幽霊屋敷

神名代洸

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幽霊屋敷

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オカルト同好会のメンバーでいろんな場所を見てきたがその場所だけはどうしても忘れることができなかった。それをお話しします。


メンバーは私たち8人。
男4人に女4人。
今日向かうのは地元でも有名な幽霊屋敷。
今まで何人もの人が幽霊を見ている場所だ。
幽霊は夜しか出ないと思われているようだが、そんなことはない。昼間でも出るのだ。だから今回はあえて昼間にやってきた。
屋敷といっても普通の一軒家で小さな庭がある程度。
ただその家には主人はおらず管理されていない庭は荒れ放題。家の中はゴミが散乱している。なので靴は履いたまま家の中へ入っていった。

「あんまり来たくないような気がしない?」
「まぁ、思ってたのよりかはマシかな。」
「でもさ、なんか寒気しない?」
「それはお前の気のせいだって。」
「それよかよー、丁度2階建てだから二手に分かれていかね?」
「あっ、それいいんじゃない?」
「まぁ、いいんじゃね?」
「私はなんかやだな。みんなで行こうよ。」
「まぁ、まぁ、まぁ、落ち着いて。」
「まぁ、こんだけ人数がいるんだから大丈夫じゃね?」
「う~ん、じゃあそうしようか…。でも怖いよ~。」


2階建てのその家の中を二手に分かれて進んでいくことになった。それぞれの階に男女ペアで行動することになった。
2階は寝室や物置き部屋などとなっているらしい。けれども特に変わったところはなかった。
1階のグループが順番にキッチンへと向かうと[カチャッ]と小さな音がした。気のせいと思ったがまた聞こえた。
「何なんだろう?聞こえた?今の音。」
「ううん。私は何も。あんたは?」
「俺?…聞こえたかも。でもはっきりとは聞こえてねーよ。」
「気のせいじゃないの?」
そう言ったすぐ後、物を引きずる音が聞こえた。

「やべーよ。ちょっ、ビデオ撮れてるか?」
「撮れてるって。」
「周り全部撮っとけよ。もしかして映るかもしれないからよ。」
「ああ、わかってるって。」
男2人はビデオ撮りで盛り上がっていた。

「ねぇ、私帰りたくなった。」
「え?どうして?まだ始まったばっかしじゃん。」
「何か嫌なことが起きそうな気がするのよ。だから不安で不安で仕方ないな。」
「そんなのいちいち気にしていたら、オカルト同好会は廃部になっちゃうよ。だからいちいち気にしなの。」
「は、はーい。」
そうは言ったが、1人の女の方は明らかに何かに怯えていた。それからしばらくあちこちをビデオで撮影してからみんなと集合する場所へ向かった。

途中で何かを見た気がした。
首を横に動かせない。
何故?どうして?私は何を見たの?
その時耳元に不気味な息遣いが聞こえてきた。
冷や汗が止まらない。
仲間を呼ぼうとするが声が出ない。
口は動かせるが何故か声だけが出ない。
怖くてたまらなかった。
前を歩く3人はワイワイと騒ぎながら歩いている。
左手を伸ばして服を掴もうとした時不意に1人がこちらを向いたのだが同時に真っ青になって叫び出した。
「わぁ~!わぁ~!でたぁ~!!」
「こ、来ないで!こないでー!!」
「逃げ、逃げるぞ!来るな!あっち行け!!」
「そ、そんなぁ~。助けてよお。何が私のそばにいるの?!」
仲間は私を残して逃げ出した。

一人ぼっちになった私はトボトボと皆が集まるはずの集合場所に向かった。そこには皆がいた。でも皆顔色が悪い。真っ青だ。
「どうしたの?みんな。私に何かついてるの?」
「おま、お前分からないのか?お前についてる髪の長い女。血だらけの女の顔が。」
言われて初めて右側に息遣いがある事に気がついた。でもそっち向けないんだよ。何でだろう?
でもね、好奇心よりも恐怖が勝っているので向けないんだよ。だから写真を見せてほしかった。
仲間と私を挟んだ中間に机らしき残骸があったので、自身の携帯を置いて撮ってもらって見せてもらうことをお願いした。仲間は嫌がったが、それでは何にも始まらないと何とかお願いしたのだ。
男子2人が恐る恐る近づいてきてさっと携帯を取ると写真を撮ってその場に置いた。
私はドキドキしながら携帯の写真の保存場所を確認させてもらった。

「ヒーーーーッ!!」

それしか声が出なかった。
怖い顔が私の背後に映り込んでいた。
一体どうしたらいいの?


