代々代官をしていた土地である。
昇格させる根拠もあり、また、調べたら末端中の末端らしいが一応フルギア王家の血を引くらしいイスハクにロンバルディア王姉であるボクが領土を割譲するという事で、領土割譲を求める連中をなだめすかしたようだ。
これは裏の理由もある。イスハクはコーディリアと順調に仲を深めているようだが、ヨーク公の家臣たちはイスハクが魔力が非常に低い上に一官吏では、二人の関係を認めがたいのは容易に想像できた。
箔付と妹への早めの結婚祝いという事でイチル伯を渡したのだ。最悪、ヨーク公はほかの人に渡して、二人でイチル伯夫妻として生きることもできる。
苦労しただろうコーディリアへの餞別で会った。
また、同時にエフラ中心とした旧エフラク領のうち、ボクが受け取っていた分は、王弟エマルに譲ることにした。
これでエマルはエフラク公になる。
今回の遠征でのエマルへの恩賞もこちらで用意した形だ。
西大陸側に持っていた領土をすべて手放して、フルギア王に首を垂れて謝罪するボクを見て、フルギアの人たちも留飲を下げる、どころでは済まなかったらしい。やり過ぎたという雰囲気が流れたらしく、遺恨も残らないだろう、というのがフルギア王の見立てである。
イスハク含め、周りには死ぬほど止められたのだが、領地なんてなくても生きていけると思うし、これで弟と妹への罪滅ぼしになるかと思ったら惜しくはなかった。
一応戦争後に籍の上だけは夫になったベルトルドも止めないのだからまあいいや、ぐらいに思っていた。
すべてを失ったわけでもない。ビュザンからイチル、エフラ、フィリーまでの西方大陸にある東側の航路の利権は残っているし、それを東方大陸の港とつなげるだけで莫大な富が生まれるだろう。
領地に責任を持たなくなった分、今の方がお金持ちなんじゃないかと思うぐらいである。ベルトルドと二人、南方大陸に渡って家庭教師をするなんていうのも楽しそうだ。
そうしてロンバルディアとフルギアの講和条約は成立した。
自由だー、とボクはお気楽に考えていたのだが、今度はロンバルディア側が気にしたらしい。
王の即位に功のある王姉を無位無官にしておくわけにはいかないということで、交渉終了後、王都ロンバルディアへと呼ばれることになった。
今後、紆余曲折もあるだろうが、ヨハンならうまくやっていくだろう。
ボクを推す声がないわけではなかったが、ボクはフルギア側の人間である上に魔力がない。
ヨハンを押しのけて王になるつもりはなかった。
ロンバルディア国内の論功についてはヨハンに任せるとして、問題はフルギアとの賠償問題だった。
王都フリギアで行われた両国の講和会議は紛糾した。
現状ロンバルディアに残っているヨハンについたの領主たちは、フルギア侵攻を知らなかったか、反対していた者たちばかりだ。かといってフルギア側は汚い不意打ちによって損失が出ているわけで、何もなしというわけにはいかない。
フルギア王宮では最低でも領地を、という声も上がっているようだ。
西方大陸の領土をフルギアがもらっても統治なんてできるわけがないのだから、フルギア王も苦慮しているようだ。
会議は紛糾したが、ボクがどうにか奔走し、話はまとまることになった。
まず、ボクの持つイチルの町とセヴァン盆地はイチル伯領として、イスハクに譲ることにした。
もともとイチルの町は王領でありイスハクの父アデルが代官をしており、先祖代々代官をしていた土地である。
昇格させる根拠もあり、また、調べたら末端中の末端らしいが一応フルギア王家の血を引くらしいイスハクにロンバルディア王姉であるボクが領土を割譲するという事で、領土割譲を求める連中をなだめすかしたようだ。
これは裏の理由もある。イスハクはコーディリアと順調に仲を深めているようだが、ヨーク公の家臣たちはイスハクが魔力が非常に低い上に一官吏では、二人の関係を認めがたいのは容易に想像できた。
箔付と妹への早めの結婚祝いという事でイチル伯を渡したのだ。最悪、ヨーク公はほかの人に渡して、二人でイチル伯夫妻として生きることもできる。
苦労しただろうコーディリアへの餞別で会った。
また、同時にエフラ中心とした旧エフラク領のうち、ボクが受け取っていた分は、王弟エマルに譲ることにした。
これでエマルはエフラク公になる。
今回の遠征でのエマルへの恩賞もこちらで用意した形だ。
西大陸側に持っていた領土をすべて手放して、フルギア王に首を垂れて謝罪するボクを見て、フルギアの人たちも留飲を下げる、どころでは済まなかったらしい。やり過ぎたという雰囲気が流れたらしく、遺恨も残らないだろう、というのがフルギア王の見立てである。
イスハク含め、周りには死ぬほど止められたのだが、領地なんてなくても生きていけると思うし、これで弟と妹への罪滅ぼしになるかと思ったら惜しくはなかった。
一応戦争後に籍の上だけは夫になったベルトルドも止めないのだからまあいいや、ぐらいに思っていた。
すべてを失ったわけでもない。ビュザンからイチル、エフラ、フィリーまでの西方大陸にある東側の航路の利権は残っているし、それを東方大陸の港とつなげるだけで莫大な富が生まれるだろう。
領地に責任を持たなくなった分、今の方がお金持ちなんじゃないかと思うぐらいである。ベルトルドと二人、南方大陸に渡って家庭教師をするなんていうのも楽しそうだ。
そうしてロンバルディアとフルギアの講和条約は成立した。
自由だー、とボクはお気楽に考えていたのだが、今度はロンバルディア側が気にしたらしい。
王の即位に功のある王姉を無位無官にしておくわけにはいかないということで、交渉終了後、王都ロンバルディアへと呼ばれることになった。
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