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第一章 神童と呼ばれた第一王女 

10 暗殺

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ラッザロ先生も母も、部屋を出ていく。
名残惜しいが、おそらく手続きや折衝がいろいろあるのだろう。
鍵を閉め、部屋の中の金目のものをかき集めていく。
明後日には出発といっていた。目立たないように朝早く、日の出前には王とを抜ける予定であるらしい。
とすると準備に使える時間はほとんどない。

東方大陸で何があるかも全く分からない中、必要そうなもの、そして換金できそうなものを片っ端からかき集めていく。
かといってそう多くの荷物を持っていくことも物理的に難しいだろう。
こちらはなんせ、生まれてこの方王宮からもほとんど出たことのない箱入り娘だ。長距離の移動なんて身一つでも難しそうなぐらいなのだから、荷物は厳選する必要があった。

鎧はこのまま着ていこう。場合によってはきれいだし売れるだろう。
あとは魔封剣も持っていく。趣味程度の価値しかないかと思っていたが、無魔力のボクには心強い武器である。
既に夜も更けた、それでも用意するボクの耳に、カチャリ、といういやな音が聞こえた。
静寂な中、扉の鍵が開いた音だ。
慌てて明かりを消すと、扉から死角になる場所へとボクは隠れた。



二人組が静かに部屋に入ってくる。
部屋の中は真っ暗であり、二人の顔はわからない。
そのまま二人はベッドへ近づき、ベッドに何かを突き立てた。
シルエットから言っておそらく剣だろう。何度も何度も突き刺していく。

暗殺者だ、ということは理解した。
まだボクがベッドにいないことは気づいていないようだ。月もない新月の夜だったことが幸いした。
しかし、そのうち気づいてしまうだろう。
熱心にベッドに剣を突き刺す二人の後ろに忍び足で回り込む。
そうしてそのままボクは、魔封剣を一人の背中につきこんだ。

少しの抵抗ののち、剣はあっけなく相手の体に飲み込まれる。
あまり抵抗もなく、刃がその人物の体に飲み込まれた。

「うっ」

そうしてそのままその人物はベッドに倒れこんだ。
もう一人は、異変に気付いたようだが何が起きているかわからず、倒れこんだ者を見て呆然としているようだ。
そのまま剣を引き抜いたボクはそのわき腹に剣を差し込んだ。
ぬるり、とした感触とともに、もう一人もベッドに倒れこんだ。



死んだのか、重傷で動けないのかそこまではボクもわからなかった。ただ、二人の剣はその手から離れ、二人は倒れ伏している。
ボクはそのまま一人ずつ引きずって、窓から投げ捨てた。
三階の高さから落ちて生きているかはわからない。しかし気にすることでもなかった。
その後、ボクはドアと窓を家具で閉鎖し、震えながら一晩を過ごすことになるのであった。
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