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第一章 神童と呼ばれた第一王女 

6 「王妃」アルテミア

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母であり王妃であるアルテミア・ロンバルディアはとても忙しい人だ。
まず王妃としての仕事がある。奥の管理だ。
王宮というのは、王の仕事をする場所と、王の私生活の場所が存在する。奥とは、王の私生活の場所である。
王の仕事をする場所は、官僚や貴族がすべてを行うが、奥については王妃が責任者である。
その手配というのを母がしており、それだけでもそれなりに忙しそうである。

さらに、母は既に3人の子持ちだ。長女であるボクが4歳の時に弟を、6歳の時に妹を産んでいる。
見た目は非常に細く小柄で繊細な母が、よくポンポンと子を産めるものだと思う。
その儚げな外見から、妖精妃なんて言う異名を持っている母だが、ラッザロ先生曰くベルタ以上に脳筋バーサーカーで見た目詐欺な頑丈さだから大丈夫だという。
そういった母の面を見たことないのだが、先生が言うならそうなのであろう。
なんにしろ、そういった子供の世話もあり、本当に忙しそうだった。
最近はボクはかなり放置気味であり、ベルトルドと遊びながら、ラッザロ先生にいろいろ教えてもらっている感じである。

とはいえ愛がないわけではないだろう。
記憶する限り、母は必ず1日に1回はボクの顔を見に来る。
朝だったり夜だったり、時間も場所もばらばらだが、絶対に会いに来るのだから相当である。
忙しいだろうにとは思うが、そうやって会いに来てくれるとうれしいので我ながら単純である。

「七歳の時の誕生日プレゼントは何がいいかしら、アデライド」

ボクを膝に乗せ、母はボクの髪をいじくりまわしている。
どうやら髪を結っているらしい。
母は、今日はそれなりに余裕があるらしく、ボクと一緒にお茶を楽しんでいた。
母もベルタもよくボクを膝に乗せる。そろそろ7歳も近いのだが、身長が全然伸びないボクはちっこいままだ。
こうやって膝にのせて皆かわいがるのをなかなか卒業できない。

「うーん、本は先生がくれるらしいし、剣が欲しいかな。正式なの」
「我が子ながら色気がないわねぇ。ドレスとか宝石とかねだってもいいのよ?」
「剣の方が欲しい。ベルに負けないぐらいの奴がいいな」

苦笑しながら母がボクのほっぺをムニムニと揉む。
先日7歳になったベルは、7歳の祝いとして槍を両親からもらっていた。
魔道具でもあるそれは武で知られるドーリア伯からのプレゼントにふさわしい立派なものだった。
訓練用の剣をブンブン振り回してる身としては非常に羨ましかった。

7歳というのは、この国では非常に重要視される年だ。
7歳になると魔力を測定し、その大体の量と属性を調べるのだ。
7歳を超えると一つの節目になるのもあり、大々的に祝われるのである。

剣をねだるなんて子供らしくないだろうが、それでもほしかった。

「仕方ないわね。すごいの準備してあげるから、期待していなさい」

母はほほ笑む。
優しくなでる母の手は暖かく、とても安心できるものだった。


ボクが7歳になるまであと2か月。
この時はまだ、ボクは自分の運命を疑う事すらなかったのであった。
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