闇  〜潜む恐怖〜

神名代洸

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闇   〜潜む恐怖〜

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僕はずっと1人だった…。
今までも、そしてこれからも…。
それは決まっているレール。変更などできないと諦めていた。
僕に肉親と呼べる人は1人もいない。
孤児なんだ。
だから児童養護施設でも1人だった。
仲のいい子はいない。
だけど寂しいと感じたことはなかったな。
時々やってくる大人達に一緒にいた小さな子達は手を惹かれて出て行ったのを何度も見てきた。
入れ替わりが多いのだ。
仲良くしたってさ…。だろ?


そしてまたいつものように手を引かれて出て行く仲間がいた。嫌がるが諦めもあるようで泣きながら出ていく…。
あれ?あの大人達…前も見た気がする。
気のせいか?
僕には同じ人に見えた気がした。
でも孤児を引き取る場合はいろいろな審査があって同じ人が通るなんてことはないと思う。今までがそうだったから。ならあの人たちは何?誰?何でまたいるの?
何かよからぬことを思いついてしまい、頭をブルブルと振って気持ちを切り替える。

またやってきた。
例の夫婦だ。
何回目だ?
少なくとも僕が知る限りでは2人は連れてってるはず。
もう無理じゃないのか?
何でまた来る?
何かあったのか?

色々と考えることが多すぎて考えがまとまらない…。


今日は赤子を連れて行った。
僕は養護施設の職員に尋ねてみた。「同じ親が何度も引き取りに来てるみたいだけれど何で?」って。
職員の人は?の顔をしていた。
そりゃそうだろう…。
一家庭に1人ないし2人しか連れて行くことは不可能だから。ましてや何度も同じ親が?あり得ない。
記録があるはずと思い、職員は記録帳を確認してみるが、名前が一致する家族はいなかった。なら偽名か?そこまでする意味は?
分からない。
でもこの男の子に言われてからより一層気にするようになった数名の職員が、手続きに来た家族の写真をこっそり記録として残すことにした。すると名前が違うが同じ顔の人が来ていたことが判明。
慌てた職員は過去に遡って施設から出て行った子供達の現在を確認するもわからない子が数人いた。
電話が繋がらないからだ。
だから書いてある住所に行くも更地だったり、別の家族が住んでいたりと出鱈目ばかりだった。
すぐに警察に知らせるも警察の方でも追っていたらしく、顔写真が一緒で名が違うのが出てきた。
子供たちは一体どこへ?


ある日の事。
僕はいつものように自室で勉強をしていたら誰かに見られてる気配を感じたので、後ろを振り返るとそこにはいなくなったはずの子供達が数人立っていた。赤子は子供達が抱っこしている。
でもなんか変だ…。生気を感じられない。顔色も悪いし…。気持ち悪い。

「だ、誰?」
「……。」

何も喋らずただ徐々に僕に近づいてくることに不気味さを感じて後ずさろうとするも今僕は椅子に座っている為逃げることができないことに頭が回っていなかった。慌てて立ち上がるも椅子から転げ落ちて腰を打った痛みで冷静さを取り戻すが近づいてくる子供達の顔を見て思わず引き攣った。だって彼らの顔、手足がドロドロになってるんだよ?まるで煮込んだみたいに……あり得ない。
本来口があったであろう場所の部分が裂けて大きく開き歯も何もない暗闇だけが見えて更に不気味さを覚えた。

逃げなきゃ!
とにかくここから……。
窓ガラスを椅子でぶち破って慌ててそこから逃げ出す。幸いにも一階だから怪我をする心配はない!って言うかそんなの全く考えもしなかった。逃げることだけが頭の中でグルグルと繰り返していた。

追って来る。
途中職員にも出会ったが、何も言えなかった。
でも直ぐに反応があった。
そりゃそうだ。
あんな恐怖の対象が急に目の前に現れたら誰だって同じ反応をするに違いない。


どこに迎えば良いのか全く見当もつかない。
だからさ、お祈りをする場所に急いだ。なぜかそこに行けば何とかなると思ったのだ。
建物の中に入るとそこまでしか追ってはこなかった。ただ唸り声ははっきり聞こえた気がした。
【次はお前の番だ】
「何が僕の番?何の事?わからない…。」
でもあの中に入るなんて恐怖しかなかった。

暫くすると子供達の姿は消えていた。
僕のところに行けなかったからどこかに行ったのか?でもどこへ?
まさか…別の子のとこ…とか?まさかね。
その日の夜、昼間のことがあったから皆一緒の部屋で寝ることになった。これなら大丈夫だよね?そう、思っていたのに遠くから足音が。それも何人も一緒にいるようだ。と言うことは…出た!でも僕は声を上げることだけでなく動く事も出来なかった。
近づいて来る足音。
恐怖に震える僕。
徐々に縮まる距離。
もうダメだー!そう思った時僕の近くの可愛い女の子が抱き抱えられるように持ち上がり、去って行った。
その間大人たちは全員寝ていた。
起きてた子供は数人ちらほら…。

