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第四章 黒鉄姫の東方大陸動乱 フリギアの変
6 フリギアの変 フリギア沖海戦
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接舷した旗艦に新規編成した黒海隊が乗り込んでいく。
黒海隊は黒鉄隊に類似した部隊だが、海上戦闘のために編成された部隊であるため、黒鉄のフルプレートアーマーを着ていない。
薄い黒鉄の手甲と足甲、胸甲の防具に短めの剣という、ボクの装備を参考にした装備である。
これでも水に落ちると結構きついので、黒海隊では水練の時間が非常に長く、皆泳ぐのに長けたものである。
防具としては若干心もとないところがあるが、対魔法にはこれでも十分で、魔法メインの軽装な水兵たちを圧倒できるだろうと考えていた。
黒船一番艦の黒海隊は敵旗艦すぐに乗り移っていく。
この編成にも欠点があり、いくら装備が薄手だとは言え重いのだ。接舷時に押し返されると海に落ちる可能性が高く、一番弱いタイミングであった。
しかもこのタイミングでは魔法による援護もしにくい。
黒鉄により魔法が効かないとはいえ、まったく影響を受けないわけではない。揺れたり爆風で海に落ちる危険性が高いので援護攻撃もしにくい。
これをどう解決するかであるが……
「行きますよ!」
「お姫! まって!!」
比較的身軽なボクが先陣切って、船の真ん中へと飛び込んだのだ。
羽がついているおかげで、実はふわっと浮くことができるのだ。
飛べるわけではない。大きく跳べる程度であるが、これをすることにより、飛び移って一気に船のど真ん中へ落ちることができる。
いきなり敵兵が船のど真ん中に落ちてきて、敵兵は混乱し、その隙に後続が続々と船に乗り込んでくる。
これならどうにかなるか、と思った瞬間、強力な一撃が襲ってきた。
大剣の一撃をどうにかいなしながら、剣を構えて向き合うと、そこには大男がいた。
「ふん、貴様が無能姫か。小手先の手段で惑わそうったってそうはいかん」
「あなた誰ですか」
「無能はこれだから困る。クロード・ド・ラヴァルを知らんとは」
「知らないですねっ!!」
剣と剣が交わる。
ラヴァルという家名は記憶にある。バリバリのロンバルディア王党派諸侯なのは知っていた。
もっとも彼のことは知らないし、顔なんてロンバルディアを10年近く前にはなれたボクが知るはずもなかった。
ただ、かなり強い。自信満々に名乗っただけはあるだけの実力があった。
おそらく風の魔力を剣にまとわせて切れ味と剣速を上げているのだろう。でかい剣なのに、ボクのショートソードと同じ速度で切り返してくるのは半端な腕ではない。
普通に戦ったらかなり不利そうだ。技術的には負けてる気はしないが、重量と筋力において小柄なボクは不利なのだ。
だからボクは策をとることにした。
上段に構え、あえて隙をつくる。
黒鉄について知っているようで、装甲に切りかかっても効果が薄いことを理解し、装甲のない場所を狙っていた様だ。
敵将は横薙ぎでボクの脇腹を狙ってきた。
「ぐふっ!」
一撃がボクの脇腹に突き刺さる。
すさまじい衝撃に口から息が漏れるが……
真っ二つを狙った一撃だったにもかかわらず、一撃はボクの脇腹を全く傷つけることなく止まっていた。
そのまま大上段からの斬撃で、敵将の胴を袈裟懸けで切り裂く。
致命傷だった。もう助からないだろう。
「な、なぜ……」
「無能姫は無能ではないってことですよ」
二つほど理由がある。
一つは竜鱗である。ボクの脇腹は竜鱗でおおわれており、黒鉄の鎧より丈夫なのだ。剣で切り裂くのは困難であろう。
もう一つは、ボクの無魔力だ。ボクは魔力が少ないわけではなく、魔力が全くない。黒鉄と似たような性質があり、魔力の攻撃を一切はじくのだ。
敵将必殺の一撃はその二つの要因でほとんど効果を発揮することがなく、逆にボクの反撃に倒れたのだった。
敵将が倒れ、水兵たちに動揺が走った。
その混乱に乗じ、旗艦を奪取するのは時間の問題だった。
