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つかの間のひととき

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今回の事でますます私は彼らと一緒にいたらいけないんではないかと思うようになった。
だから距離をとろうとなるべく会わないように過ごすことにした。
それは悲しいものだったが、2人の名に傷をつけたくなかったから。
2人は誰からも好意を持たれている。


それがどうなることか気づいてはいなかった。


ある日の事、いつものように1人トボトボと歩いて帰宅しようとしていたら校門の前に見知った姿を見てしまった。そう、2人がこちらの方をじっと見ているのだ。多分私?イヤイヤ違うでしょ?
そう思って校門まで近づいて行ってそのまま門の外に出ようとした時、背後から肩を掴まれ振り向かされた。まさかとは思うけど…違うよね?
気持ちはそう思っていたが、現実は違っていた。

「なんで1人で帰るの?」
顔は笑ってはいるが目が怒っているのを見てぶたれるって思ってあいてる方の手で顔を隠したが、いつまで経っても叩かれないことに恐る恐る手を下げるとそこには悲しそうな顔をした洸さんと、嶋田さんが立っていた。

「加奈をたたかないよ。ただ最近ずっと僕らを避けてるのはなんでかなと…まさか他の誰かに何かされたか?」
「いえ、そうじゃないんです。そうじゃ…。すみません。私自身の問題なので。」
「それは俺らには言えない事?関係してない?」
「それ、は……。」
「やっぱり関係あるんじゃないか。なんで言ってくれないの?」
「だって…私みんなみたいに綺麗じゃないし、普通だし、洸さん達はものすっごくカッコいいから…?」「もっと自信持ちなよ。俺が好きなのは今の加奈なんだよ?こんなに可愛いのに俺以外の奴が気づいたら何かしてしまいそうなくらいに。だから自信持って。」

これだけ大切に思われてたなんて…私の目から涙がこぼれ落ちた。手で涙をすくっても次から次へと出てくるのを見て洸さんは涙にキスの雨を降らせた。そしたら涙なんか引っ込んじゃって顔を真っ赤にしてしまっていた。

「さっ、なら加奈ちゃん、一緒に帰ろうよ。ようやく揃ったから3人でさ。いいだろ?洸君。」
「あゝ、今回はな。加奈もその方がリラックスできるだろうしね。もうこういうことはなしだよ?まだ続くのなら俺もどう動くかわからないよ?」
「ヒーッ⁈」
「おい、洸君。言ってるそばから加奈たんをビビらせてどうするの?噛みつかないの。」

大丈夫なんだろうか?
不安しかなかった私は顔をひきつらせていた。
でも久しぶりに知ってる人と一緒だと言うことが嬉しかった。
ずっと一人だったから。
見つからないように隠れていたし…。
これからどうなるかもわからないが、なんとかなる気がしてきていた。


強くなろう!


そう思った。
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