すべてのはじまり

神名代洸

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声の主

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あの時の声のことが頭の隅をよぎり、私は何度も呼びかけてみたが返事はなかった。
なんだったのだろう?
でも、そのお陰で力をフルに使うことができたのは事実。感謝こそすれ何故出てこなかったのかと不満に思うことはなかった。きっと何か事情があったに違いないからだ。
いつか会う時が来れば会うだろう……そう、一種の予感めいたものを感じていた。
そのチャンスが巡ってくるのは以外と速かった。


復興に向かい続ける町並みを見ながら私はずっと考えていた。あの声の主は一体誰だったんだろうと…。
頭の中に直接届いてきた…と言うより中にあったものといったほうが正解かもしれない。
もしかしたら私の中にいた愛想のないやつかもと思ったらガックリとしてしまった。
『ねぇ~、もしかして私の中にいる人?返事をして。声が聞こえてるでしょ?』
私は何度も念じたが何も返答はなかった。
『案外照れ屋さんなのかもね~。』と思ったら瞬時に『違うわ。』なんて初めて帰ってきた返事にびっくり。
『じゃあ誰?』
『言う必要はない。』
『つまんない…。』『なら放っておけ』『ばいいんだろうけどね~気になっちゃって。てへ。』『俺には関係ない。』
『俺って事は男かぁ~。』『……。』
『何で黙っちゃうの?』『……。』
『ならいいわ。勝手に考えるから。うーんと、あなたは男でなぜか私に関係がある人なのよね。で、詳しいことはなーんにも教えてくれない。……わかったぁ~。守護霊とかなんとか?』『アホか、なんでそうなる。もっと別のものとか考えたことはないのか?』
『分かんなーい。あっ、前世…とか?まさかね。』『ようやくわかったか。アホが。』
『アホアホ言うな!!まぁ、当たってなくはないけど…。で、なんでその前世の人が出てくるわけ?生まれ変わってるはずでしょ?』
『まぁ、確かに生まれ変わってるがな。意識の底では繋がってるのだ。』
「よくわかんないけど…転生しても根っこは繋がってるってこと?」
『あたりだ。』
私は知らず知らずのうちに頭で考えていたことを口に出して言っていたらしい。周りにいた人が不思議そうに私を見ていた。
歩きだした私は家族の元に戻りながら独り言を言い続けた。
そして家族の元に着いた時には落ち着きを取り戻していた。

さっきの体験のことは家族には話さない方がいいと思い話すのをやめた。家族をこれ以上混乱させたくなかったからだ。
ただでさえ不思議な力を持つ娘が前世に関係するものと会話できるなんてふざけた事言えるわけがない。とても信じてもらえるなんて思わない。
高藤瑠璃や真壁咲夜にでさえ話してないのだ。おかしくなったと思われたくもない。
だから一人になる場所を探しあちこち歩いた。そして小高い場所を見つけ目をつむり内なるものに対話を始めた。

『ねぇ~、あなた名前はなんていうの?どう呼んだらいいかわからないわ。』
『………。』
『まただんまり?ならいいわ勝手に名前つけちゃうから。えっとね、愛想がないから可愛くタマにしようか。』『ふざけるな。私にはちゃんとした名がある。』『じゃあ教えてよ。』『それは無理だ。お前自身で思い出さないといけない。それが無理なら名無しとでも呼べ。』『えー!そんなのつまんない。』

頬を膨らませて顔を真っ赤にした私は一生懸命考えたが何も思い浮かばず結局《名無し》で落ち着くことになった。
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