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第四章 黒鉄姫の東方大陸動乱 フリギアの変
7 フリギアの変 王都制圧
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王都フリギアでの戦闘はすぐに終わったらしい。
もともと王都にはそれなりの兵がいたわけで、いくら奇襲して王族らを倒したとしても寡兵であるロンバルディア兵や数は多いが人材流出で練度が非常に落ちていたエフラク兵では対抗が難しく、王太子軍が到着した時点ですでにかなり消耗していたらしい。
彼らの希望はロンバルディア本国からの援軍であったが、それが王都からも見えるフリキア沖で沈むのを見て、戦意を喪失したらしい。
この戦いで、王子二人とボクの妹であるヨーク公代行コーディリアはどうにか逃げたようで助かっていたが、母アルテミアは報告の通り処刑されており、フルギア王も瀕死の重傷を負っていた。
「アデライドよ、すまないな」
「いえ、母も本望でしょう」
母は、フルギア王と王子をかばい奮戦しつかまったらしい。
もともと魔法については非常に長けていた母だ。一人で逃げようと思えばおそらく逃げられただろうが、皆を守るために戦い、力尽き、処刑されてしまったようだ。
フルギア王はそれを気に病んでいるようだが、ボクは彼を責める気にはならなかった。
フルギア王は逃げてきたボク達母娘に領地までくれた大恩ある相手だ。
それに母は王を好いていた。命を懸けるに値する相手だったのだろう。
そんな母の意思を非難するつもりはなかったし、その相手である王を非難するつもりもなかった。
「ボクよりも子供たちに気をかけてあげてくださいよ」
「息子らなら問題ないだろう。既に遺言も伝えてある」
「いや、そういう問題じゃないでしょう」
「それに、看取ってもらうなら愛した相手の面影のある美女がいいからな」
王の命は本当に長くないだろう。
それでもそんな軽口をたたく王にため息が出た。
「アデライドよ、父からの助言だ」
「父じゃないでしょう」
「アルテミアの娘なんだから俺の娘だ」
「はいはい、わかりましたよお義父様」
「素直ないい子は好きだぞ。お前は今回いろいろ失っただろう。だが、まだ多くのものが残っている。愛する人も、信用できる友も、分かり合えるかもしれない弟妹も、まだ残っている。零れ落ちたものを悔やむ気持ちはわかるが、手に残ったものを大切にしろ」
「……」
心当たりは、ないわけではなかった。
先日の海戦だって、ボクが先陣を切る必要なんてなかった。
でも我慢できなかったのだ。自分の命なんてどうでもいいと思っていたところもあるだろう。
「無茶をしたらしいじゃないか。婚約者殿にはお仕置きされるんだな。くそう、うちの娘に手を出しやがって。八つ裂きにしてやりたいわ」
「ベルを八つ裂きにされたら困ってしまいます。お義父様」
「男親とはそういうものだ」
「……」
実父を思い出してしまった。
既に記憶も印象も薄れているが、あの人はそういうことを言わなそうな気がした。
「好いている恋人を大事にしろ。大切な友を大事にしろ。信用できる家臣を大事にしろ。何よりもそんな皆が好いている自分を大事にしろ。わかったな、愛しい娘よ」
「…… わかりました、お義父様」
「いい子だ。少し眠る。良い旅路を」
「……」
そうしてフルギア王は眠るように目を閉じた。
フルギア王フリギア12世がなくなり、王太子がフリギア13世として即位した。
そうして彼が最初にしたことがエフラク討伐であった。
もともと王都にはそれなりの兵がいたわけで、いくら奇襲して王族らを倒したとしても寡兵であるロンバルディア兵や数は多いが人材流出で練度が非常に落ちていたエフラク兵では対抗が難しく、王太子軍が到着した時点ですでにかなり消耗していたらしい。
彼らの希望はロンバルディア本国からの援軍であったが、それが王都からも見えるフリキア沖で沈むのを見て、戦意を喪失したらしい。
この戦いで、王子二人とボクの妹であるヨーク公代行コーディリアはどうにか逃げたようで助かっていたが、母アルテミアは報告の通り処刑されており、フルギア王も瀕死の重傷を負っていた。
「アデライドよ、すまないな」
「いえ、母も本望でしょう」
母は、フルギア王と王子をかばい奮戦しつかまったらしい。
もともと魔法については非常に長けていた母だ。一人で逃げようと思えばおそらく逃げられただろうが、皆を守るために戦い、力尽き、処刑されてしまったようだ。
フルギア王はそれを気に病んでいるようだが、ボクは彼を責める気にはならなかった。
フルギア王は逃げてきたボク達母娘に領地までくれた大恩ある相手だ。
それに母は王を好いていた。命を懸けるに値する相手だったのだろう。
そんな母の意思を非難するつもりはなかったし、その相手である王を非難するつもりもなかった。
「ボクよりも子供たちに気をかけてあげてくださいよ」
「息子らなら問題ないだろう。既に遺言も伝えてある」
「いや、そういう問題じゃないでしょう」
「それに、看取ってもらうなら愛した相手の面影のある美女がいいからな」
王の命は本当に長くないだろう。
それでもそんな軽口をたたく王にため息が出た。
「アデライドよ、父からの助言だ」
「父じゃないでしょう」
「アルテミアの娘なんだから俺の娘だ」
「はいはい、わかりましたよお義父様」
「素直ないい子は好きだぞ。お前は今回いろいろ失っただろう。だが、まだ多くのものが残っている。愛する人も、信用できる友も、分かり合えるかもしれない弟妹も、まだ残っている。零れ落ちたものを悔やむ気持ちはわかるが、手に残ったものを大切にしろ」
「……」
心当たりは、ないわけではなかった。
先日の海戦だって、ボクが先陣を切る必要なんてなかった。
でも我慢できなかったのだ。自分の命なんてどうでもいいと思っていたところもあるだろう。
「無茶をしたらしいじゃないか。婚約者殿にはお仕置きされるんだな。くそう、うちの娘に手を出しやがって。八つ裂きにしてやりたいわ」
「ベルを八つ裂きにされたら困ってしまいます。お義父様」
「男親とはそういうものだ」
「……」
実父を思い出してしまった。
既に記憶も印象も薄れているが、あの人はそういうことを言わなそうな気がした。
「好いている恋人を大事にしろ。大切な友を大事にしろ。信用できる家臣を大事にしろ。何よりもそんな皆が好いている自分を大事にしろ。わかったな、愛しい娘よ」
「…… わかりました、お義父様」
「いい子だ。少し眠る。良い旅路を」
「……」
そうしてフルギア王は眠るように目を閉じた。
フルギア王フリギア12世がなくなり、王太子がフリギア13世として即位した。
そうして彼が最初にしたことがエフラク討伐であった。
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