44 / 57
第五章 無能姫の西方大陸動乱 ロンバルディア戦役
3 オルド平原開拓戦
しおりを挟む
西大陸東部には、かつて東西両大陸にまたがる帝国の首都があったという。
帝都オルドといわれたそこは、200年続いた古帝国とともに栄え、帝国の滅亡とともに衰退したという。
衰退後は平原となり、強力な魔獣が跋扈したために人が住むのに適さない不毛の地になったという。
そんな歴史を持つオルド平原の端に、ポート・マリーといわれる港町がある。
東西大陸の航路の中継地としてそこそこ栄えていたが、周り中魔物が跋扈する場所であるため、中継以上の価値がない場所であり、フルギアの変の時にロンバルディア艦隊が最後に立ち寄った場所である。
その際、ロンバルディア艦隊は略奪の限りを尽くし、無茶苦茶になったらしい。
変後に町に援助して立て直したのがボクであり、既にロンバルディア王国から離脱しこちらの傘下に入っている。
古帝国時代に大規模な港があったという伝承もある町は、地形的に確かに良港であり、援助により港湾設備はかなり拡充していた。
「領主様、お待ちしておりました」
「町長さんもお元気そうで何よりです」
先遣隊としてボクが連れてきたのは黒鉄隊2000。
今回の計画の中核となる部隊である。
そんなボクたちを迎えたのはポート・マリーの町長さんとラッザロ先生である。
「白いのも案外元気そうだな」
「元気なのが取り柄ですから」
「まあそうだな。下調べは大体終わったぞ」
ラッザロ先生にお願いしていたのは、ポート・マリーに残された古文書を解読することで、周囲の地形を把握することだった。
古帝国が滅んだのは300年も前だが、そのころからの資料がいまだポート・マリーには残されており、それを解読することで、今後の開墾に役立てようと思っていたのだ。
「にしても随分悠長な作戦だな」
「ボクはロンバルディアを舐めていませんから」
ロンバルディアは西大陸一の軍事国家である。
圧倒的な軍事力で版図を広げた国であり、特に陸戦では圧倒的な強さを誇っていた。
弱体化したとはいえ油断できる相手ではない。
敵を疲弊させてさらに弱体化させながら、こちらは力を蓄える、それが一番確実だと思っていた。
1年ほどかけて、ポート・マリー周辺のオルド平原を開拓し策源地としながら王都への道を作る。
そんな悠長な作戦が東方ルートでの作戦であった。
開墾の邪魔になる魔獣の対応も考えていた。
魔獣というのは魔力を有した獣であり、普通の獣よりも力が強く、さらに個体によっては魔法も使う厄介な相手だ。
そんな魔獣が跋扈する場所を開拓するのに使えるのが、この黒鉄隊であった。
その防具は魔獣の牙も爪も通さないし、魔法も弾くのだから圧倒的に有利なはずである。
また、魔獣たちは黒鉄を嫌がるので、黒鉄やその原料の魔封石を使って獣除けをする予定であった。
「お姫の下では充実してますが、なんというか、土木工事と書類仕事しかしていない気がします」
黒鉄隊の初代隊長のジョヴァンニさんはそうボヤキながら黒鉄の鍬をふるっていた。
最近は剣より鍬の方が持っている時間が長いらしい。
イチルの開発からセヴァン盆地の開拓、旧エフラク領エフラやポート・マリーの再興と、ジョバンニ旗下の黒鉄隊はこき使い続けてきた。
悪いなとは思うが、なんせ一番信頼できる部隊なのだ。
強さはもちろんあるが、開拓から統治、そして土木工事から操船までそれ以外の能力も高い。
戦いならビュザン傭兵出身のジュスティニアー二団が、黒鉄の扱いならイスハク旗下の黒鉄隊が、統治ならばエミールさん率いる旧エフラク官吏たちが、操船や開発ならばマッキナさん旗下の加工場の面々が、おそらく上だろう。
だが、どれも高レベルでできるという点、危険な場所で開拓や開発をするには必須なのだ。
ボクとしては掛け値なしのイチル軍最精鋭部隊だと思っているのだ。
「お姫がそういうならば、もうちょっと鍬を握って頑張りますよ」
魔獣たちとの戦いはあっけなかった。黒鉄を嫌う彼らは黒鉄隊の面々が近づくと戦いもせずに逃げ出していた。
黒鉄の道具だけでも有効らしく、だからこそ黒鉄の土木用具しか使っていないらしい。
必死に彼らを褒め、盛りあげながら開拓は順調すぎるぐらい順調に進んでいく。
雪が解けて春を迎えたころ、道はついに王国東部の都市へとつながるのであった。