その後、ロンバルディア艦隊はそのほとんどを拿捕もしくは撃沈し、フリギア沖海戦は大勝利に終わったのであった。
黒海隊は黒鉄隊に類似した部隊だが、海上戦闘のために編成された部隊であるため、黒鉄のフルプレートアーマーを着ていない。
薄い黒鉄の手甲と足甲、胸甲の防具に短めの剣という、ボクの装備を参考にした装備である。
これでも水に落ちると結構きついので、黒海隊では水練の時間が非常に長く、皆泳ぐのに長けたものである。
防具としては若干心もとないところがあるが、対魔法にはこれでも十分で、魔法メインの軽装な水兵たちを圧倒できるだろうと考えていた。
黒船一番艦の黒海隊は敵旗艦すぐに乗り移っていく。
この編成にも欠点があり、いくら装備が薄手だとは言え重いのだ。接舷時に押し返されると海に落ちる可能性が高く、一番弱いタイミングであった。
しかもこのタイミングでは魔法による援護もしにくい。
黒鉄により魔法が効かないとはいえ、まったく影響を受けないわけではない。揺れたり爆風で海に落ちる危険性が高いので援護攻撃もしにくい。
これをどう解決するかであるが……
「行きますよ!」
「お姫! まって!!」
比較的身軽なボクが先陣切って、船の真ん中へと飛び込んだのだ。
羽がついているおかげで、実はふわっと浮くことができるのだ。
飛べるわけではない。大きく跳べる程度であるが、これをすることにより、飛び移って一気に船のど真ん中へ落ちることができる。
いきなり敵兵が船のど真ん中に落ちてきて、敵兵は混乱し、その隙に後続が続々と船に乗り込んでくる。
これならどうにかなるか、と思った瞬間、強力な一撃が襲ってきた。
大剣の一撃をどうにかいなしながら、剣を構えて向き合うと、そこには大男がいた。
「ふん、貴様が無能姫か。小手先の手段で惑わそうったってそうはいかん」
「あなた誰ですか」
「無能はこれだから困る。クロード・ド・ラヴァルを知らんとは」
「知らないですねっ!!」
剣と剣が交わる。
ラヴァルという家名は記憶にある。バリバリのロンバルディア王党派諸侯なのは知っていた。
もっとも彼のことは知らないし、顔なんてロンバルディアを10年近く前にはなれたボクが知るはずもなかった。
ただ、かなり強い。自信満々に名乗っただけはあるだけの実力があった。
おそらく風の魔力を剣にまとわせて切れ味と剣速を上げているのだろう。でかい剣なのに、ボクのショートソードと同じ速度で切り返してくるのは半端な腕ではない。
普通に戦ったらかなり不利そうだ。技術的には負けてる気はしないが、重量と筋力において小柄なボクは不利なのだ。
だからボクは策をとることにした。
上段に構え、あえて隙をつくる。
黒鉄について知っているようで、装甲に切りかかっても効果が薄いことを理解し、装甲のない場所を狙っていた様だ。
敵将は横薙ぎでボクの脇腹を狙ってきた。
「ぐふっ!」
一撃がボクの脇腹に突き刺さる。
すさまじい衝撃に口から息が漏れるが……
真っ二つを狙った一撃だったにもかかわらず、一撃はボクの脇腹を全く傷つけることなく止まっていた。
そのまま大上段からの斬撃で、敵将の胴を袈裟懸けで切り裂く。
致命傷だった。もう助からないだろう。
「な、なぜ……」
「無能姫は無能ではないってことですよ」
二つほど理由がある。
一つは竜鱗である。ボクの脇腹は竜鱗でおおわれており、黒鉄の鎧より丈夫なのだ。剣で切り裂くのは困難であろう。
もう一つは、ボクの無魔力だ。ボクは魔力が少ないわけではなく、魔力が全くない。黒鉄と似たような性質があり、魔力の攻撃を一切はじくのだ。
敵将必殺の一撃はその二つの要因でほとんど効果を発揮することがなく、逆にボクの反撃に倒れたのだった。
敵将が倒れ、水兵たちに動揺が走った。
その混乱に乗じ、旗艦を奪取するのは時間の問題だった。
その後、ロンバルディア艦隊はそのほとんどを拿捕もしくは撃沈し、フリギア沖海戦は大勝利に終わったのであった。
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