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力の使い道
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この稽古をしてからもう何日経っただろう。家族は気づいたかなぁ~などと独り言を言っているが、今は誰もいないためため息をついていた。
仲間といっても紹介されたのはほんの数人。あとは誰が何人いるのか全くわからない。
逃げ出すことも何度か考えたがここがどこだか全くわからないので諦めることにした。
力を使う事には抵抗がなくなり、ちょっとしたことでも念じればそうなるようになっていった。
だが、どれだけの力があるのこはまだ全く分かっていない。全力で使ったことがなかったから。だから、今日の訓練は限界を知ることになった。
体育館並みの広さの建物内で障害物がいくつもある場所からの脱出というものだ。ただ、脱出するには何度か力を使わなくてはならないように計算されていた。
「あーっ、ったくイライラするなぁ~。」
イライラすると集中できなくなることはわかっている。けれどどうしてもイライラしてしまう…。
そんな邪気を払いながら神経を集中していく。呼吸を整え、気持ちを落ち着ける。すべてと一体になったかのように錯覚を覚える。
そして息を吐き両手を目の前にあげた。
目を閉じ呼吸を整える。
すると頭の中が真っ白になり、目の前の物が動き始めた。
大人10人がかりでも動かせなかった塊をほんの僅か数センチ動かせたのだ。大きな進歩だった。だがそれでも流れ出る汗は半端なかった。
「フゥ、フゥ、フゥ…。何とか、上がったけど無理だよ絶対。」
諦めかけた私の頭の中に声が聞こえてきた。
「頭から決めつけてたらできるものもできなくなるわよ。意識を集中しなさい。」高藤瑠璃にそう言われ、カリカリしながらもなんとか意識を集中することが出来た。
そしてまた障害物を排除するべく力を出す。
意識を集中し物体が持ち上がる様子をイメージする。
ゆっくりと重い岩が動き始める。
ガラガラガラと小石が岩から崩れ落ちる。そして岩は動き始める。
ものすごくゆっくりであるが、動きは続く。
そして5時間かけ1メートルずらすことに成功する。しかし、これはまだ始まりでしかない。他にも大小様々な大きさの岩が目の前に転がっている。遊んでいる暇なぞなかった。
「もう無理。私にはそんな力ないわ。私が使えるのはヒーリングぐらいよ。」
「なら、治してもらいましょうか。これを。」そう言うと目の前に連れてきたのは麒麟の雌だった。
「はぁ?」
「彼女は内臓に腫瘍が見つかって、手の施しようがないのよ。治せるのでしょ?お願いするわ。」
「あのね~、私は人は治せるけど動物は…。」「一緒よねー、私達は動物であり生き物なのだから。」
カッチーン。頭にきた。治せないって言ったのにちっとも聞いてくれない。いいじゃん、やってやろーじゃん。でも、出来なくても文句言わないでよね。と、頭の中で文句を言って治療を始めることにした。
意識を集中し、両手に力を込める。
治す幹部を探すことから始めた。ゆっくりと頭から首筋、胴、腹、腰、前足、後ろ足、尻尾に至るまで。
痛みは手のひらが教えてくれる。場所も。
腹の周りが一番痛かったので、今度はヒーリングを始めた。痛みの幹部に手を当て、痛みの元となるものを吸い取り、自分の正常な力を送り込む。バランスを取るためだ。
それを始めると体温が著しく下がってしまうが仕方がない。両手が冷え、顔色も悪くなってきた。
それを見ていた真壁咲夜が叫んだ。
「もういい、やめるんだ。」
「なぜ?あなた方がそうしろと言ったはずだけど。」
「君がそんな状態になるなんて知らなかったんだ。今はもういい。やめるんだ。」
「でもそうなるとこの子はどうなるの?」
「死ぬしかないわね。」高藤瑠璃はあっさりと答えた。
「ならやるわ。できるかどうかわからないけどやらないままよりはマシ。」
