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第五章 無能姫の西方大陸動乱 ロンバルディア戦役
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年が明けて、ロンバルディア侵攻を本格化させるべく準備が進んでいた。
フルギア王国からは、イチル伯であるボクが出陣し、また、フルギア王弟で元第三王子のエマルがそれに加わることになっている。
フルギア王は自分が出たかったようだが、王妃にぼこぼこにされて止められていた。
弟二人も予備がいるだろという暴言に、愛するあなたに予備はいませんといいながら鳩尾に拳を叩き込んだ王妃の雄姿は語り草であった。
まあ戦略的に、王がいてくれると防衛がしやすいのもある、イチル伯ぐらいの肩書だと他の領に入るのも大変なのだ。
侵攻ルートは当初二つが検討されていた。
一つは南方のヨーク公領からのルートだ。
コーディリアはあの後公都を陥落させ、敵将ジョンを押し込んでいた。
王国軍が必死に彼の援護をしているが芳しくなさそうであり、圧倒的優勢な戦線である。
もう一つは北方のフロウライト伯領からのルートだ。
弟のフロウライト伯ヨハンもまた、優勢に事を進めており、少しずつ戦線を押し上げているらしい。
どちらかから、もしくは両方から軍を上げて侵攻する、というのが案であったが……
「ボクとしてはこちらから攻めたいと思います」
「え?」
ボクの示した案はそのどちらのルートでもなかった。
西方大陸東部は不毛地帯が広がっている。
魔物が多く跋扈し、また土地も荒れている場所だ。
だが、まったく人が住んでいないわけではない。東大陸に一番近い港町ポート・マリーはそんな人が住んでいる場所の一つだった。
ここから上陸し、一気に西進。そうしてロンバルディアを攻め落とすのがボクの計画であった。
「理由を聞いても?」
「これが一番勝算が高いからです」
ヨーク公からのルートの問題は、ジョンを撃破しなければならないという事だ。
撃破が難しいわけではない。コーディリアからの話でも、イスハクからの報告でも、明らかに無能な将だ。
だが、だからこそジョンは王国軍の足を引っ張っている。
ここで彼を撃破してしまうと王国軍はひいてしまい、山岳地帯などで防衛線を張ってしまうだろう。
そうなると軍事的に余裕が出てしまう。
できれば敵には足を引っ張っていてほしく、南方ルートはこの状態で小競り合いを続けるのが良いだろう。
北方ルートもいくつか問題があった。
海路が難所があり輸送が難しいところがあるのに加え、港が小さくてある程度以上の兵を運ぶのが難しいのだ。
さらに、フロウライト伯領はそう豊かではない。大軍を展開してしまうと意地ができない可能性があった。ビュザン傭兵2000は結構限界ラインだとボクは見ていた。
あと、そちらにボクが乗り込んでしまうとヨハンの手柄が薄れる。ロンバルディアの新しい王はボクではなくヨハンを据える予定だった。
ロンバルディアは血筋だけでなく魔力も非常に大事な要素だ。無能姫ではなく、魔力が豊富にある彼の方が支持を集められるだろう。そういう予定の中、ボクが大軍で乗り込むと総大将が変わってしまう。
そういう政治的な意味でも北方ルートは避けたかった。
あとは西側から攻めれば相手の意表をつけるだろうという打算もある。
ポート・マリーはすでに交渉によりこちらに落ちている。航路も短いので補給も楽だろう。
そういうことから東方ルートを選択したのだ
結局意見交換はその後も続いたが、ボクの東方ルートが最終的に承認されるのであった。
フルギア王国からは、イチル伯であるボクが出陣し、また、フルギア王弟で元第三王子のエマルがそれに加わることになっている。
フルギア王は自分が出たかったようだが、王妃にぼこぼこにされて止められていた。
弟二人も予備がいるだろという暴言に、愛するあなたに予備はいませんといいながら鳩尾に拳を叩き込んだ王妃の雄姿は語り草であった。
まあ戦略的に、王がいてくれると防衛がしやすいのもある、イチル伯ぐらいの肩書だと他の領に入るのも大変なのだ。
侵攻ルートは当初二つが検討されていた。
一つは南方のヨーク公領からのルートだ。
コーディリアはあの後公都を陥落させ、敵将ジョンを押し込んでいた。
王国軍が必死に彼の援護をしているが芳しくなさそうであり、圧倒的優勢な戦線である。
もう一つは北方のフロウライト伯領からのルートだ。
弟のフロウライト伯ヨハンもまた、優勢に事を進めており、少しずつ戦線を押し上げているらしい。
どちらかから、もしくは両方から軍を上げて侵攻する、というのが案であったが……
「ボクとしてはこちらから攻めたいと思います」
「え?」
ボクの示した案はそのどちらのルートでもなかった。
西方大陸東部は不毛地帯が広がっている。
魔物が多く跋扈し、また土地も荒れている場所だ。
だが、まったく人が住んでいないわけではない。東大陸に一番近い港町ポート・マリーはそんな人が住んでいる場所の一つだった。
ここから上陸し、一気に西進。そうしてロンバルディアを攻め落とすのがボクの計画であった。
「理由を聞いても?」
「これが一番勝算が高いからです」
ヨーク公からのルートの問題は、ジョンを撃破しなければならないという事だ。
撃破が難しいわけではない。コーディリアからの話でも、イスハクからの報告でも、明らかに無能な将だ。
だが、だからこそジョンは王国軍の足を引っ張っている。
ここで彼を撃破してしまうと王国軍はひいてしまい、山岳地帯などで防衛線を張ってしまうだろう。
そうなると軍事的に余裕が出てしまう。
できれば敵には足を引っ張っていてほしく、南方ルートはこの状態で小競り合いを続けるのが良いだろう。
北方ルートもいくつか問題があった。
海路が難所があり輸送が難しいところがあるのに加え、港が小さくてある程度以上の兵を運ぶのが難しいのだ。
さらに、フロウライト伯領はそう豊かではない。大軍を展開してしまうと意地ができない可能性があった。ビュザン傭兵2000は結構限界ラインだとボクは見ていた。
あと、そちらにボクが乗り込んでしまうとヨハンの手柄が薄れる。ロンバルディアの新しい王はボクではなくヨハンを据える予定だった。
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そういう政治的な意味でも北方ルートは避けたかった。
あとは西側から攻めれば相手の意表をつけるだろうという打算もある。
ポート・マリーはすでに交渉によりこちらに落ちている。航路も短いので補給も楽だろう。
そういうことから東方ルートを選択したのだ
結局意見交換はその後も続いたが、ボクの東方ルートが最終的に承認されるのであった。
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