上 下
29 / 57
第三章 黒鉄姫の東方大陸動乱 エフラク戦役

8 イチル伯アデライド

しおりを挟む
戦争から1年がたち、領はさらに発展した。
多額の賠償金で新領地の盆地に水路を作り水を引いたため、盆地全体が農地として活用できるようになった。
また、イチルの町と盆地の間の道も拡張し、水路をイチルの町へとつながる川へとつなげたため、行き来も格段に楽になっていた。

住人もすごい勢いで増えている。
領地が増えて、流入する人が増えているのは確かだが、もう一つ、仕事をしてくれる官僚が増えたのだ。
領内の人間も活用しているが、やはり専門の人を外から入れると効率化著しかった。
その筆頭がエミールさんというおじさんで、エフラクの家宰をしていた人だった。条約交渉の時の相手方でもある。
条約締結後、その内容に不満だったエフラク公に、家財一切没収の上追放されたのを拾ったのだ。
ここまで思うところがありそうな人間を雇うのにはいろいろな人に反対されたが、正直目の前の紙束をどうにかしてくれるなら悪魔でもいいと思っていたボクの強権で雇用することにしたのだ。
はっきり言って広さも倍以上になった現状、行政官が足りていないのだ。
セヴァン盆地関連の仕事を丸投げしたら、予算内で水路設置から交通網整備まで全部してくれたのだからとても有能である。そのままセヴァン盆地の代官をお願いしており、かなりうまくやっているようだった。
他にはビュザン傭兵が丸ままは以下に収まったのも大きい。
最初は報酬に色を付けて払って終わりにしようと思っていたのだが、団長のジュスティニアーニが継続雇用を打診してきたのだ。
報酬が支払えないので難色を示すと、かなり格安の費用でいいというので、喜んで雇ったのだが、これがまた大当たりだった。
ビュザン傭兵改めジュスティニアー二団には、団長の希望もあり港湾の警備と管理をお願いしたのだが、これが非常に巧みであった。もともとビュザンで海運にもかかわっていた彼は、流通を活性化させたのだ。
立ち寄る船は今までの何倍にもなり、黒鉄隊のジョバンニ隊長が片手間でやっていたころとは見違えるほど効率化していた。
年末、セヴァン盆地で穀物が取れすぎて値崩れしかけたときに、すべて売り払ったのも団長であった。
あとはラッザロ先生が来てくれているのも助かった。
東方大陸に渡った後どこに行っていたかはわからなかったが、成人の儀の時に王都に来ていて、儀式にも参加してくれていた。
そんな先生を母が捕まえて、大枚叩いてボクにつけてくれたのだ。
気心も知れているし、やはり何でもできる先生は家宰として頑張ってもらっている。
そうして順調に発展を続けているが、懸念が消えることはない。
移民の流入元の問題が新たな火種となりそうであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...