僕の好きな子は…。

神名代洸

文字の大きさ
上 下
1 / 1

僕の好きな子は…。

しおりを挟む
ムカついていた。
だってさ、あいつ…嘘つきやがったんだよ?ありえるか?
腹が立って喚いた。
だけど状況は何も変わらない。
ここは何処?
知らない街の知らない場所で僕は友達に嘘をつかれた。

ここ、君の好きな子がよく通る道だって…。
そんなのどうやって知ったのか…。
普通はわからないと思う。
ストーカーか何かか?と思ったよ。
でもそいつ…違うって言うんだよ。
じゃあなんだって言うんだ?
友達か何かか?
違うと言われ…う~ん、分からん。
とにかくあれこれと言われ丸め込まれて今ここにいる。住宅街だから不審者と間違えられないか不安だった。


そもそもどうやって僕が好きな子がいるのがわかったのか?誰にも言ってないのにね。ただ目で追いかけていただけ…。
だけどもうそのダチもいない。
僕を置いて逃げたのだ。
どうしてくれよう…。
とりあえずはここから動かなくては。
携帯は持ってたが、手持ちが心もとない。だからタクシーを呼ぶと言う方法は使えそうにない。
そもそもここがどこかわからないから呼びようもないのだが…。
昼間という時間なのに街中には人っ子一人歩いている姿は見られない。
何で?
昼間なら買い物に出たり、井戸端会議でもしてるものとばかり思っていたのに…。
仕方がないからトボトボと大通りを目掛けて歩いていく。

しばらく歩いていたら、知らない場所の大通りに出たようだ。
ひらけた場所に出た。

「ひゃぁ~、やっと出たか…。でもココドコだ?何市になる?」看板を探してみてもどこにも立っていないようで見当たらない。
こうなったらもう行き当たりばったりで行くしかない。
意を決して僕は歩き出した。
その時目の前を一瞬だが誰か人が通った気がした。
それは僕の好きな子だった気がする…。気のせいかもしれないけれど。
追っかけてみたよ。
そしたらね?女の子ってことはわかったんだけど、お目当ての子かはわからなかった。
でもね?おかしいんだ。
だってね?ついさっき目の前の曲がり角を曲がったばかりだったはずなのに僕が覗き込んだ時にはどこにも人影どころか気配さえもなかったのだ。
まさか…って思ったよ。

とりあえずは人を探したんだ。
だーれもいないこの場所にはいてはいけない気がする。
怖くなってきた僕はとにかく人を探した。
携帯の時計はちょうどお昼を指していた。
ならどこかの家に行けば誰かいるかも。そう思ったのに近くの家に行ってチャイムを鳴らしても誰も出てこない。他の家に行っても同じだった。ここら一体に人がいないってどういう事?
地域の旅行か何かか?
そんなの知らないし…。

チリンチリンと鳴る音が聞こえる。
誰かの持っている鈴の音か?
振り返っても誰もいない。
でもね?前を見ると音がする。
今度は音がする方を見るがどこにも人は立っていない。

なんかだんだんさ~、不気味に感じ始めたんだよ。
だってさ~、誰もいないんだよ?おかしいって。
音がするから近くに入るはずなんだけど姿は見えない。何で?

その時また視界に女の子が入ってきた。
「ねぇ、ちょっと君!」
声をかけたが聞こえていないのかこちらを見ようとはしない。何で?
その女の子の肩に触れようとしたが、触る事ができなかった。素通りした気がした。何だ、人じゃないのか…ってえー!!
冷や汗が出てきた。
もしかしてこれが【霊】というやつなのか。冷静ではいられなかった。
だからその女の子が僕が好きな子なのかさえも頭に思い浮かばなかった。抜け落ちていたのだ。

その場から逃げ出したが、今度は僕が追われる事に…。
霊はどんなにまこうとしてもまけなかった。
汗を流しながら僕は何とか逃げようとしたのだが、霊は先回りしていた。
顔は見えない。というか見てない。見れるわけないじゃないか。

だからさ、無心で逃げたよ。そしたらさ、突然パタリと追いかけられなくなった。

「何だったんだよ?さっきのは…。」
今度またあったら写真を撮ってみようと思った。記録に残るかもしれないと思ったのだ。実際はどうなのかはわからないのだが…。

結局僕の好きな子がどこに住んでいるのかはわからなかった。教えてくれるはずのダチもいない。
歩き回ったせいで余計にややこしくなってしまい、気が付けば駅の目の前の道路に出ていた。

