すべてのはじまり

神名代洸

文字の大きさ
上 下
12 / 22

新たな仲間

しおりを挟む
青年は真壁咲夜と言った。
本名かどうかはどうでもよかった。ただ手を離して欲しかった。
「離してよ。私を一体どうするつもり?」
「君を連れて行くと仲間たちに話してあるからね。僕についてきてもらうよ。」
「そんな、勝手な。」
「君がしてきた事は確かに人の役には立つ。だが、それは僅かの人数だけだ。僕達ならもっと大勢の命を救えるんだよ。」
「母さんさえ救えなかった私がどうやったら他の人を救えるの?」
「君のお母さんは寿命だったんだ。だから君の力ではどうにもならなかったんだ。それはきっと僕でも同じだろう…。」
「そ、そんな…。」
私は言葉も出なかった。そのままひきづられるようにその場を後にした。父や兄姉を置いて…。みんな気づいていなかった。
私が病院を抜け出したことも…。

私は駐車場に連れて行かれ、車に乗せられた。ここがどこだかわからないのにどこに向かうかなんて分からなかった。ただ、黙って座っているしかなかった。
「おとなしいね。」
「騒いだって誰も気にしてくれませんから。」「なぜそう思うんだい?」
「今この時を生きるのがやっとな人たちにとって些細なこととしか受け取られないでしょうし…。たとえ助けてくれようとしたとしても一般の方々では歯が立たないでしょう。」
「さっきの一瞬で分かったというのかい?だとすれば一刻も早くあのお方に。」
「わたしに合わせたい人、という事ね。ならなぜ出てこないの?町はこんなんだし人々は疲れ切ってる。あなたがたもそうじゃない?おかしいよ。」
私は両拳を足にぶつけた。
真壁は黙ったままだ。本心なのだろう。
そうこうしているうちに車が停まった。
真壁は仲間に指示を出し、警戒を怠らなかった。そして安心が確認できると私を車から連れ出した。
私は彼の後をついて建物内に入った。
豪華な屋敷だった。
そこにいたのは幼い少女で、私よりも小さかった。
「真壁、私が頼んだ娘はこいつか?」
「はい。そうです。」
「チョットあんた年下のくせにこいつ呼ばわりはないでしょう?学校で習わなかった?目上の人を敬えって。」
言われた少女は真っ赤になって小さな声で「すまん。」とだけ言った。
私はよしとしてこの件はこれで終わりにしたが、まだ、本題が残っている。
【何故私が選ばれたのか?何故今になって不思議なことが起こるのか?何故?何故?】
聞きたいことは山ほどあったが、焦らず一つづつ聞いていくことにした。

「どうして私を探したの?どうやって私だと気付いたの?」
「いやはや、そう次々と聞かれてもね。私はお告げを聞いてあなたを探しただけ。貴女は不思議な力が使えることと、前世のこともある。」
ここでも前世が関係しているのかと思わず叫びたかったがグッと堪えた。
「前世がどうして関係するの?てか、そういうの見えるの?」
「ああ、見える。私はそういう力を持っている。」
「そうなんだ…で、話は戻るけど、どうやって私だと気付いたの?」
「君のオーラは特別強い。だから探しやすかった。」
「オーラ?それは目には見えないものなのね。」
「そうだ。普通の人には見えない。」
「あなたはいったい何者ですか?」
「言い忘れてましたね。私は高藤瑠璃。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狙われたその瞳

神名代洸
恋愛
俺はシュナイダー。 SPをしている刑事だ。 いつものように警護対象を警護中にある一人の女性が気になって仕方がなかった。その女性は一人で本を読み、楽しそうに微笑んでる姿を見るとこっちまであったかくなりそうになる。 そこに一人の男が。 明らかな不審者とも取れる男が彼女に手をかけようとしているのをみてなぜかわからないが思わず体が動き彼女を助けることに。 のちに彼女と関わることになるとは当時の俺にわかるわけがなかった。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

処理中です...