帝都オルドといわれたそこは、200年続いた古帝国とともに栄え、帝国の滅亡とともに衰退したという。
衰退後は平原となり、強力な魔獣が跋扈したために人が住むのに適さない不毛の地になったという。
そんな歴史を持つオルド平原の端に、ポート・マリーといわれる港町がある。
東西大陸の航路の中継地としてそこそこ栄えていたが、周り中魔物が跋扈する場所であるため、中継以上の価値がない場所であり、フルギアの変の時にロンバルディア艦隊が最後に立ち寄った場所である。
その際、ロンバルディア艦隊は略奪の限りを尽くし、無茶苦茶になったらしい。
変後に町に援助して立て直したのがボクであり、既にロンバルディア王国から離脱しこちらの傘下に入っている。
古帝国時代に大規模な港があったという伝承もある町は、地形的に確かに良港であり、援助により港湾設備はかなり拡充していた。
「領主様、お待ちしておりました」
「町長さんもお元気そうで何よりです」
先遣隊としてボクが連れてきたのは黒鉄隊2000。
今回の計画の中核となる部隊である。
そんなボクたちを迎えたのはポート・マリーの町長さんとラッザロ先生である。
「白いのも案外元気そうだな」
「元気なのが取り柄ですから」
「まあそうだな。下調べは大体終わったぞ」
ラッザロ先生にお願いしていたのは、ポート・マリーに残された古文書を解読することで、周囲の地形を把握することだった。
古帝国が滅んだのは300年も前だが、そのころからの資料がいまだポート・マリーには残されており、それを解読することで、今後の開墾に役立てようと思っていたのだ。
「にしても随分悠長な作戦だな」
「ボクはロンバルディアを舐めていませんから」
ロンバルディアは西大陸一の軍事国家である。
圧倒的な軍事力で版図を広げた国であり、特に陸戦では圧倒的な強さを誇っていた。
弱体化したとはいえ油断できる相手ではない。
敵を疲弊させてさらに弱体化させながら、こちらは力を蓄える、それが一番確実だと思っていた。
1年ほどかけて、ポート・マリー周辺のオルド平原を開拓し策源地としながら王都への道を作る。
そんな悠長な作戦が東方ルートでの作戦であった。
開墾の邪魔になる魔獣の対応も考えていた。
魔獣というのは魔力を有した獣であり、普通の獣よりも力が強く、さらに個体によっては魔法も使う厄介な相手だ。
そんな魔獣が跋扈する場所を開拓するのに使えるのが、この黒鉄隊であった。
その防具は魔獣の牙も爪も通さないし、魔法も弾くのだから圧倒的に有利なはずである。
また、魔獣たちは黒鉄を嫌がるので、黒鉄やその原料の魔封石を使って獣除けをする予定であった。
「お姫の下では充実してますが、なんというか、土木工事と書類仕事しかしていない気がします」
黒鉄隊の初代隊長のジョヴァンニさんはそうボヤキながら黒鉄の鍬をふるっていた。
最近は剣より鍬の方が持っている時間が長いらしい。
イチルの開発からセヴァン盆地の開拓、旧エフラク領エフラやポート・マリーの再興と、ジョバンニ旗下の黒鉄隊はこき使い続けてきた。
悪いなとは思うが、なんせ一番信頼できる部隊なのだ。
強さはもちろんあるが、開拓から統治、そして土木工事から操船までそれ以外の能力も高い。
戦いならビュザン傭兵出身のジュスティニアー二団が、黒鉄の扱いならイスハク旗下の黒鉄隊が、統治ならばエミールさん率いる旧エフラク官吏たちが、操船や開発ならばマッキナさん旗下の加工場の面々が、おそらく上だろう。
だが、どれも高レベルでできるという点、危険な場所で開拓や開発をするには必須なのだ。
ボクとしては掛け値なしのイチル軍最精鋭部隊だと思っているのだ。
「お姫がそういうならば、もうちょっと鍬を握って頑張りますよ」
魔獣たちとの戦いはあっけなかった。黒鉄を嫌う彼らは黒鉄隊の面々が近づくと戦いもせずに逃げ出していた。
黒鉄の道具だけでも有効らしく、だからこそ黒鉄の土木用具しか使っていないらしい。
必死に彼らを褒め、盛りあげながら開拓は順調すぎるぐらい順調に進んでいく。
雪が解けて春を迎えたころ、道はついに王国東部の都市へとつながるのであった。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる