32 / 57
第四章 黒鉄姫の東方大陸動乱 フリギアの変
1 フリギアの変 前夜
しおりを挟む
ロンバルディアから使節団が訪れた。
名目は王位継承に伴う挨拶であるが、おそらくフルギア王国との交易の拡大、うまくいけば援助を求めるのではないかと推測されていた。
ロンバルディアの内情は極めて悪い。
だからこそ助力を求める必要があるのだが、侵略を繰り返してきたロンバルディアに東方大陸で手を差し伸べる相手はいなかったのだ。
なので別の大陸で交流があったフルギア王国へと白羽の矢を立てたのだろう。
最近ボクにお義父様と呼べとうるさいフルギア王は、ロンバルディアに対して個人的に思うところはある様だが、とはいえあくまで個人的な話であり国としての交流はできると考えているらしい。
多少の援助程度ならしてもいいかと思っているといっていたし、ボクも母もそれには反対しなかった。
そんなロンバルディア使節団が王都フリギアに来る直前にもかかわらず、王太子夫妻はイチルに滞在していた。
この夫妻、見た目は王子様、王女様然とした美男美女なのだが、中身は二人ともマッドな学者肌で、イチルに滞在しているラッザロ先生やマッキナさんを尊敬し過ぎているのだ。
そのせいでよくイチルに来ては、いろいろなことを師事しているようだった。
今回もロンバルディアからの使節団は国王や第二第三王子に丸投げし、イチルで貴族らを集めて対エフラク対応を話し合うという名目で来たにもかかわらずその対応をボクに丸投げして工房で先生たちとマッドな実験を繰り返していた。
まあいんだけど。研究成果はうちでももらえるし。
ただ、
「優秀な義妹がいるとお兄ちゃんは助かるな!」
と笑顔で宣った王太子の顔面にグーパンチしたボクはきっと悪くない。
今回の使節団には妹のヨーク公代行コーディリアも参加しているらしい。
母には、妹を可愛がってあげてくださいという口実で王都へ行くのを断ったのだが、正直妹と会うのがこわかった。
妹は母のことなど覚えてもいないだろう。母を妹から引きはがした原因は自分であり、恨まれていても当然である。
そんな目線を向けられて、ボクはどうなるか、自信がなかった。
なのでエフラク対応も口実にして王都に行かなかったのだ。
現にエフラクの対応は大変だった。特に分割の範囲の問題が非常に大きかった。
イチルとしては別に何ももらわなくてもよかった。先の戦争でもらったセヴァン盆地で十二分だし、お金も王家が立て替えているのだから、特に何も損をしていない。領民を返せと言われなければ特に問題はないのだ。
ただ、いくつかの領は難民対策に苦慮しており、それなりな対価を求めていた。
それ自体は別段構わないのだが、問題は分け方である。
領地の実測した地図もないのでどこをどう切るか、決めにくいのだ。
だが、あらかじめ決めておかないと絶対あとでもめる。
王家にあった古い地図を参考にし、元エフラクの官吏たちの助力も得ながら、どうにかこうにか領地の割方を決めた。
うちから大量の食糧を出す代わりに、公都エフラ含む地域を割譲されることになったのはちょっと誤算だった。
土地が増えると労力が増えるし、人も要るのだ。できればほしくなかったのだが、落としどころを探っているうちにそうなってしまった。
だが、なんにしろエフラクの差し押さえはうまくいきそうである。
そうしてささやかな宴会を領主や王太子夫妻としている中、火急の報が届くのであった。
名目は王位継承に伴う挨拶であるが、おそらくフルギア王国との交易の拡大、うまくいけば援助を求めるのではないかと推測されていた。
ロンバルディアの内情は極めて悪い。
だからこそ助力を求める必要があるのだが、侵略を繰り返してきたロンバルディアに東方大陸で手を差し伸べる相手はいなかったのだ。
なので別の大陸で交流があったフルギア王国へと白羽の矢を立てたのだろう。
最近ボクにお義父様と呼べとうるさいフルギア王は、ロンバルディアに対して個人的に思うところはある様だが、とはいえあくまで個人的な話であり国としての交流はできると考えているらしい。
多少の援助程度ならしてもいいかと思っているといっていたし、ボクも母もそれには反対しなかった。
そんなロンバルディア使節団が王都フリギアに来る直前にもかかわらず、王太子夫妻はイチルに滞在していた。
この夫妻、見た目は王子様、王女様然とした美男美女なのだが、中身は二人ともマッドな学者肌で、イチルに滞在しているラッザロ先生やマッキナさんを尊敬し過ぎているのだ。
そのせいでよくイチルに来ては、いろいろなことを師事しているようだった。
今回もロンバルディアからの使節団は国王や第二第三王子に丸投げし、イチルで貴族らを集めて対エフラク対応を話し合うという名目で来たにもかかわらずその対応をボクに丸投げして工房で先生たちとマッドな実験を繰り返していた。
まあいんだけど。研究成果はうちでももらえるし。
ただ、
「優秀な義妹がいるとお兄ちゃんは助かるな!」
と笑顔で宣った王太子の顔面にグーパンチしたボクはきっと悪くない。
今回の使節団には妹のヨーク公代行コーディリアも参加しているらしい。
母には、妹を可愛がってあげてくださいという口実で王都へ行くのを断ったのだが、正直妹と会うのがこわかった。
妹は母のことなど覚えてもいないだろう。母を妹から引きはがした原因は自分であり、恨まれていても当然である。
そんな目線を向けられて、ボクはどうなるか、自信がなかった。
なのでエフラク対応も口実にして王都に行かなかったのだ。
現にエフラクの対応は大変だった。特に分割の範囲の問題が非常に大きかった。
イチルとしては別に何ももらわなくてもよかった。先の戦争でもらったセヴァン盆地で十二分だし、お金も王家が立て替えているのだから、特に何も損をしていない。領民を返せと言われなければ特に問題はないのだ。
ただ、いくつかの領は難民対策に苦慮しており、それなりな対価を求めていた。
それ自体は別段構わないのだが、問題は分け方である。
領地の実測した地図もないのでどこをどう切るか、決めにくいのだ。
だが、あらかじめ決めておかないと絶対あとでもめる。
王家にあった古い地図を参考にし、元エフラクの官吏たちの助力も得ながら、どうにかこうにか領地の割方を決めた。
うちから大量の食糧を出す代わりに、公都エフラ含む地域を割譲されることになったのはちょっと誤算だった。
土地が増えると労力が増えるし、人も要るのだ。できればほしくなかったのだが、落としどころを探っているうちにそうなってしまった。
だが、なんにしろエフラクの差し押さえはうまくいきそうである。
そうしてささやかな宴会を領主や王太子夫妻としている中、火急の報が届くのであった。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる