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5 その後の話
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という事で姉は無事卒業した。
姉の婚約も、私の婚約もすべて破棄されてなくなり、あの王太子とその取り巻きは嫡子であることをいったん取り消されたうえで再教育となった。
学園卒業までは未成年であるのが建前である以上、数々のやらかしは若気の至りという事で処理するらしい。
もっともどいつもこいつも出来が悪く、再教育した程度で今までの不足を補うのは難しいだろう。
これ以降、彼らの行方についてはそれぞれ直後から数年以内に亡くなったという話以外聞かなかった。
病死したのか、世を儚んで自分から命を絶ったか、病死と称して殺されたか、それはよくわからない。
家のほうもただでは済まなかった。まああんな子を育てる各家も問題が大きいと判断されて当然だろう。
王家は事件の2年後、王太子の妹が成人してすぐのタイミングで現国王の隠居し、彼女が女王へと就いた。
私と同年代で親友だった彼女はぶつくさ言いながら国王業を頑張っている。
これが一番影響が少ないところだ。
私と婚約していたクロード伯のところなんか私への慰謝料やらほかの人への損害賠償やらでつぶれてしまった。
二転三転しつつ、クロード伯領は慰謝料として私が預かることになったので、私が現クロード伯である。
奢侈に耽り重税を課していて領地経営は思わしくなかった前クロード伯とその家族は、一応形式的には流行り病で全滅したことになっているが、その実は領民に殺されたという話を聞く。
レンブラン公のところは子が嫡男だった彼以外おらず、その彼も卒業式後すぐに亡くなったと聞いている。
跡継ぎがいなくなったレンブラン公は公職をすべてやめ、領地に引きこもっているらしい。
彼が亡くなればレンブラン公家も断絶である。
大将軍のところはこの後すぐに職を辞し、子供共々一兵卒として頑張っていた。
もともとたたき上げだった大将軍は一兵卒になっても楽しそうに働いていたらしいが、遅くできて、えらくなってからの父親しか知らなかった息子は耐えられなかったらしい。
最終的に親子で刃傷沙汰となり、その後息子が病気で亡くなったという話を聞いている。
王国一の商家は、この後貴族たちが一斉に手を引いて不買状態になった。
当たり前だ。未遂とはいえ強姦魔の家からものを買いたい女性はいなかった。
すぐに破産し、一家は離散してその後は知れないという。
王立学園も大改革が行われた。
今回の騒動の責任を取らされ、学園長を筆頭に三分の一が奴隷身分へと落とされ鉱山労働に従事することになった。
元王太子が述べた異端なことについてはついにどこからそんな知識を仕入れたか不明であり、学園教師が教えたのだろうとされて責任を取る形になったのだ。異端騒ぎだから教会もかかわる大騒動になり、最終的には直接的な関係者はすべて奴隷に落とされ地の底から出られない処分となった。
薄暗い穴の底で必死に働きながら、彼らはどうにか命を繋いでいるのだろう。
三分の一は懲戒免職されて路頭に迷う事となった。
前王太子には直接かかわっていなくとも主に私に対する仕事や責任の押し付けを見逃していた連中だ。
職務を果たしていないという事で仕事が亡くなり路頭に迷うことになる。
果たして再就職の口もどこまであるか疑問であるが。
そうして残された三分の一にどうにか補充をした人員で次年度の王立学園は運営された。
残ったのは大体は人がいい学者肌の先生ばかりである。
規模も授業数も減らされたが、質は上がったように思う。
当家の方にも影響があった。
次期当主は私から姉に移った。私は私で伯領をもらったのでそれ自体は困らないが、姉妹そろって婿の貰い手がいなくなってしまった。
まあ当たり前である。そう多くはない同年代の高位貴族とその関係する男性5人がいなくなり空いた穴は大きいのだ。
まともな男性たちは既に婚約や結婚をしているし、寄ってくるのは地位狙いでしかもろくでもない相手ばかりだった。
父は娘世代をどうするかすでに興味がないらしく、好きにすればいいというだけで何も干渉してこない。
「という事でどうしましょう、姉さま」
「アンジェとシロとクロがいれば十分」
「いや十分じゃないです」
「十分です」
姉はこんな感じだ。
黒猫のクロ(相変わらず安直なネーミングセンスだ)を拾ってきて、猫が増えて幸せそうな姉である。
避妊もしないのだから、この後何回か産んで最終的には10匹近い大家族になってしまうが、まあ私も猫好きだしそれはそれでおいておこう。
猫は良いのだ。
人間の方が問題なのだ。
「私はアンジェを世界で一番愛してるよ」
「姉さま?」
「アンジェも私を一番愛してるのはわかってるよ」
「姉さま、その話、どこに落とそうとしてます?」
「愛する二人はずっと一緒にいるべきだよね?」
「言いたいことはわかりましたが、子供どうするんです?」
つまり、姉は私と一緒に生涯を共にしたいのだろう。
私もまんざらでもないが、子供は欲しいかなと思っているので素直に頷けなかった。
「あと、姉妹で同性愛ってなかなかやばいですよね」
「愛の前には倫理など無力」
「無力にしないでください」
「性別の壁も無力。すべて破壊する」
「姉さま? ねえ、姉さま、本気ですか?」
「私は本気のことしか言わないよ」
「ですよねぇ……」
「まあお姉ちゃんに任せなさいって」
にっこりと笑いかけて姉は部屋から立ち去った。
「とっくに私はやられてますけどね」
私と姉の関係がどうなるか、はまだ誰も知らない。
姉の婚約も、私の婚約もすべて破棄されてなくなり、あの王太子とその取り巻きは嫡子であることをいったん取り消されたうえで再教育となった。
学園卒業までは未成年であるのが建前である以上、数々のやらかしは若気の至りという事で処理するらしい。
もっともどいつもこいつも出来が悪く、再教育した程度で今までの不足を補うのは難しいだろう。
これ以降、彼らの行方についてはそれぞれ直後から数年以内に亡くなったという話以外聞かなかった。
病死したのか、世を儚んで自分から命を絶ったか、病死と称して殺されたか、それはよくわからない。
家のほうもただでは済まなかった。まああんな子を育てる各家も問題が大きいと判断されて当然だろう。
王家は事件の2年後、王太子の妹が成人してすぐのタイミングで現国王の隠居し、彼女が女王へと就いた。
私と同年代で親友だった彼女はぶつくさ言いながら国王業を頑張っている。
これが一番影響が少ないところだ。
私と婚約していたクロード伯のところなんか私への慰謝料やらほかの人への損害賠償やらでつぶれてしまった。
二転三転しつつ、クロード伯領は慰謝料として私が預かることになったので、私が現クロード伯である。
奢侈に耽り重税を課していて領地経営は思わしくなかった前クロード伯とその家族は、一応形式的には流行り病で全滅したことになっているが、その実は領民に殺されたという話を聞く。
レンブラン公のところは子が嫡男だった彼以外おらず、その彼も卒業式後すぐに亡くなったと聞いている。
跡継ぎがいなくなったレンブラン公は公職をすべてやめ、領地に引きこもっているらしい。
彼が亡くなればレンブラン公家も断絶である。
大将軍のところはこの後すぐに職を辞し、子供共々一兵卒として頑張っていた。
もともとたたき上げだった大将軍は一兵卒になっても楽しそうに働いていたらしいが、遅くできて、えらくなってからの父親しか知らなかった息子は耐えられなかったらしい。
最終的に親子で刃傷沙汰となり、その後息子が病気で亡くなったという話を聞いている。
王国一の商家は、この後貴族たちが一斉に手を引いて不買状態になった。
当たり前だ。未遂とはいえ強姦魔の家からものを買いたい女性はいなかった。
すぐに破産し、一家は離散してその後は知れないという。
王立学園も大改革が行われた。
今回の騒動の責任を取らされ、学園長を筆頭に三分の一が奴隷身分へと落とされ鉱山労働に従事することになった。
元王太子が述べた異端なことについてはついにどこからそんな知識を仕入れたか不明であり、学園教師が教えたのだろうとされて責任を取る形になったのだ。異端騒ぎだから教会もかかわる大騒動になり、最終的には直接的な関係者はすべて奴隷に落とされ地の底から出られない処分となった。
薄暗い穴の底で必死に働きながら、彼らはどうにか命を繋いでいるのだろう。
三分の一は懲戒免職されて路頭に迷う事となった。
前王太子には直接かかわっていなくとも主に私に対する仕事や責任の押し付けを見逃していた連中だ。
職務を果たしていないという事で仕事が亡くなり路頭に迷うことになる。
果たして再就職の口もどこまであるか疑問であるが。
そうして残された三分の一にどうにか補充をした人員で次年度の王立学園は運営された。
残ったのは大体は人がいい学者肌の先生ばかりである。
規模も授業数も減らされたが、質は上がったように思う。
当家の方にも影響があった。
次期当主は私から姉に移った。私は私で伯領をもらったのでそれ自体は困らないが、姉妹そろって婿の貰い手がいなくなってしまった。
まあ当たり前である。そう多くはない同年代の高位貴族とその関係する男性5人がいなくなり空いた穴は大きいのだ。
まともな男性たちは既に婚約や結婚をしているし、寄ってくるのは地位狙いでしかもろくでもない相手ばかりだった。
父は娘世代をどうするかすでに興味がないらしく、好きにすればいいというだけで何も干渉してこない。
「という事でどうしましょう、姉さま」
「アンジェとシロとクロがいれば十分」
「いや十分じゃないです」
「十分です」
姉はこんな感じだ。
黒猫のクロ(相変わらず安直なネーミングセンスだ)を拾ってきて、猫が増えて幸せそうな姉である。
避妊もしないのだから、この後何回か産んで最終的には10匹近い大家族になってしまうが、まあ私も猫好きだしそれはそれでおいておこう。
猫は良いのだ。
人間の方が問題なのだ。
「私はアンジェを世界で一番愛してるよ」
「姉さま?」
「アンジェも私を一番愛してるのはわかってるよ」
「姉さま、その話、どこに落とそうとしてます?」
「愛する二人はずっと一緒にいるべきだよね?」
「言いたいことはわかりましたが、子供どうするんです?」
つまり、姉は私と一緒に生涯を共にしたいのだろう。
私もまんざらでもないが、子供は欲しいかなと思っているので素直に頷けなかった。
「あと、姉妹で同性愛ってなかなかやばいですよね」
「愛の前には倫理など無力」
「無力にしないでください」
「性別の壁も無力。すべて破壊する」
「姉さま? ねえ、姉さま、本気ですか?」
「私は本気のことしか言わないよ」
「ですよねぇ……」
「まあお姉ちゃんに任せなさいって」
にっこりと笑いかけて姉は部屋から立ち去った。
「とっくに私はやられてますけどね」
私と姉の関係がどうなるか、はまだ誰も知らない。
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