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第六話 悲劇が悲劇を呼ぶ

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教会の勅許から数日後、家臣にロクロア公が殺害され、ロクロア公国がハーベリア公国の反乱に加わった。
教会の勅許が出る前、ロクロア公は家臣の粛清をしていた。それが反乱とそれに伴うロクロア公殺害の原因ではあったが、この粛清自体もやむを得ないことであった。

ロクロア公家はまだ庶子ではあるが血を引いており、教会の許可で嫡子となれるリリスがいたため、存続できる見込みが立っていた。
一方ハーベリア公家は本家が完全に断絶してしまい、一番近い血筋の分家家臣であり、家臣筆頭でもあるハーベリア公家宰家でも数代さかのぼらないと血のつながりがないぐらい血のつながりが薄かった。
こんな状況で、ロクロア公家はハーベリア公家ではなく王家につくことを決断し、ハーベリア公派閥の家臣を粛正していたのだ。ガリア王家に比較してハーベリア公家の動員兵数は半分にも満たない。
現実的な選択をすれば王家につくのは当然のことであった。
ここで問題になったのは家臣のうちの親ハーベリア派閥の者たちであった。
そもそもロクロア公とハーベリア公が婚姻を結び、それにより生まれたのがマリアであった。
そのような状況では当然ハーベリア公家の家臣と結びつきを強めようとする家臣もおり、その筆頭がロクロア公家宰家であった。
ロクロア公と遠縁の家臣である彼らは当主の息子とハーベリア公家宰家当主の娘の婚姻をすることで、繋がりを強めており、今回のハーベリア公国反乱に参加するのを強く推す筆頭であった。
筆頭家臣でもあった彼らは、ロクロア公家が王家につくのには邪魔でしかなく、ロクロア公はロクロア公家宰家当主の粛清をし、これによりハーベリア公家と手を切ったのだ。

だが、教会の動きにより、ロクロア公家もまた断絶の瀬戸際まで追い込まれた。
ロクロア公もかなり高齢であり、今後ガリア王国内の内戦の対応をしていれば後妻を迎えようにもかなり先になりかねない。そこで子供が生まれる可能性は低いだろう。
筆頭家臣まで粛正しておきながらそれがまったく無意味だったというこの頽落に家臣団からも不満が日に日に高まり、ついにはロクロア公は、家宰家当主の息子がかたき討ちにより殺されてしまったのである。

それぞれの公国は、主君を元家宰たちと定め、跡継ぎに両家の血を引く子を据えることで融和を示し、ガリア王家に反旗を翻した。



実権を握った新主君たちがまず行ったのは粛清だった。
親ガリア王家の家臣を片っ端から粛清していく。
ロクロア公が一度粛正をし、派閥の色分けが明確になったのも相まって、粛清対象は非常に多かった。
多くの家臣たちが自決や討伐に追い込まれていった。



第六話 悲劇が悲劇を呼ぶ



悲鳴と怨嗟はとどまることを知らずに響き渡っていた。

これで一番の被害を受けたのはリリスの母親であろう。
ロクロア公の愛人として、しかしあまり目立たぬように生きていたらしい彼女は、この時白日の下にさらされて断罪された。
この悲劇の連鎖の根幹の問題となっているのはリリスと王太子のジャンであり、そのリリスの母親である彼女は明確に何か悪いことをしたわけではないが、盛大に恨みを買っていた。
王都にあるタウンハウスに居り王宮に逃げ込めたリリスとことなり、母親は逃げることもできずに家臣らにつかまった。
その後、その母親はあまり意味のない拷問を長期間受けた後魔女という自白をし、火あぶりにより殺され遺灰は川に流されたという。
魔女と認定された彼女は教会から抹消され、この騒ぎの関係者にもかかわらず現在は名前も残されていない。

ここまで粛正をしてしまえば、確かに両公国ともにまとまりは良くなったが、支配層が急激に減少し国力自体は落ちていた。
両公国を足してもガリア王家の支配する王国直轄領には及ばず、さらに力を落としてしまっている現状、戦えば王家が勝つと思われていた。
しかし、そうはならず、内戦は長期化することになる。
その原因となるのが、ハーベリア平原での戦いであった。
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