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第一章 神童と呼ばれた第一王女 

4 「万能」ラッザロ先生

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「楽しいかい? 王女様」
「ひゃへっ!?」

誰もいないと思っていた閲覧室で、いきなり声を掛けられて驚いて変な声を上げてしまった。
顔を上げるとそこには初老、ぐらいの男性がいた。
見たことのない顔である。
王城にいる銀髪の幼い子供という事で、ボクが王女だと判断したのだろう。
どうするか悩んでいると、そのおじさんはボクの頭を撫でてきた。
非常に優しい手つきである。とても撫でなれている。
撫でるのがうまい人は良い人というマイルールに従い、おじさんを良い人認定した。

「驚かせてしまったね。私はラッザロ。しがない学者さ。王女様がそれを一生懸命読んでいるから気になってね」
「ラッザロ? こにょ人?」

それこそ今読んでいた百科事典の巻頭文を書いていた編者の名前がラッザロだった。
そこのサインを指さして尋ねると、ラッザロはうなずいた。

「そうだよ。3年ぐらい前に完成したんだが、それを熱心に読んでくれている王女様を見たら思わず声をかけてしまってね」
「ほへー、ラッザロしぇんしぇーはしゅごいんらねぇ」

多種多様な知識を詰め込む百科事典を作るには、それこそ多種多様な知識が必要なはずだ。
それに複数の専門家の協力だって得たはずで、そういった交渉力にも長けているだろう。
本人はしがない、なんて謙遜してたがよほど偉い学者先生だろうとは容易に想像できた。
王城に入れるぐらいだし、よほど優秀なのだろう。先生と呼ぶことを決めた。

「なんだか王女様にまで先生と呼ばれるとこそばゆいね。で、なにか聞きたいことはあるかな、王女様?」
「えっとー」

聞きたいことなら山ほどある。そもそも語彙が足りてないから意味不明な単語がいくつかあるのだが、えらいだろう先生にそれを聞くのは少し恥ずかしい。かっこつけたいお年頃なのだ。
なので一つの挿絵を指さした。
ドラゴンと呼ばれる生き物の項目だ。
前世の世界ではフィクションの生き物だったが、こちらでは実際にいる生き物らしい。
しかしその数は極めて少ないらしく、目撃情報も非常に少ないのだとか。
それで一つ疑問が生じた。前世知識だが、種族には最小存続可能個体数というものがある。
持続的に種族が生きていくにはある程度の数が必要だ。そうしないとそもそも子供が作れないし、天災等が起きたらすぐに全滅してしまう。
記載されているドラゴンは本当に希少なようだが、これはいったいどうなっているのか、どうせだから聞いてみることにした。
手ぶりも交えて拙い発音で必死に伝える。ラッザロ先生も真剣に聞いてくれている。

「ふむ…… 考えたこともなかったな。興味深い話だね、王女様」
「ふしぎにゃの」
「明後日またここに来るから、それまでに調べておこう。楽しみにしておいてくれ」
「わかった~」

ラッザロ先生はそのままぶつぶつといいながら部屋を出て行ってしまった。
満足してくれたなら幸いである。
そのままボクは百科事典を戻して(といっても棚にまで持ち上げられなかったのでメイドさんがやってくれた)、もう少しだけどんな本があるか見てから帰ることにした。

後日、先生と会ったら、いろいろ専門の人に聞いてきたらしく、多種多様な説を教えてもらった。
ちなみにそのあと、プレゼントとして国語辞典をくれた。どうやら語彙が足りていないのはバレていたらしい。
かっこつけたのに少し恥ずかしかった。
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