やすらぎはあなたと

【７】

「誰がそんな事を言っていたの？お父様。」
「そんな事お前が知る必要はない。本当の事か？」
「もし本当だとしたらどうするつもりですか？」
「ギャブと別れたのは新しい男ができたからか？」
「いいえ、あの男はお父様の財産が目当てだっただけよ。」
「そんなデタラメ信じられると思うか？お前はあの男を愛していたのではないのか？」
「前はそうだったかもしれないけど、ギャブの口から本当の事を聞いた時点でそんな気持ちはなくなったわ。」
 
ガイは二人の話を立ち聞きする気は全くなかったが、カレンの父親がカレンをひどく言っているのが許せずに怒りが沸々とわいてきた。
冷静に考えれば今自分が出ていくとどうなるかは分かっていたが、その時のガイはなぜかカレンを守りたいという気持ちしか頭になかった。
 
「どうかしたのかい？ハニー。」
 
カレンは耳を疑った。
咄嗟に声の方に振り向くとそこにはガイが立っていた。
ガイはそのままカレンの方に歩いていきカレンの腰にそっと手を当てた。
その動きがとても自然なのでカレンも何も言わなかった。
しかし、カレンの父は突然目の前に現れた見知らぬ男性を値踏みするように見た。
そのあからさまな視線にガイは耐えた。
 
「ガイ、紹介するわ。父のニーバス・リンダよ。」
「お父様、彼がガイ・エリック。さっき話していた昨夜私が連れてきた人よ。」
「始めまして。ガイ・エリックです。」
 
そう言って手を差し出したが、ニーバスは相手にしなかった。
 
「カレン、今夜じっくりと話さないといけないな。夕食後私の部屋に来なさい。」
 
ニーバスはガイの存在を無視して自分の家に帰って行った。
 
「君のお父さんは・・・。」
「ごめんなさいね、嫌な思いさせちゃって・・・、でもなんで出てきたの？出てこなければ嫌な思いをしなくても済んだのに。」
「あの時は君がお父さんに酷い言われようだったからちょっと頭にきてね。で、気が付くとあの場に立っていたんだ。すまなかった。」
「でも、問題はこれからね。お父様かいろいろ言ってくるかもしれないわ。結婚しろとかどうとか・・・。」
「どうして？」
「まだ２２なのにいろいろなお金持ちのろくでもないボンボンと何度も結婚させようとするのよ。だから頭にきて家出をした事もあるわ。でもそのうちにギャブと知り合って付き合うようになってからは何も言わなくなったけどね。・・・たぶんギャブの家もそこそこの資産家だったからかしら。でもさっき別れたと言ったからまた婿探しでも始めてるかもね。」
 
そう言いながら悲しそうな顔をしていた。