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第二章 東方大陸と無能姫
8 魔封金産業
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「白餅、なにやってるんだ」
「刃を砥いでる」
「砥ぐってどんな刃物を…… なんだ、珍しいの持っているじゃないか」
「わかるの?」
「まあ、私が作ったやつだからな。アルテミアが変わったもの注文するなと思っていたが、白餅用だったのか」
木材加工に始まり、造船やら脱穀やらまで始まった水車小屋は、建物も大型化して工房と呼ばれていた。
そんな工房の一角で、ボクは刃を研いでいた。
7歳の誕生日にもらった魔封剣の刃だ。
丈夫で切れ味も鋭いが、海風で錆びるため、定期的に磨く必要があった。
そんなところをマッキナさんに見つかったのだ。
マッキナさんは最初はもうちょっと丁寧だった気がするが、2年もいると扱いがどんどん雑になっていく。
いまでは白餅とかいうあたり、白いのとか言い始めたラッザロ先生の系譜を感じる。
ただ、その能力は非常に高かった。
造船業も軌道に乗り始め、さらに海運まで始めたイチルの町の人口も爆発的に増えており、今では来た頃の5倍になっていた。
「え、これマッキナさんが作ったんですか?」
「そうだよ。いやぁ、大変だったね。なんせ魔法が一切効かないから、魔法なしで加工しないといけないんだから」
「でしょうねぇ」
魔封金は魔力をはじく。そのため魔法の炎なども弾いてしまう。
魔法で多くが支えられているこの世界では、加工の難易度が非常に高そうである。
「あー、でも今見ると作り込みが甘いねぇ」
「でも便利ですよ」
「そうなのかい?」
「丈夫ですし、切れ味もいいです。5年の間、結構酷使してますが手入れすれば使えてますからね」
魔道具には使用回数に制限がある。使わなければかなりの期間持つが、数十も使えば確実に壊れてしまう。
それに比較して魔封剣は非常に丈夫だった。
包丁に使ったり、壁のぼりの時壁に刺したり、木の枝を切り払ったり、なんにでも使った。
多少刀身が短くなるだけで済むのだからかなり丈夫である。
「でも、もっといろいろ作りたいんですよね」
「じゃあ作り方教えようか?」
「お願いします」
魔封金の加工方法はいろいろ調べたがわからなかった。なんせ魔法をはじくから熱を加えにくいし、丈夫だから物理的にたたいて加工も難しい。
どうやって剣の形にしたのかはずっと謎だったのだ。
教えてもらえるなら一にも二にも、聞きたかった。
「魔封金の加工には、黒石の炎を使うんだよ」
「黒石?」
「私がそう呼んでいるだけだね。この町に流れている川の上流にある山でとれる黒い石が、火をつけると高熱で燃えるんだ。それを使って加工するんだよ」
「なるほど……」
最近若干あいまいになりつつある前世知識をもとに考えると、石炭か何かだろうか。
ひとまずかき集めて実験してみないといけなさそうだ。
「魔封金の鉱石もこのあたりの山で取れるからね。材料集めには困らないだろう」
「そうですね。早速行きましょう」
「そういうところは母親似だね。仰せのままに」
飛び出していくボクに、苦笑しながらマッキナさんがついてくる。
また一つ、イチルの町に新しい産業が出来そうであった。
「刃を砥いでる」
「砥ぐってどんな刃物を…… なんだ、珍しいの持っているじゃないか」
「わかるの?」
「まあ、私が作ったやつだからな。アルテミアが変わったもの注文するなと思っていたが、白餅用だったのか」
木材加工に始まり、造船やら脱穀やらまで始まった水車小屋は、建物も大型化して工房と呼ばれていた。
そんな工房の一角で、ボクは刃を研いでいた。
7歳の誕生日にもらった魔封剣の刃だ。
丈夫で切れ味も鋭いが、海風で錆びるため、定期的に磨く必要があった。
そんなところをマッキナさんに見つかったのだ。
マッキナさんは最初はもうちょっと丁寧だった気がするが、2年もいると扱いがどんどん雑になっていく。
いまでは白餅とかいうあたり、白いのとか言い始めたラッザロ先生の系譜を感じる。
ただ、その能力は非常に高かった。
造船業も軌道に乗り始め、さらに海運まで始めたイチルの町の人口も爆発的に増えており、今では来た頃の5倍になっていた。
「え、これマッキナさんが作ったんですか?」
「そうだよ。いやぁ、大変だったね。なんせ魔法が一切効かないから、魔法なしで加工しないといけないんだから」
「でしょうねぇ」
魔封金は魔力をはじく。そのため魔法の炎なども弾いてしまう。
魔法で多くが支えられているこの世界では、加工の難易度が非常に高そうである。
「あー、でも今見ると作り込みが甘いねぇ」
「でも便利ですよ」
「そうなのかい?」
「丈夫ですし、切れ味もいいです。5年の間、結構酷使してますが手入れすれば使えてますからね」
魔道具には使用回数に制限がある。使わなければかなりの期間持つが、数十も使えば確実に壊れてしまう。
それに比較して魔封剣は非常に丈夫だった。
包丁に使ったり、壁のぼりの時壁に刺したり、木の枝を切り払ったり、なんにでも使った。
多少刀身が短くなるだけで済むのだからかなり丈夫である。
「でも、もっといろいろ作りたいんですよね」
「じゃあ作り方教えようか?」
「お願いします」
魔封金の加工方法はいろいろ調べたがわからなかった。なんせ魔法をはじくから熱を加えにくいし、丈夫だから物理的にたたいて加工も難しい。
どうやって剣の形にしたのかはずっと謎だったのだ。
教えてもらえるなら一にも二にも、聞きたかった。
「魔封金の加工には、黒石の炎を使うんだよ」
「黒石?」
「私がそう呼んでいるだけだね。この町に流れている川の上流にある山でとれる黒い石が、火をつけると高熱で燃えるんだ。それを使って加工するんだよ」
「なるほど……」
最近若干あいまいになりつつある前世知識をもとに考えると、石炭か何かだろうか。
ひとまずかき集めて実験してみないといけなさそうだ。
「魔封金の鉱石もこのあたりの山で取れるからね。材料集めには困らないだろう」
「そうですね。早速行きましょう」
「そういうところは母親似だね。仰せのままに」
飛び出していくボクに、苦笑しながらマッキナさんがついてくる。
また一つ、イチルの町に新しい産業が出来そうであった。
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