「ねぇ!どうにかして!みんななら何か方法知ってるでしょ?」
……誰一人として口を開くものはいなかった。
と言うことは知らないんだ。
私はどうなるの?
こわいこわいこわい。
嫌だ!こんなとこ誘われてもくるんじゃなかった。
他の誰かについてくれれば…。邪な考えが頭をよぎった。
その時だ。
背後の冷気が無くなった気がしたのは。
何故?いいえ。そんなことどうでもいいわ。私が助かるなら何だっていい。
皆がギャーギャー叫んでいるうちにその場から一人逃げ出した。
その姿を見たものは皆後に続けと私を追いかけてくる。怖いよ。振り向くことはできなかったので、少しでも人通りが多い場所を目指した。

「はぁ、はぁ、はぁ。ここまできたら大丈夫かな?」
「おい、置いてくなよ!俺らを見捨てるのか?」
「な、何いってるのよ。私は怖い目にあったのよ?あの場にずっといたらどうなっていたのかわかる?分からないよね。だったら怒られる言われはないわ。」
「なんてやつだ。誘ってやった俺らに言いやがって。お前なんか2度と誘わねーよ!」
「私だってお断りよ!」
男達は皆残っているであろう仲間のもとにさっていった。
私は1人帰路についた。
撮られた写真は怖いからとすぐに消してしまった。
オカルト同好会もすぐに辞めるつもりだ。
その後のことは考えていない。


翌日、学校に行った時、校内では騒ぎが起きていた。
オカルト同好会のメンバーの友達と全く連絡が取れないと言う。
【やっぱり昨日抜けて正解だったな。】そう思った。その時私の姿を見たクラスメイトが私に聞いてきた。「あなた、確かオカルト同好会のメンバーだったよね?他の人たちの姿が見えないんだけど、あなた知らない?連絡が取れなくなっちゃって、先生も困ってるらしいのよ。同居してる親から連絡あったらしくてメンバー全員に連絡してみたけど繋がらないって…。」

【やっぱりあの後何かあったんだ。どうしよう?いっても信じてもらえるかな?でもそうなると関わり合いになっちゃうからやだな。】
と思ったが、優しくしてくれた先輩もいたから会ったことを事細かに全部話して聞かせた。「怒られる!」って思った。
でもね、先生も噂で出るっていう場所らしいのは知っていたから行くなといっていた様だ。それを言うこと聞かなかったから何かあったとしか思えない。

ライングループに入っていたからもしかしたらと思いラインしてみる。しかし既読がつかない。
すぐには気づかないこともあるかと思いしばらく待ったがやはり変わらなかった。


【どうしたらいいのかわからない…どうしよう?でも私1人じゃあそこにはいけないし。】
教師とも話をしたが、教師はいくなの一点張り。
でもそしたら仲間たちはどうなるの?帰ってくるの?
分からない。でも一人で行く勇気はなかった。



やがて噂を聞きつけたマスコミ各社がこぞって記事にしていたが、その頃になっても誰一人として帰ってこないことに皆が震え上がることとなる。

仲間はその後、幽霊屋敷のすぐそばで折り畳むように亡くなっていた。
その後は緘口令が敷かれ記事になることもなかった。

残った私一人だけでは部として成り立たない事と、今回の事で廃止となった。



その後は学校も卒業してしまった為、どうなったかは知らない。
でもさ、夜真っ暗になると誰かに見られてる感じが取れないんだよね~。
もしかして亡くなった仲間かもしれない。ふと思う。
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