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第三章 黒鉄姫の東方大陸動乱 エフラク戦役

4 エフラ沖海戦 前哨戦

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エフラク軍が壊滅し、圧倒的優位を確保したボクたちは、反撃に出ることにした。
治療を受けて、食事もしっかりとり魔力を回復して復帰した傭兵団400は、そのまま天水峠を通過して逆侵攻し、エフラク領を荒らしに荒らしてもらうことにした。
あまり略奪は好まないのだが、今回はエフラクが攻めてきたのが悪いのだし、目を傭兵団に向けてほしいのもあり、やりたい放題を許可する。
イチル軍は傭兵400に自分たちの軍150しかいないので、峠を超えて攻め入る傭兵隊が主力に見えるだろうし、残党はそちらに釣られるだろう。

じゃあ、残りの軍はどうするかというと、全員で船に乗り込んだ。
陸にいる兵士は確かに150しかいない。
だが、イチル領には人はもっといるし、特に船乗りの数は多い。船で目的地に乗り付けた後、1000を余裕で超える船乗りたちを兵士として転用するつもりであった。
このまま船でエフラクの首都エフラに行き、一気に戦争を終わらせる予定である。

この作戦の最大の障害はエフラク海軍であろう。
エフラクはイチルと違って海運が盛んではないのだが、それでも領の規模に見合った数の船を有していた。
できれば消耗はしたくないため、今回も秘密兵器を出すことにした。

黒船。
それはイチル海軍旗艦であり、全周囲を黒鉄で覆った船である。
海戦で使われるさまざまな魔法に対し高い防御力を持ち、そしてすさまじく扱いにくい。
一般的に操船に使われる魔法が一切効力がないからだ。
攻撃方法も、魔法が使えないので基本的には機械弓を使うことになっていた。
そんな真っ黒な船が、一路エフラに向かって先頭を切って走っていく。
風が悪いと普通の船と違って一切動かなくなるようだが、今回は追い風が吹いているようだ。
熟練の水夫さんたちが操る黒船は、ほかの船と遜色ない速度で走っていた。



エフラの町が見える範囲になったころ、やっと相手もこちらを見つけたらしく、港から慌てて船が出てきた。
かなり大型な船が3隻と小さな快速船が10隻の編成である。

「鈍すぎますな」
「そうなの?」

黒船の船長は敵船を見てそういう。
ボクにはよくわからなかった。

「強引に風の魔法で進んでますからね。接敵する頃にはバテてしまいますよ、あれでは」
「よくわかるねぇ」
「うちのお姫様は白いのも黒いのもわがままで扱いにくいですからな。風が読めなければ扱えんのですよ」
「白いのってボクのことかな」
「わかっているなら大人しくしていただければと思いますけどね」

船長がにやりと笑う。
黒船の扱いは非常に難しいらしい。
なんせ魔法が効かないから魔法で補助できないし、船体も非常に重いので小回りが全く効かないのだとか。
船員たちは黒い姫様は扱いにくい、となぜか楽しそうに言っているが、ボクはそれと同列に扱いにくいと思われているようだ。

肩をすくめると、船長に言われ、船室に引っ込むことにした。そろそろ海戦が始まるようである。



海戦は遠距離先頭から始まった。
先頭を走る黒船から放たれた大矢が、敵の小型船を貫く。
機械的に弾いて放たれた大矢の攻撃は、実はそこまで威力が高くない。
通常は火の魔法や火矢で船体を燃やすのだが、黒船では魔法が使えず、火種も用意が難しかったので、ただの矢を放つしかできなかった。
機械弓の一撃は、魔法弓より威力と射程は勝るとはいえ、丈夫に作られた大型船の船体構造にダメージを与えるには力不足だった。
なので比較的脆弱な小型船を集中的に狙った。
旗艦らしき大型船を先導する小型船へ数十もの大矢が放たれる。
通常の魔法や魔法矢ならばまだ射程外だったせいか、完全に意表をついたようだ。
回避行動もろくに取れずに小型船はハリネズミのようになった。
残念ながらこれでも沈没には至っていない。やはり威力が足りないのだろう。
しかし、船はよろよろと陸の方に流されていく。船員にダメージは与えたのだろう。
一隻だけとはいえ脱落させたのだから初撃としては上々であった。
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