私は必死に祈った。この命助けたいって。
すると患部にあてていた両手から痛みが消えていくのがわかる。
仲間といっても紹介されたのはほんの数人。あとは誰が何人いるのか全くわからない。
逃げ出すことも何度か考えたがここがどこだか全くわからないので諦めることにした。
力を使う事には抵抗がなくなり、ちょっとしたことでも念じればそうなるようになっていった。
だが、どれだけの力があるのこはまだ全く分かっていない。全力で使ったことがなかったから。だから、今日の訓練は限界を知ることになった。
体育館並みの広さの建物内で障害物がいくつもある場所からの脱出というものだ。ただ、脱出するには何度か力を使わなくてはならないように計算されていた。
「あーっ、ったくイライラするなぁ~。」
イライラすると集中できなくなることはわかっている。けれどどうしてもイライラしてしまう…。
そんな邪気を払いながら神経を集中していく。呼吸を整え、気持ちを落ち着ける。すべてと一体になったかのように錯覚を覚える。
そして息を吐き両手を目の前にあげた。
目を閉じ呼吸を整える。
すると頭の中が真っ白になり、目の前の物が動き始めた。
大人10人がかりでも動かせなかった塊をほんの僅か数センチ動かせたのだ。大きな進歩だった。だがそれでも流れ出る汗は半端なかった。
「フゥ、フゥ、フゥ…。何とか、上がったけど無理だよ絶対。」
諦めかけた私の頭の中に声が聞こえてきた。
「頭から決めつけてたらできるものもできなくなるわよ。意識を集中しなさい。」高藤瑠璃にそう言われ、カリカリしながらもなんとか意識を集中することが出来た。
そしてまた障害物を排除するべく力を出す。
意識を集中し物体が持ち上がる様子をイメージする。
ゆっくりと重い岩が動き始める。
ガラガラガラと小石が岩から崩れ落ちる。そして岩は動き始める。
ものすごくゆっくりであるが、動きは続く。
そして5時間かけ1メートルずらすことに成功する。しかし、これはまだ始まりでしかない。他にも大小様々な大きさの岩が目の前に転がっている。遊んでいる暇なぞなかった。
「もう無理。私にはそんな力ないわ。私が使えるのはヒーリングぐらいよ。」
「なら、治してもらいましょうか。これを。」そう言うと目の前に連れてきたのは麒麟の雌だった。
「はぁ?」
「彼女は内臓に腫瘍が見つかって、手の施しようがないのよ。治せるのでしょ?お願いするわ。」
「あのね~、私は人は治せるけど動物は…。」「一緒よねー、私達は動物であり生き物なのだから。」
カッチーン。頭にきた。治せないって言ったのにちっとも聞いてくれない。いいじゃん、やってやろーじゃん。でも、出来なくても文句言わないでよね。と、頭の中で文句を言って治療を始めることにした。
意識を集中し、両手に力を込める。
治す幹部を探すことから始めた。ゆっくりと頭から首筋、胴、腹、腰、前足、後ろ足、尻尾に至るまで。
痛みは手のひらが教えてくれる。場所も。
腹の周りが一番痛かったので、今度はヒーリングを始めた。痛みの幹部に手を当て、痛みの元となるものを吸い取り、自分の正常な力を送り込む。バランスを取るためだ。
それを始めると体温が著しく下がってしまうが仕方がない。両手が冷え、顔色も悪くなってきた。
それを見ていた真壁咲夜が叫んだ。
「もういい、やめるんだ。」
「なぜ?あなた方がそうしろと言ったはずだけど。」
「君がそんな状態になるなんて知らなかったんだ。今はもういい。やめるんだ。」
「でもそうなるとこの子はどうなるの?」
「死ぬしかないわね。」高藤瑠璃はあっさりと答えた。
「ならやるわ。できるかどうかわからないけどやらないままよりはマシ。」
私は必死に祈った。この命助けたいって。
すると患部にあてていた両手から痛みが消えていくのがわかる。
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