「やったぁ!これで帰れるぞ!」

そう思った時背後から声が聞こえた気がした。


「ねぇ…。」

振り返ったがそこには誰もいない。
怖くなった僕は慌てて駅に向かった。駅に着くとホッとして急に尿意を感じた。
トイレに入り、用を足す。
手を洗っている時、目の前に鏡があることに気がついた。しかしそこに写っていたのは…僕の後ろに立つ髪の長い女の子。
目は落ち窪んでて真っ黒。
でもね?後ろの壁が透けて見えるんだ。その後の記憶は僕にはない。
気が付いたら電車に乗っていた。
そして少しすると自分が住んでいる最寄駅に。
記憶がない間のこと…何があったのか分からないが、知りたいとは思わない。
だってさ、何か嫌なことがあって忘れたんだろうと思ったから。
思い出したらダメなんだと思った。
でもね?
いまだに気になってる…。
好きな子の住んでる場所。
ダチにはもう聞けない。
嘘つかれそうだから。
でもね?それも聞いちゃダメな気がする。それがなんなのかは分からないが。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

謎の写真

神名代洸
ホラー
一枚の写真から色々なことが起こる。 僕らはそんなことになるなんて思いもしなかった。 そんな僕らの恐怖話は…。 そして僕らに待ち受けることとは?

消えた村

神名代洸
ホラー
昔、小さな村が一つ消えた。 それはごくありふれたことのように記事となっていたのだが、心霊スポットを探していた私の目に留まる。 新米4人で記事を集めることになったのだが、それが恐怖への入り口となるとは私自身予想だにしなかった。

旅館に泊まったはずなのに

神名代洸
ホラー
だちと数人の女子とで旅館に泊まりにきていた。 ただこの旅館、何かが変だ。 僕らの他に客はいなかった。 仲間の一人がこう言ってたな。 「ここって噂の旅館じゃね?」って。 そんなの僕は聞いてなかったから下調べというか地図は持ってきていた。 何かあったらやだからさ。 でもそんな嫌な予感が的中するなんて思わなかったよ。

夜のドライブ

神名代洸
ホラー
いつも使っている道…。 娘のバイト先への送迎で。 なのにね、今日初めて見たんだ。 それはきっと気のせいだと思っていた。 でも違った。 だって…さ、そこにいたはずなのに別の場所にいたから。 慌てて逃げたが、もう恐怖しかない。 私が体験したこととは?

大きな丸いもの

神名代洸
ホラー
僕はお化け屋敷が苦手だ。 昔からそう言っていたのにダチに引っ張られるように連れてかれた。 そこでまさかの出来事に出くわす。 それは今まで体験したことがないことだった。 その恐怖に耐えられるのか?

迷路からの脱出

神名代洸
ホラー
テレビでやっていた迷路がなかなか面白くこんな簡単なら参加したいと思うようになった。募集してたから参加したのだが。 予想に反して恐怖を体験することになるとは…。

怪談の話で異世界への道を知ったから試しにやってみたら行けた。さてどんな世界なんでしょう?

神名代洸
ホラー
都市伝説等が流行っていた頃、僕はある噂を耳にする。 それをしたものは帰ってはこないという噂だ。 現実世界に疲れていた僕は試しにやってしまう。 僕の目の前にあるものは?

血だるま教室

川獺右端
ホラー
月寄鏡子は、すこしぼんやりとした女子中学生だ。 家族からは満月の晩に外に出ないように言いつけられている。 彼女の通う祥雲中学には一つの噂があった。 近くの米軍基地で仲間を皆殺しにしたジョンソンという兵士がいて、基地の壁に憎い相手の名前を書くと、彼の怨霊が現れて相手を殺してくれるという都市伝説だ。 鏡子のクラス、二年五組の葉子という少女が自殺した。 その後を追うようにクラスでは人死にが連鎖していく。 自殺で、交通事故で、火災で。 そして日曜日、事件の事を聞くと学校に集められた鏡子とクラスメートは校舎の三階に閉じ込められてしまう。 隣の教室には先生の死体と無数の刃物武器の山があり、黒板には『 35-32=3 3=門』という謎の言葉が書き残されていた。 追い詰められ、極限状態に陥った二年五組のクラスメートたちが武器を持ち、互いに殺し合いを始める。 何の力も持たない月寄鏡子は校舎から出られるのか。 そして事件の真相とは。

処理中です...