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第二章 東方大陸と無能姫
5 イチルの町の殖産興業
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イチルの町は非常に小さな町である。
三方が山に囲われていて、平地が狭く農業できる余地がそう大きくない。
そのため産業が少なく、人が増やせないのだ。
町の真ん中に大きな川が流れているが、上流をさかのぼっても山脈にぶち当たるだけであり、のんびりと隠遁するにはいい場所だが、本当に何もない場所であった。
村人の大半は漁業に従事し、近くの町であるビュサンから魚を売って生活していた。
だが、この町に発展余地がないわけではない。
目を付けた一つ目は木材と木工である。
山があり、川があるのだから木材を運ぶのはそう難しくない。
さらに川の水量が多く、農業もほとんどされていないので水資源にも非常に余裕がある。
だから、水車による木材加工もできるだろうと踏んでいた。
水車による製材はラッザロ先生が図面を作っていたのを持っている。
だが、頭にあるのは知識だけであり、実際に作ることは難しい。
町にいた大工のおじいちゃんに図面を見せて、試作をしてみたが全くうまくいかなかった。
形はできるのだが、水車の設置が出来ないのだ。
試しに作った水車がどんぶらこと流されて、大工のおじいちゃんと二人悲しみに包まれながら見送ってそのことに気づいた。
水車を設置するには水車職人を呼ぶ必要がある。
幸いビュザンは大陸随一の大都市だ。職人はいるだろう。
あとは費用だが…… へそくりを使うとしよう。
町自体そんなに豊かではなく、職人のような専門家を呼ぶ余裕はない。
母に言えばもしかしたらどうにか工面するかもしれないが、これはボクの方でやりたいなと子供ながらに思っていたからこそ、自分の資産を使うのだ。
その財源は本だった。
先生からもらったり、王国で誕生日に手に入れたりしていた本をこちらにも多少持ってきていた。
一番は百科事典であり、これをコツコツ写本しては売っていた。
こういったものは貴族が家宝として買うこともあるものだから非常に高く売れていた。
最近は渋るベルや町一番の秀才のセリムもこき使って、生産量が倍増していたため、それなりの金額がたまっていた。
これを職人を呼ぶのに使うのだ。
ということで、一路ビュザンへと向かうのだった。
「で、なんでついてくるのさ」
「さすがに一人で行かせるわけにいかんだろう」
「お前さんは、突拍子もないことしでかすからな」
右にベルトルド、左にイスハクという完全に守られる形でビュザンへ行くことになった。
普段なら母が村の人とともに行くので、ボクが行くのはかなり珍しい。
それを二人は心配したのだろう。
ちなみに二人とも顔がよく、さらに体格も非常にいいので、間にいるボクへの圧がすごい。
そのうちボクは二人の間の圧で白餅になってしまうのではないか。
そんな危惧を抱きながら街を歩くのであった。
三方が山に囲われていて、平地が狭く農業できる余地がそう大きくない。
そのため産業が少なく、人が増やせないのだ。
町の真ん中に大きな川が流れているが、上流をさかのぼっても山脈にぶち当たるだけであり、のんびりと隠遁するにはいい場所だが、本当に何もない場所であった。
村人の大半は漁業に従事し、近くの町であるビュサンから魚を売って生活していた。
だが、この町に発展余地がないわけではない。
目を付けた一つ目は木材と木工である。
山があり、川があるのだから木材を運ぶのはそう難しくない。
さらに川の水量が多く、農業もほとんどされていないので水資源にも非常に余裕がある。
だから、水車による木材加工もできるだろうと踏んでいた。
水車による製材はラッザロ先生が図面を作っていたのを持っている。
だが、頭にあるのは知識だけであり、実際に作ることは難しい。
町にいた大工のおじいちゃんに図面を見せて、試作をしてみたが全くうまくいかなかった。
形はできるのだが、水車の設置が出来ないのだ。
試しに作った水車がどんぶらこと流されて、大工のおじいちゃんと二人悲しみに包まれながら見送ってそのことに気づいた。
水車を設置するには水車職人を呼ぶ必要がある。
幸いビュザンは大陸随一の大都市だ。職人はいるだろう。
あとは費用だが…… へそくりを使うとしよう。
町自体そんなに豊かではなく、職人のような専門家を呼ぶ余裕はない。
母に言えばもしかしたらどうにか工面するかもしれないが、これはボクの方でやりたいなと子供ながらに思っていたからこそ、自分の資産を使うのだ。
その財源は本だった。
先生からもらったり、王国で誕生日に手に入れたりしていた本をこちらにも多少持ってきていた。
一番は百科事典であり、これをコツコツ写本しては売っていた。
こういったものは貴族が家宝として買うこともあるものだから非常に高く売れていた。
最近は渋るベルや町一番の秀才のセリムもこき使って、生産量が倍増していたため、それなりの金額がたまっていた。
これを職人を呼ぶのに使うのだ。
ということで、一路ビュザンへと向かうのだった。
「で、なんでついてくるのさ」
「さすがに一人で行かせるわけにいかんだろう」
「お前さんは、突拍子もないことしでかすからな」
右にベルトルド、左にイスハクという完全に守られる形でビュザンへ行くことになった。
普段なら母が村の人とともに行くので、ボクが行くのはかなり珍しい。
それを二人は心配したのだろう。
ちなみに二人とも顔がよく、さらに体格も非常にいいので、間にいるボクへの圧がすごい。
そのうちボクは二人の間の圧で白餅になってしまうのではないか。
そんな危惧を抱きながら街を歩くのであった。
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