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第一章 神童と呼ばれた第一王女
8 継承の儀
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継承の儀は王宮の大聖堂で行われる。
王宮の敷地に内にあるこの大聖堂は、普段は関係者以外はいることができない建物であり、しかし非常に立派なものである。
1000人も入れそうなほど広い空間。
壁や柱には様々な彫刻がなされ、窓はすべてステンドグラスであり、神話の様々な場面が描かれている。
その最奥に安置されているのが、ロンバルディア王国の国宝である竜神剣である。
始祖竜の骨から削り出されたといわれるその剣は、純白に美しく輝き、最初に見たときには彫刻か飾りだと思ったほどであった。
七歳になった二日後。ボクはそんな場所で継承の儀に挑むことになった。
当日、そんな広い大聖堂の中にたくさんの人が集まっていた。
入りきらずに外にまで人が集まっている。
ボクは、父からもらった白いドレスにも見まごう鎧を着て、それをバルコニー越しに眺めていた。
「いっぱい人がいるね」
「そうだね」
両親も周りの人もすべて儀式に行ってしまった。
ボクは最後の場面で剣を握り、魔力を流して剣を光らせる、ただそれだけが今日の仕事であり、今はえらい人たちがいろいろな演説をしたり、説教をしたりしているらしい。
なのでここにいるのはラッザロ先生だけである。
この人もえらい人なはずなのだが、基本縛られない自由人なので、何を考えているのかは知らないが、朝からボクと一緒にいる。
「なあ、しろいの」
「なに?」
「困ったら俺に言えよ」
「なにそれ。悪いモノでも食べた?」
いつも楽しそうなラッザロ先生が今日は元気がない気がする。
こちらは晴れ舞台なのだからもうちょっと楽しそうにしてほしい気もするが、何が気になるのだろう。
「いや、杞憂ならいいんだ」
「ん、そろそろ時間だから行くね」
「行ってらっしゃい」
侍女がボクを呼びに来た。
ボクはラッザロ先生を置いて会場へと向かうのであった。
大聖堂の中央に敷かれた赤じゅうたんの上を歩いていく。
両脇には多くの人だかりがあり、みなボクを見ている。
まっすぐ行くと、剣が刺さった台座があり、その両脇には両親と大司教様が待っていた。
まず、父が剣を抜き、高く掲げる。
赤い光が剣から発せられた。父の魔力属性は火らしく、それで赤く輝いていた。
光も非常に強く、魔力が高いことが容易に察せられるものだ。
観衆もそれを見て、感嘆の声を上げている。自分たちのトップである王の強さに安心と感嘆をしているのだろう。
そのまま父は剣を台座に戻した。
今度はボクが、同じことをしなければならない。
剣を手に持ち、引き抜く。外見は真っ白であり、かなり大きな大剣なのだが、重くはなく簡単に抜けた。
そうしてそのまま、剣を高く掲げる。
剣を光らせるのに、特に何かする必要はない。剣は自動的に持ち主の魔力を吸収し、輝くのだから、掲げるだけでいいのだ。
そう、掲げるだけで十分だったはずなのだ……
光らない。
かけらも光らない。
一体どういうことか。
聴衆は怪訝な顔をしている。
父と大司教様は非常に焦った表情をしていた。
そうして母は……
「アデライドの体調が悪いようです。今日はこのあたりで」
ボクを抱きしめ、剣を戻させると抱えたまま大聖堂から立ち去った。
母はラッザロ先生の弟子の中でも一二を争うほど巧みな魔法使いだったという。
母は気づいたのだろう。ボクに魔力がないことに。
そうして聴衆も父もすぐにそれに気づくだろう。
今までの優しい日常が崩れ、描いていた未来図も壊れるのを、ボクははっきりと感じていた。
王宮の敷地に内にあるこの大聖堂は、普段は関係者以外はいることができない建物であり、しかし非常に立派なものである。
1000人も入れそうなほど広い空間。
壁や柱には様々な彫刻がなされ、窓はすべてステンドグラスであり、神話の様々な場面が描かれている。
その最奥に安置されているのが、ロンバルディア王国の国宝である竜神剣である。
始祖竜の骨から削り出されたといわれるその剣は、純白に美しく輝き、最初に見たときには彫刻か飾りだと思ったほどであった。
七歳になった二日後。ボクはそんな場所で継承の儀に挑むことになった。
当日、そんな広い大聖堂の中にたくさんの人が集まっていた。
入りきらずに外にまで人が集まっている。
ボクは、父からもらった白いドレスにも見まごう鎧を着て、それをバルコニー越しに眺めていた。
「いっぱい人がいるね」
「そうだね」
両親も周りの人もすべて儀式に行ってしまった。
ボクは最後の場面で剣を握り、魔力を流して剣を光らせる、ただそれだけが今日の仕事であり、今はえらい人たちがいろいろな演説をしたり、説教をしたりしているらしい。
なのでここにいるのはラッザロ先生だけである。
この人もえらい人なはずなのだが、基本縛られない自由人なので、何を考えているのかは知らないが、朝からボクと一緒にいる。
「なあ、しろいの」
「なに?」
「困ったら俺に言えよ」
「なにそれ。悪いモノでも食べた?」
いつも楽しそうなラッザロ先生が今日は元気がない気がする。
こちらは晴れ舞台なのだからもうちょっと楽しそうにしてほしい気もするが、何が気になるのだろう。
「いや、杞憂ならいいんだ」
「ん、そろそろ時間だから行くね」
「行ってらっしゃい」
侍女がボクを呼びに来た。
ボクはラッザロ先生を置いて会場へと向かうのであった。
大聖堂の中央に敷かれた赤じゅうたんの上を歩いていく。
両脇には多くの人だかりがあり、みなボクを見ている。
まっすぐ行くと、剣が刺さった台座があり、その両脇には両親と大司教様が待っていた。
まず、父が剣を抜き、高く掲げる。
赤い光が剣から発せられた。父の魔力属性は火らしく、それで赤く輝いていた。
光も非常に強く、魔力が高いことが容易に察せられるものだ。
観衆もそれを見て、感嘆の声を上げている。自分たちのトップである王の強さに安心と感嘆をしているのだろう。
そのまま父は剣を台座に戻した。
今度はボクが、同じことをしなければならない。
剣を手に持ち、引き抜く。外見は真っ白であり、かなり大きな大剣なのだが、重くはなく簡単に抜けた。
そうしてそのまま、剣を高く掲げる。
剣を光らせるのに、特に何かする必要はない。剣は自動的に持ち主の魔力を吸収し、輝くのだから、掲げるだけでいいのだ。
そう、掲げるだけで十分だったはずなのだ……
光らない。
かけらも光らない。
一体どういうことか。
聴衆は怪訝な顔をしている。
父と大司教様は非常に焦った表情をしていた。
そうして母は……
「アデライドの体調が悪いようです。今日はこのあたりで」
ボクを抱きしめ、剣を戻させると抱えたまま大聖堂から立ち去った。
母はラッザロ先生の弟子の中でも一二を争うほど巧みな魔法使いだったという。
母は気づいたのだろう。ボクに魔力がないことに。
そうして聴衆も父もすぐにそれに気づくだろう。
今までの優しい日常が崩れ、描いていた未来図も壊れるのを、ボクははっきりと感じていた。
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