4 / 57
第一章 神童と呼ばれた第一王女
4 「万能」ラッザロ先生
しおりを挟む
「楽しいかい? 王女様」
「ひゃへっ!?」
誰もいないと思っていた閲覧室で、いきなり声を掛けられて驚いて変な声を上げてしまった。
顔を上げるとそこには初老、ぐらいの男性がいた。
見たことのない顔である。
王城にいる銀髪の幼い子供という事で、ボクが王女だと判断したのだろう。
どうするか悩んでいると、そのおじさんはボクの頭を撫でてきた。
非常に優しい手つきである。とても撫でなれている。
撫でるのがうまい人は良い人というマイルールに従い、おじさんを良い人認定した。
「驚かせてしまったね。私はラッザロ。しがない学者さ。王女様がそれを一生懸命読んでいるから気になってね」
「ラッザロ? こにょ人?」
それこそ今読んでいた百科事典の巻頭文を書いていた編者の名前がラッザロだった。
そこのサインを指さして尋ねると、ラッザロはうなずいた。
「そうだよ。3年ぐらい前に完成したんだが、それを熱心に読んでくれている王女様を見たら思わず声をかけてしまってね」
「ほへー、ラッザロしぇんしぇーはしゅごいんらねぇ」
多種多様な知識を詰め込む百科事典を作るには、それこそ多種多様な知識が必要なはずだ。
それに複数の専門家の協力だって得たはずで、そういった交渉力にも長けているだろう。
本人はしがない、なんて謙遜してたがよほど偉い学者先生だろうとは容易に想像できた。
王城に入れるぐらいだし、よほど優秀なのだろう。先生と呼ぶことを決めた。
「なんだか王女様にまで先生と呼ばれるとこそばゆいね。で、なにか聞きたいことはあるかな、王女様?」
「えっとー」
聞きたいことなら山ほどある。そもそも語彙が足りてないから意味不明な単語がいくつかあるのだが、えらいだろう先生にそれを聞くのは少し恥ずかしい。かっこつけたいお年頃なのだ。
なので一つの挿絵を指さした。
ドラゴンと呼ばれる生き物の項目だ。
前世の世界ではフィクションの生き物だったが、こちらでは実際にいる生き物らしい。
しかしその数は極めて少ないらしく、目撃情報も非常に少ないのだとか。
それで一つ疑問が生じた。前世知識だが、種族には最小存続可能個体数というものがある。
持続的に種族が生きていくにはある程度の数が必要だ。そうしないとそもそも子供が作れないし、天災等が起きたらすぐに全滅してしまう。
記載されているドラゴンは本当に希少なようだが、これはいったいどうなっているのか、どうせだから聞いてみることにした。
手ぶりも交えて拙い発音で必死に伝える。ラッザロ先生も真剣に聞いてくれている。
「ふむ…… 考えたこともなかったな。興味深い話だね、王女様」
「ふしぎにゃの」
「明後日またここに来るから、それまでに調べておこう。楽しみにしておいてくれ」
「わかった~」
ラッザロ先生はそのままぶつぶつといいながら部屋を出て行ってしまった。
満足してくれたなら幸いである。
そのままボクは百科事典を戻して(といっても棚にまで持ち上げられなかったのでメイドさんがやってくれた)、もう少しだけどんな本があるか見てから帰ることにした。
後日、先生と会ったら、いろいろ専門の人に聞いてきたらしく、多種多様な説を教えてもらった。
ちなみにそのあと、プレゼントとして国語辞典をくれた。どうやら語彙が足りていないのはバレていたらしい。
かっこつけたのに少し恥ずかしかった。
「ひゃへっ!?」
誰もいないと思っていた閲覧室で、いきなり声を掛けられて驚いて変な声を上げてしまった。
顔を上げるとそこには初老、ぐらいの男性がいた。
見たことのない顔である。
王城にいる銀髪の幼い子供という事で、ボクが王女だと判断したのだろう。
どうするか悩んでいると、そのおじさんはボクの頭を撫でてきた。
非常に優しい手つきである。とても撫でなれている。
撫でるのがうまい人は良い人というマイルールに従い、おじさんを良い人認定した。
「驚かせてしまったね。私はラッザロ。しがない学者さ。王女様がそれを一生懸命読んでいるから気になってね」
「ラッザロ? こにょ人?」
それこそ今読んでいた百科事典の巻頭文を書いていた編者の名前がラッザロだった。
そこのサインを指さして尋ねると、ラッザロはうなずいた。
「そうだよ。3年ぐらい前に完成したんだが、それを熱心に読んでくれている王女様を見たら思わず声をかけてしまってね」
「ほへー、ラッザロしぇんしぇーはしゅごいんらねぇ」
多種多様な知識を詰め込む百科事典を作るには、それこそ多種多様な知識が必要なはずだ。
それに複数の専門家の協力だって得たはずで、そういった交渉力にも長けているだろう。
本人はしがない、なんて謙遜してたがよほど偉い学者先生だろうとは容易に想像できた。
王城に入れるぐらいだし、よほど優秀なのだろう。先生と呼ぶことを決めた。
「なんだか王女様にまで先生と呼ばれるとこそばゆいね。で、なにか聞きたいことはあるかな、王女様?」
「えっとー」
聞きたいことなら山ほどある。そもそも語彙が足りてないから意味不明な単語がいくつかあるのだが、えらいだろう先生にそれを聞くのは少し恥ずかしい。かっこつけたいお年頃なのだ。
なので一つの挿絵を指さした。
ドラゴンと呼ばれる生き物の項目だ。
前世の世界ではフィクションの生き物だったが、こちらでは実際にいる生き物らしい。
しかしその数は極めて少ないらしく、目撃情報も非常に少ないのだとか。
それで一つ疑問が生じた。前世知識だが、種族には最小存続可能個体数というものがある。
持続的に種族が生きていくにはある程度の数が必要だ。そうしないとそもそも子供が作れないし、天災等が起きたらすぐに全滅してしまう。
記載されているドラゴンは本当に希少なようだが、これはいったいどうなっているのか、どうせだから聞いてみることにした。
手ぶりも交えて拙い発音で必死に伝える。ラッザロ先生も真剣に聞いてくれている。
「ふむ…… 考えたこともなかったな。興味深い話だね、王女様」
「ふしぎにゃの」
「明後日またここに来るから、それまでに調べておこう。楽しみにしておいてくれ」
「わかった~」
ラッザロ先生はそのままぶつぶつといいながら部屋を出て行ってしまった。
満足してくれたなら幸いである。
そのままボクは百科事典を戻して(といっても棚にまで持ち上げられなかったのでメイドさんがやってくれた)、もう少しだけどんな本があるか見てから帰ることにした。
後日、先生と会ったら、いろいろ専門の人に聞いてきたらしく、多種多様な説を教えてもらった。
ちなみにそのあと、プレゼントとして国語辞典をくれた。どうやら語彙が足りていないのはバレていたらしい。
かっこつけたのに少し恥ずかしかった。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる