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第二章 東方大陸と無能姫
3 宴の中で
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イスハクは困惑していた。
アデライトという娘についてだ。
父親であるアデルが長年代官を務めていたイチルに領主が来ると聞いたのはほんの数週間前であった。
異国の親子が来ると聞いて、どんな奴が来るのかと思っていたのだが、来たのは予想以上にとんでもない奴だった。
最初に見たときは、本当にお姫様みたいだな、と思った。
服は丈夫そうな旅装であったが、その真っ白な肌と髪はおとぎ話のお姫様にしか見えなかった。
小さくて可愛らしい、イスハクも第一印象はそう思った。
しかし中身は全くおとぎ話のお姫様とは違った。
いきなり突っ込んできたあいつは、イスハクを投げ飛ばした。
子供はもちろん、一部の大人よりも力が強いイスハクをコテンパンに叩きのめし、ほかの連中もみな投げ飛ばして笑うアデライトは、荒ぶるドラゴンか何かにしか思えなかった。
しかしそれだけではなかった。
アデライトは博識で、遊びをいくつも知っていた。
スモウと呼ばれた遊びを子供たちに押したアデライトは、アデライトに勝つべく練習を始めた子供たちをしり目に、おとなしい子たちを集めて、花冠を作りはじめた。
器用に草花を編みこんでいく姿はとても可愛らしく、やはりお姫様の様だった。
全く意味が分からない。
出来上がった花冠を楽しそうにイスハクに被せるアデライトを見てイスハクはそう感じた。
そうして夜になり、領主親子を歓迎する宴会が始まった。
領主様であるアルテミア様は、笑顔を浮かべ皆に酌を始めた。その笑顔はとてもきれいで、しかしアデライトが何か企んでいるところとそっくりで背筋が少し寒くなった。
そうしてアデライトは楽器を持ち出し曲を流し始めた。
宴会となると歌を歌うことも多いが、楽器など使える人はいない。
綺麗な旋律があたりに響き始めた。
昔見たことがある吟遊詩人の様だ。
そうして意味の分からない歌を歌い始めた。
聞いたこともない言葉があたりに響き、皆それに聞き入ってしまう。
その姿を見て、イスハクは船を海底に誘う麗しき妖魔の伝説が頭によぎる。
神秘的と言えるそれをみて、背筋がさらに寒くなった。
アデライトはとても不思議な娘だ。
海のように恵みをもたらし、表情が変わり、そして力強く、怖い。
面白い娘だと思うが、領主の娘であり、自分たち庶民と別に生きる人間だ。
付き合いもそうないだろうと思っていたイスハクだったが、結局彼の運命は彼女にとらわれ、何十年もの付き合いになるのを、イスハクはまだ知らない。
アデライトという娘についてだ。
父親であるアデルが長年代官を務めていたイチルに領主が来ると聞いたのはほんの数週間前であった。
異国の親子が来ると聞いて、どんな奴が来るのかと思っていたのだが、来たのは予想以上にとんでもない奴だった。
最初に見たときは、本当にお姫様みたいだな、と思った。
服は丈夫そうな旅装であったが、その真っ白な肌と髪はおとぎ話のお姫様にしか見えなかった。
小さくて可愛らしい、イスハクも第一印象はそう思った。
しかし中身は全くおとぎ話のお姫様とは違った。
いきなり突っ込んできたあいつは、イスハクを投げ飛ばした。
子供はもちろん、一部の大人よりも力が強いイスハクをコテンパンに叩きのめし、ほかの連中もみな投げ飛ばして笑うアデライトは、荒ぶるドラゴンか何かにしか思えなかった。
しかしそれだけではなかった。
アデライトは博識で、遊びをいくつも知っていた。
スモウと呼ばれた遊びを子供たちに押したアデライトは、アデライトに勝つべく練習を始めた子供たちをしり目に、おとなしい子たちを集めて、花冠を作りはじめた。
器用に草花を編みこんでいく姿はとても可愛らしく、やはりお姫様の様だった。
全く意味が分からない。
出来上がった花冠を楽しそうにイスハクに被せるアデライトを見てイスハクはそう感じた。
そうして夜になり、領主親子を歓迎する宴会が始まった。
領主様であるアルテミア様は、笑顔を浮かべ皆に酌を始めた。その笑顔はとてもきれいで、しかしアデライトが何か企んでいるところとそっくりで背筋が少し寒くなった。
そうしてアデライトは楽器を持ち出し曲を流し始めた。
宴会となると歌を歌うことも多いが、楽器など使える人はいない。
綺麗な旋律があたりに響き始めた。
昔見たことがある吟遊詩人の様だ。
そうして意味の分からない歌を歌い始めた。
聞いたこともない言葉があたりに響き、皆それに聞き入ってしまう。
その姿を見て、イスハクは船を海底に誘う麗しき妖魔の伝説が頭によぎる。
神秘的と言えるそれをみて、背筋がさらに寒くなった。
アデライトはとても不思議な娘だ。
海のように恵みをもたらし、表情が変わり、そして力強く、怖い。
面白い娘だと思うが、領主の娘であり、自分たち庶民と別に生きる人間だ。
付き合いもそうないだろうと思っていたイスハクだったが、結局彼の運命は彼女にとらわれ、何十年もの付き合いになるのを、イスハクはまだ知らない。
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