剣と魔法の世界の王国の第一王女に転生したけど無魔力のため追放されました ~無能姫の成り上がり~

みやび

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第二章 東方大陸と無能姫

9 黒鉄姫アデライド

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マッセナさんが開発した魔封金の加工方法を発展させ、イチルの町では魔封金による道具が開発された。
名前を黒鉄と改めたこの金属は、非常に有用だった。
粘りがあり、硬いこの金属は、消耗する道具には非常に有用だったのだ。
例えば製材所の製材用ののこぎりは今では皆黒鉄製である。
魔道具を使うと、使用回数制限の関係上、ほぼ毎日刃を交換しないといけないが、黒鉄製の刃は取り付けてから3年経ったが未だ現役である。
手入れをしなければならないとはいえ、ほぼ毎日交換していたのに比べれば圧倒的に手間が少なかった。
日用品でも包丁など使用頻度が高いものに積極的に取り入れられ始めていた。
新製品として、飛ぶように売れるのがこの黒鉄であった。

もっとも欠点がないわけではない。
例えば船には使われない。風の魔法を阻害してしまうからだ。
帆船の補助動力として使われる風魔法は、船の移動には極めて重要であり、それを阻害してしまう黒鉄は忌避されていた。
あとは魔術師など、魔力の高いの人たちには非常に嫌厭された。
一定以上の魔力を持つ人にとって、黒鉄は近づくと不快感があるらしい。
気分的なものや思想的なものだけではないのは、ベルトルドを使って確認した。

あいかわらずボクにとても甘いベルトルドは、ボクがやることはよほど危なくない限り手放しでほめて甘やかしてくれる。
黒鉄の剣を自分で自作した時も、ベルトルドは最初はボクを抱きかかえ、撫でまわしながら褒めてくれたのだが、実際に作った剣を持ってもらうと眉をしかめた。
そのまま剣を試しに振り、ボクに剣を手渡すとベルトルドは言った。

「非常に嫌な感じがします」

と。
その後、いろいろ試したのだがわかったことがあった。
魔力が高い人間は体内の魔力が濃い、一定濃度を超えている人はその体内の魔力が体の外にある黒鉄と干渉するらしい。
健康に何か悪いわけではないようだが、その干渉が非常に不快感を生むという。
魔法や魔道具が魔力という素質がいるように、黒鉄もまた魔力という素養が影響するようである。
そのため、魔力が高いベルトルドは黒鉄製の道具を扱えず、魔力が低いイスハクは好んで黒鉄製の道具を使っていた。

特に利用されたのは武具であった。
最近はイチルの町へ移民してくる人も多く、中にはごろつきも混じっていた。
そういった人間たちを取り押さえるために組織されたのは黒鉄隊である。
黒鉄の防具に黒鉄の剣を携えた黒鉄隊は、特に魔法を利用した犯罪に有効だった。
彼らがいるだけで、魔法が減衰し、消滅するのだから魔法や魔道具を利用した犯罪にきわめて有効だったのだ。
黒い鎧に身を包んだ彼らは、町の守護神であった。

もう一つ、黒鉄隊にはメリットがあった。
今までは治安部隊には魔力が強い者を採用するしかなかった。なんせ犯罪者に負けたら意味がないし、そのために制圧するための力である魔力は非常に重要な要素だったのだ。
しかし、黒鉄は魔力と関係ないため魔力の低い人々を採用することができるようになったのだ。
性格や技術など適性で採用できるようになった治安部隊は、とても有能であり、イチルの治安は移民が多いにもかかわらず非常に高く維持されていたのだった。

ボクも、七歳の時の絹のドレス鎧をリメイクした黒鉄の鎧を着て、時々黒鉄隊とともに見回りをしている。
絹と黒鉄からできた子の鎧は、マッキナに作ってもらったものであり、とても丈夫でありながら見た目もドレスのようにきれいだった。

黒鉄姫
それが最近ボクにつけられた異名となっていた。
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