朝になって目覚めの一発から鳴き声や叫び声で始まり、大人たちは驚いていたが、話を聞いて真っ青になった。
いなくなった子は今度里親に引き取られることになっていたからだ。しかも別の里親に。

大人たちは別の部屋に集まり、直ぐに会議が始まった。けど、いい案は何も思い浮かばずどうしたらいいのか悩むばかり。その間は子供たちは子供ただ話し合っていた。
目が覚めてたのは僕を含めて5人。
他の子供は20人。
4人に1人の担当となることになるのか…。
僕はそこそこの年だけど、他の子は僕よりも小さな子が多い。見てられるのか?不安だ。


暫くして大人たちがゾロゾロと部屋の中に入ってきた。
話し合った結果暫く里親への引き渡しは中止し、様子を見ることにするとのこと。それが1番だろうと思った。


昼間子供達全員で話し合った通り、グループになってグループ同士で腰に紐を縛り合い固まって寝ることになった。もし、担当の子が寝てしまった場合でも、他の子が起きてたらその子が担当になる手筈になっている。僕はもしもの場合に備え、昼間寝てたから眠くない。だから動かせる手に棒具を持っていた。
何かあったら真っ先に僕が攻撃するんだ!
その間に他の子が大人を起こすことになっている。
正直こんなもので追い払えるとは思ってないけれど、気持ちの問題と思うしかなかった。

やがて時計の針が10時になり、寝る時間となった。
皆布団を被り、紐を見えないように隠した。固まれば見えなくなるものだ。
大人たちも緊張している。
11時を過ぎたあたりだろうか、どこからか足音が聞こえてくる。
起きてるものは皆緊張した。でも寝たふりは変わらない。
僕もとりあえず目を瞑っていた。
するとやはり来た。
ただ足音が少なかった。
薄目で見ることができたが、目を開けきることはしない。例の夫婦だ。何で来てるの?
どうやら物色しているようで、今日の目当ては…あの子か。
旦那が妻に言われるがまま男の子を抱き上げようとしたが、何かおかしいと抱え込んだ布団を剥がすと腰に紐が縛ってあるのが見えた。どうやら他の子の腰にも紐で巻かれているようだ。
僕は咄嗟に布団を捲り、手にした棒具で旦那の背中を思いっきり叩いた。びっくりした大人達も布団を捲り、男に向かっていった。
その間こっそりと逃げ出そうとした妻だったが、旦那が呆気なく捕まったことで諦めたのかおとなしくなった。

「何で僕らを攫うんだ?もうすでに何人かあんたの所に貰われてるはずだが?」「……。」「喋らないとわからないし、まぁ、このまま警察行きなかぁ?」
「そ、それだけは…。」「じゃあ話せ!全部だよ?」
妻は諦めたのかぽつりぽつりと話し始めた。
どうやら娘が1人いるようだが、娘に友達をという親心から始めたそうだ。ただ娘は死んでいる。生きてる子では怖がって近寄るどころか騒がれる可能性もあると思い、殺してから娘のそばに置くようになった。そしたらさ、夜夢見たんだ。
娘が楽しそうにその子と遊んでいるのを見ちゃった時には涙が出たよ。だから1人、また1人と増やしてったんだ。だけど里親になれるのはせいぜい1人か2人まで。あまり大っぴらに動く事もできないと考え、遠く離れた場所の児童養護施設の子どもを探した。
こっちの住所は出鱈目だ。万が一調べられてもわからないように細心の注意を払ったんだ。でも何でバレちまったんだか。

「そりゃそうだ。その子達が僕らの所に現れるからな!…そこに、ホラ。」そう言いながら指を指すとそこには娘と他の子供達が何人かいた。ほんとの名前なんて知らないよ?適当に集めただかだからさ。

「そんなの怖い体験したから芋蔓式さ。誰がはじめに見たか…まで分かる。」そういって自慢げに話してたっけ。
もう娘の友達は増やしてあげられないなぁ~と思うとこの両親は半分は諦め顔、半分はホッとした顔になっていた。
これでもう怖い間に合わないなぁと皆で喜び合っていた。
事件から数日後、たまたま1人の女の子が真夜中に目が覚めてトイレに行こうとした時に何かがはいずる音を聞いた。
もう怖い間に合わないとわかってはいたが、なんか今日は寒気がして怖いと思ったので僕を呼んだ。
まぁ、直ぐ隣で寝てたから呼べたんだけどね。
僕は目を飾り擦り起きあがろうとしたが、女の子に掴まれて起き上がることはできなかった。
「どうした?」
「あ、あれ…。」
言われた方を見ると恐怖と何故?が頭の中で繰り返した。
それは腐敗した女の子の姿。
手に持ってるのは誰かの頭部。
優しく傷つけないように撫でている。
ま、まさか…また来た?何で?
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